一般社団法人日本超音波医学会第50回東北地方会学術集会抄録
【循環器】
座長: 長沼裕子(市立横手病院消化器内科)
50-1 【症例報告】 膵管内乳頭粘液性癌の検討
1平鹿総合病院臨床検査科、2秋田赤十字病院超音波センター、3市立横手病院内科、4山形県立中央病院消化器内科
当院及び関連施設で経験した膵管内乳頭粘液性癌(以下IPM ca)例の特徴を再検討し若干の知見を得たので報告する.対象は組織学的または画像所見からIPM caと診断した11例(M: 4, F: 7)で主膵管型5例,分枝型6例で,年齢は61 - 88歳(平均79歳)であった.手術にいたった例は1例のみであった.自覚症状は,体重減少や腹部膨満感が主で腹痛や黄疸を呈した例は無かった.全例において超音波,CTともに病変部の描出は容易であった.膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)として経過観察中に腫瘍が認められたのは4例で他は初診時にIPM caと診断された例であった.周囲血管が腫瘍に巻き込まれたのは1例で他の例は膵周囲血管の浸潤が無かった.肝転移を示す例は1例のみであった.このことは,IPM caは自覚症状に乏しいうちに進展すること,画像診断で拾い上げは容易であること,高齢者が多いこと,が挙げられ早期発見には人間ドックなどが必要と思われた.
50-2 【症例報告】 十二指腸狭窄で発症した膵鈎部癌の二例
1秋田赤十字病院臨床研修センター、2秋田赤十字病院超音波センター、3秋田赤十字病院腫瘍内科、4秋田赤十字病院放射線科、5秋田厚生医療センター臨床検査科、6市立横手病院消化器内科
我々は,膵鈎部癌は黄疸を生じにくいため,従来膵頭部癌の中に組み込まれてきたこの腫瘍は独立して扱った方が臨床像や画像所見を理解しやすいことを口演や論文を通して強調してきた.今回,その傾向の延長と思われる2例を経験したので,超音波像を中心に報告する.
《使用診断装置》東芝社製: AplioXG,500,日立アロカ社製: Preirus.超音波造影剤はSonazoid®(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
《症例1》60歳代男性.
《症例2》80歳代女性.ともに,数週間来の腹部膨満感と吐気が主訴で,黄疸なく,採血データ異常も軽微であった.超音波上,全例で,a)拡張した胃,b)十二指腸下行脚部を膵側から浸潤し,c)十二指腸狭窄を来している,事が直ぐに診断可能であった.
《考察》膵鈎部癌は位置的に十二指腸に浸潤し他の症状以前に,狭窄を起こしやすい,と思われた.診断には超音波検査が有用である.
50-3 【症例報告】 腎癌膵転移の一例
1秋田厚生医療センター消化器内科、2秋田厚生医療センター臨床病理科、3秋田厚生医療センター臨床検査科、4秋田赤十字病院超音波センター、5市立横手病院消化器科
《はじめに》膵癌転移は稀ではあるが,その原発巣の大半は腎癌である.我々はその1例を経験したので造影超音波所見を中心に報告する.使用診断装置: 東芝社製: AplioXG.超音波造影剤・造影法: Sonazoid®(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
《症例》70歳代女性.食後の腹痛にて近医より紹介されCTにて左腎腫瘍,膵頭部腫瘍を指摘された.精査目的にて超音波施行し,Bモード上,a)左腎に3 cm大の腫瘍と,b)膵頭部に3 cm大の低エコー腫瘤を認めた.膵頭部腫瘤の一部は十二指腸壁と一塊となっていた.造影超音波上,c)左腎病変は多血性で腎癌を示唆する所見で,d)膵頭部の病変も同様な染まりを示し,膵転移とその十二指腸浸潤し診断した.後日,十二指腸部の生検で腎細胞癌の最終診断が確定した.
