A. 超音波検査実績の作成において、申請要項では、超音波診断の根拠となる画像数は通常、複数必要であることを意味しています。申請要項の文章は写真数で表現していますが、超音波診断の根拠となるに十分な質と数の画像があることが必要です。拡張期と収縮期の2つの画像が含まれた1枚の写真は2つの画像ですが、それで十分な診断根拠となるかどうかを考えてください。心臓断層像と左室M モード図の2つの画像が1枚に含まれた写真は、通常断層像がモニター画像であるので、根拠となる画像としては含まないと考えます。
A. 「写真は通常1枚では不十分である」という記載通りであり、写真1枚で十分な症例はないと考えてください。学会の規則には「超音波医学会認定超音波検査士は、超音波検査の優れた技能を有するコメディカルスタッフを専門の検査士として認定」とあります。したがって、超音波検査実績の提出は、検者が検査結果を的確に示すための画像を選択し、結果の解釈を正しく伝える能力を問うことを目的とします。写真1枚を不可とはしませんが、弁膜症の病態を示すためには、心腔の拡大、弁病変、逆流・狭窄の血流シグナル、逆流・狭窄の重症度を示すドプラ波形、など複数の画像がないと病態を示すことはできないと考えられます。病態を的確に示せない場合には低い評価になりますので、十分に検討した写真を選択してください。
Q. 重症度の表現をmild、moderate、severeと記載して良いでしょうか?
A. 重症度の表現は日本語で軽度、中等度、高度(重度)と記載しても、英語でmild、moderate、severeと記載しても良いですが、前後の表現と合うように考慮してください。
Q. 逆流の重症度は1度~4度で記載して良いでしょうか?
A. 現在、逆流の重症度の表現は、日本循環器学会ガイドラインならびに米国心エコー図学会ガイドラインにおいて3段階で評価されているので、日本語表示で軽度・中等度・高度(重度)、英語表示でmild・moderate・severeと記載することが原則です。以前は1度~4度の4段階評価を行っていましたが、3段階評価にしてください。
A. 心エコー図において冠動脈の支配領域に合致する心筋障害所見があり、臨床所見、他検査所見より塞栓症を原因とする心筋梗塞と診断されることが確定あるいは推定される場合には、「超音波所見と臨床診断との関連について」に症例の考察を加えながら内容を記載することにより、疾患コードはB-2 「冠動脈疾患(虚血性心疾患)」として扱うことができます。
A. 心筋疾患の概念は心機能障害を伴うことを前提としています。高血圧を基礎にして二次性に左室肥大がある症例は、高血圧性心疾患あるいは高血圧性心筋症と呼ばれます。高血圧性心疾患は広い概念ですが、高血圧性心筋症は明らかな心機能障害を伴う高血圧性心疾患と考えられています。高血圧性心筋症の疾患コードはB-3 「心膜・心筋疾患」ですが、明らかな心機能障害を伴わない高血圧性心疾患の疾患コードはB-6 「その他」となります。
Q. 冠動脈疾患の既往がない心室瘤の疾患コードは何ですか?
A. 病態からは心筋疾患の可能性が高いと思われますので、疾患コードはB-3 「心膜・心筋疾患」となります。
Q. 心膜液貯留、心タンポナーデの疾患コードは何ですか?
A. 疾患コードはともにB-3 「心膜・心筋疾患」です。心膜液貯留の原因について考察があると、良い超音波検査実績になります。
A. 「超音波検査士研修ガイドライン」では、左上大静脈遺残は先天性心疾患に分類しています。したがって、疾患コードB-4 「先天性心疾患」として提出可能ですが、左上大静脈遺残は単独では血行動態に明らかな影響はなく臨床的意義が乏しいため、他に代表的な先天性心疾患があれば、左上大静脈遺残を選択するより、他の代表的な先天性心疾患を選択してください。
Q. 心房中隔欠損の術後状態の超音波検査実績は提出できますか? できる場合の疾患コードは何ですか?
A. 心房中隔欠損の術後は右心系の拡大が残存しているかもしれませんが、基本的には血行動態が修復されていると考えます。超音波検査実績の提出の目的の一つは申請者の検査経験を確認することであり、先天性心疾患については、各疾患の特徴的所見が理解され、適切に描出されているかを確認します。その意味においては、心房中隔欠損の術後の症例は、提出症例として適切ではありません。
A. 「超音波検査士研修ガイドライン」では、肺動脈狭窄、Ebstein奇形は先天性心疾患に分類しています。肺動脈弁狭窄症は、他に合併する先天性の病態や形態異常がなく、肺動脈弁自体の病変のみが存在し、肺動脈弁狭窄症に起因する病態、すなわち右心系負荷所見がみられる症例では、疾患コードB-1 「弁疾患(弁膜症)」に分類して良いと考えます。
Q. 腹部大動脈解離や腹部大動脈瘤は疾患コードB-5の症例として扱っても良いですか?
A. 疾患コードはB-5の症例として扱うことはできません。循環器領域の大血管疾患は胸部大動脈疾患に限ります。