【第13回奨励賞審査セッション】
座長: 西條芳文(東北大学大学院医工学研究科)
小野寺博義(宮城県がんセンター消化器科)
50-4 【一般演題】 血流速度によって補正した脈波伝搬速度を用いた頸動脈の粘弾性イメージング
1東北大学大学院医工学研究科医工学専攻医用イメージング分野、2本多電子株式会社研究部、3東北大学大学院医工学研究科医工学専攻超音波ナノ医工学分野
《目的》プラークの進行に伴う組織の粘弾性特性の変化が報告されている.本報告では,血流速度を用いて補正した拍動による変位より推定した脈波伝搬速度に基づいた粘弾性特性の推定手法を提案する.
《方法》超音波送受信装置及びリニアプローブを用いて計測した.平行波(チャープ波 4.0–8.0 MHz)を繰返し周波数2000 Hzで照射し,RF信号を取得した.RF信号を血流成分と組織成分に分離し,血流速度推定には2次元スペックルトラッキング,変位推定には複素相関法及び位相差を用いた.血流速度を用いて変位を補正後,各周波数の脈波伝搬速度を推定し,Voigtモデルを仮定して粘弾性特性を推定した.計測部位は24歳の健常な男性の右総頸動脈とした.
《結果》図は提案手法により推定した弾性率分布である.頸動脈の弾性率は2.61 ± 0.63 kPa,粘性率は32 ± 6.7 Pa・sであった.
《結論》拍動による変位及び血流速度を用いて頸動脈の粘弾性特性の推定が可能であった.
50-5 【一般演題】 成人例における拡張期肺動脈前方血流の臨床的意義
秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学・呼吸器内科学
《背景・目的》Fallot四徴症小児例等では,右室障害の結果,肺動脈拡張期前方血流(ADPAF)が出現する.しかし成人例におけるADPAFの知見は少なく,本研究ではその発症機序と臨床的意義について検討した.
《結果》2009 ~ 2015年に当院でUCGを行った成人患者の15例(0.06%)にADPAFを認めた.原因病態は,心筋症等の右室心筋障害群7例,収縮性心膜炎等の非右室心筋障害群8例であった.全例UCG上拘束性右室流入血流パターンを示した.右室 – 肺動脈同時圧を測定した6例では,原因疾患に関係なく右室拡張期圧の上昇と心房収縮時相で右室圧が肺動脈圧を凌駕する現象が確認され,ADPAFは拘束性右室障害を反映する事が示された.死亡またはLVAD装着のイベント発生率は,非右室心筋障害群20%に対し,右室心筋障害群では50%と有意に高かった.
《結語》成人例のADPAFは右室拘束性障害を反映して出現する.ADPAFを認めた例では,右室心筋障害の有無が生命予後規定因子となる.
50-6 【症例報告】 門脈大循環短絡血管切除術後,肺動脈圧正常化を長期経過観察し得た肺動脈性肺高血圧症の一例
1医療生協わたり病院初期研修医、2医療生協わたり病院内科・循環器内科、3医療生協わたり病院臨床検査科、4島県立医科大学付属病院集中治療部
我々は門脈大循環短絡による肺高血圧(PH)症の一例を報告した(日消誌2003)が,短絡解除によるPH改善効果は不明とされる.今回,術後早期の運動負荷UCGによりPH改善効果を評価し,長期経過における肺動脈(PA)圧正常化を観察し得た貴重な症例を経験したので報告する.
《症例》57歳女性.
《現病歴》43歳時息切れにて受診,先天性上腸間膜静脈-左腎静脈短絡血管が指摘された.心係数(CI) 4.4 L/min/m2,収縮期PA圧84 mmHg,平均PA圧40 mmHgと高心拍出性PHを認め,門脈大循環短絡による肺動脈性PHの診断で短絡血管切除術を施行.6ヶ月後CI 3.3 L/min/m2,mPA 30 mmHgと軽度改善し,術2年後のUCGにて収縮期PA圧は安静時32→運動負荷後37 mmHgと上昇せず.以後PA圧は徐々に低下した.術後14年後のUCGにて,CI 2.1 L/min/m2,収縮期PA圧は19 mmHgと正常化していた.
50-7 【一般演題】 急性心筋梗塞患者における無症候性大動脈弁硬化の程度と予後に関する検討
弘前大学大学院医学研究科循環器腎臓内科学講座
《目的》急性心筋梗塞(AMI)患者における無症候性大動脈弁硬化(AVS)の頻度と重症度,予後に関して検討した.
《方法》過去2年間で再還流療法に成功し包括的心エコー検査を行ったAMI患者連続216症例(大動脈弁狭窄症と透析症例は除外)を対象とした.エコーによるAVS評価は断層像から軽度AVS(弁尖上の単発性の高輝度エコー)と高度AVS(複数の高輝度エコー)を検出した.
《結果》軽度AVSは56例(26%),高度AVSは69例(32%)に検出された.平均観察期間12ヶ月における全死亡及び複合心血管イベント(全死亡,心筋梗塞,脳卒中)回避生存曲線は高度AVSで不良であった(図AB).また,高度AVSは複合心血管イベントにおいて年齢及び性と独立した予後規定因子であった(HR 3.3, CI 1.2 - 12.7).
《結語》AMI患者におけるAVSは高頻度に検出され,高度AVSはAMIの予後予測因子となる.
50-8 【一般演題】 胎児期の左心低形成症候群が脳血流および頭部発育に与える影響
1宮城県立こども病院産科、2東北大学大学院医学系研究科先進医学講座胎児医学分野、3宮城県立こども病院循環器科、4東北大学産婦人科
《目的》胎児期の左心低形成症候群では,脳には右心系から動脈管を介し逆行性に血流が送られるため,正常胎児より血流量および酸素分圧が低下している可能性がある.この仮説を検証するため,これまでの胎児左心低形成症侯群における中大脳動脈の血流変化および頭部発育を調べた.
《方法》2005年から10年間に胎児診断を行った左心低形成症候群10例を対象とした.胎児中大脳動脈血流のPI値および最大血流速度(図),児頭大横径(BPD),出生時頭囲をレトロスペクティブに正常と比較した.
《結果》中大脳動脈PI値および血流最大速度はすべての症例において正常の平均値以下であった.BPDおよび出生時頭囲は有意差がなかったが,頭囲が-2SDとなった症例の神経学的予後が不良であった.
《結論》脳血流は神経系の発達に重要な要素であり,左心低形成症候群では胎児期より影響がある可能性が考えられた.さらに症例数を重ねて検討を続けたい.
【消化器Ⅱ】
座長: 水野 大(岩手医科大学医学部外科学講座)
50-9 【症例報告】 超音波で診断し得た食道アカラシアの一例
1医療生協わたり病院臨床検査科、2医療生協わたり病院内科循環器内科、3福島県立医科大学付属病院集中治療部
食道アカラシアは食道造影や内圧測定により診断されるが,超音波検査による診断についての報告は少ない.今回我々は,食道アカラシアの食道機能評価に体表面超音波検査法が有用であったので報告する.
《症例》70代男性
《既往歴》心房細動,肺炎(毎年繰り返す)
《現病歴》心房細動精査のため施行した心エコー図検査にて,食道の著明拡大と食物残渣貯留あり.胸部XP検査で横隔膜ヘルニアは否定的で,胸部CT検査にて食道の拡大と壁肥厚を認め,食道アカラシアを疑った.食道造影検査に同意が得られず,食道機能評価目的で再度超音波検査を行った.肝後方にpseudokidney pattern(全層性に肥厚した食道壁)あり.飲水負荷試験により,拡大した頸部食道内への水分貯留を認め,飲水5分後に中部食道への水分の到達と貯留を認め,食道の蠕動運動低下所見と考え,食道アカラシアと診断した.上部消化管内視鏡検査では上部食道の著明な拡張と下部食道の狭窄を認めた.
50-10 【症例報告】 腹痛が発見契機となった腹腔内リンパ管腫の二例
1秋田赤十字病院臨床研修センター、2秋田赤十字病院超音波センター、3秋田赤十字病院外科、4秋田赤十字病院病理部、5田厚生医療センター臨床検査科、6私立横手病院消化器内科、7秋田赤十字病院放射線科
今回,我々は,腹痛が発見契機となった腹腔内リンパ管腫の2例を経験したので,その超音波所見を中心に報告する.使用診断装置: 東芝社製: AplioXG.超音波造影剤はSonazoid®(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
《症例1》50歳代男性.一過性の下腹部痛を主訴に当院受診.生化学データはほぼ正常.超音波上,下腹部に135 × 200 cm大の巨大な嚢胞性病変有り.MRI所見も同様であった.病変の摘出術施行,リンパ管腫の最終診断が確定.
《症例2》50歳代女性.一過性の上腹部痛を主訴に当院受診.超音波上,上腹部に160 × 110 cm大の巨大な嚢胞性病変有り.MRI所見も同様であった.現在外来で経過観察中.
《まとめ》リンパ管腫はその特徴的所見から超音波診断が容易な疾患である.リンパ管腫は通常無症状であるが腸間膜由来のものは巨大化し有症状化すると思われた.
50-11 【症例報告】 脾内にリンパ管腫とリンパ腫がみられた一例
1秋田厚生医療センター消化器内科、2秋田厚生医療センター消化器外科、3秋田厚生医療センター臨床病理科、4秋田厚生医療センター臨床検査科、5秋田赤十字病院超音波センター、6市立横手病院消化器科
《はじめに》脾リンパ管腫は比較的稀であるがその特徴的所見から超音波診断が容易な疾患である.一方,脾はリンパ腫が発生しやすい臓器でもある.我々は,最近,この両者が同時にみられた1例を経験したので報告する.使用診断装置: 東芝社製: AplioXG.超音波造影剤・造影法: Sonazoid®(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
《症例》70歳代女性.脾リンパ管腫として,超音波検査で経過観察されていた.超音波上,脾内に,以前からのリンパ管腫の所見に加え,新たに1 - 2 cm大の低エコー腫瘤が多発,Bモードと造影超音波所見からリンパ腫を最も疑った.CTでは両者の鑑別に苦慮した.脾摘出術施行され,リンパ管腫と悪性リンパ腫と診断された.
《まとめ》リンパ腫とリンパ管腫は超音波像に特徴があり鑑別は容易と思われた.
50-12 【症例報告】 超音波検査が有用であった小腸穿孔の一例
1秋田厚生医療センター消化器内科、2秋田厚生医療センター消化器外科、3秋田厚生医療センター臨床病理科、4秋田厚生医療センター臨床検査科、5秋田赤十字病院超音波センター、6市立横手病院消化器科
《はじめに》超音波検査が早期診断に有用であった小腸穿孔の1例を経験したので報告する.使用診断装置: GE社: LOGIQE9.
《症例》50歳代男性.交通事故で腹部強打.CT上肝損傷疑われた.翌日腹部全体に及ぶ疼痛出現し当院救急受診超音波上,a)小腸蠕動低下,周囲に混濁した腹水をみとめた.b)肝下面やモリソン窩にfree-airを認めた.C)門脈ガスがみられ,検査開始時はみられなかった肝実質内点状エコーが次第に出現,増量した.穿孔部位は同定困難であったが,これらの所見から小腸穿孔に伴う門脈ガスと判断した.緊急手術施行され小腸に穿孔部有り,穿孔部は切除吻合し,他に損傷部多いため吻合部口側で人工肛門造設した.
《考察》小腸穿孔の早期診断のポイントは,1)混濁した腹水(内容物の腸外流出),2)遊離ガスや門脈ガス,の拾い上げであり,この2点に関しては,液体と少量ガスの検出に優れた超音波検査を積極的に施行すべきである.
50-13 【一般演題】 小児鼠径ヘルニアに対する術前超音波検査の有用性の検討
弘前大学医学部附属病院小児外科
《緒言》小児鼠径ヘルニアに対する術前超音波検査所見と,腹腔鏡下経皮的腹膜外ヘルニア閉鎖術(以下LPEC)の術中所見を比較し,術前超音波検査の有用性を検討した.
《対象と方法》2007年6月から2015年4月までに当科で施行した355症例を対象とした.患側および対側の術前超音波検査を行い,術中所見と比較した.
《結果》患側は1例を除き術前超音波検査で検出可能であった.対側腹膜鞘状突起の開存を319例中103例(32.3%)に認めた.術前超音波検査の対側鼠径ヘルニアに対する成績は感度40%,特異度77.8%,正診率64%であった.
《考察》術前超音波検査は患側の検出は可能であるが,無症状の対側の評価においては腹腔鏡所見との乖離がある.超音波検査には熟達した技術を要するが,鼠径管の解剖学的異常を念頭に走査すれば,対側腹膜鞘状突起の手術適応判断することができ,術後の対側発症を防ぐことが可能である.
【循環器】
座長: 小山耕太郎(岩手医科大学医学部小児科学講座)
50-14 【症例報告】 広範な左室心筋脂肪変性を伴い、左室リモデリングなしに収縮性が低下していた筋強直性ジストロフィーの一例
1国立病院機構仙台医療センター臨床検査科、2国立病院機構仙台医療センター循環器内科
《はじめに》筋強直性ジストロフィー患者の心筋病変を複数の診断モダリティによって詳細に評価できた症例を経験したので報告する.
《症例》45歳男性
《現病歴》20歳代に筋強直性ジストロフィーと診断された.徐々にADLは低下し,自宅内介助レベルであった.2014年,脳梗塞を発症し入院となった.ルーチン検査として心臓超音波検査を行った.左室拡張末期径と左房容積は正常であったが,左室壁運動はびまん性に低下し,LVEFは25%であった.拡張障害はなく,うっ血性心不全症状も認めなかった.256列CTを用いて観察した冠動脈は正常であった.造影後の左室心筋に心外膜から心筋中層にひろがる広範なlow density areaを認めた.この領域は,心臓MRIの脂肪抑制画像によって脂肪と判定された.
《まとめ》広範な左室心筋脂肪変性を伴い,左室リモデリングなしに収縮性が低下していた筋強直性ジストロフィー患者を経験した.
50-15 【症例報告】 交通事故後10年で発見された偽性仮性心室瘤の一例
1国際医療福祉大学病院検査室、2福島県立医科大学集中治療部、3国際医療福祉大学病院循環器内科、4国際医療福祉大学病院病理診断科、5国際医療福祉大学病院心臓外科
胸部打撲10年後に心エコーで仮性瘤を疑い,術中・病理所見から偽性仮性心室瘤(真性瘤)と診断した稀な一例を経験したので報告する.
《症例》36歳男性
《既往歴》26歳時に交通事故で胸部打撲(明らかな外傷なし).33歳より高血圧で加療.
《現病歴》平成26年11月胸部不快感で近医受診し精査目的で当院紹介.胸部X-P上心拡大なく,ECG上II,III,aVFに陰性T波あり.UCGで左室下壁中部に外方に突出する嚢状瘤あり(頚部径8 mm,瘤径22 mm).瘤壁は薄く無収縮で瘤周囲心筋と連続性なく仮性瘤と診断した.冠動脈造影では有意な冠動脈病変は認めなかった.手術所見では瘤壁と心膜の癒着はなく,瘤頚部辺縁の左室心筋内膜は白色瘢痕化し瘤内腔の瘢痕組織と連続していた.後乳頭筋根部が近接していたため,パッチを用いた左室形成術を施行した.病理所見では瘤壁の著明な線維化と心筋細胞を一部に認め,偽性仮性心室瘤と診断した.
50-16 【症例報告】 Submitral aneurysmを発症した慢性腎不全の一例
秋田大学大学院医学系研究科循環器内科
《症例》60代男性
《現病歴》2010年から慢性腎不全のため血液維持透析を行っていた.2011年,腎移植術前心機能評価のため施行した心エコー検査で,中等度僧帽弁閉鎖不全症,僧帽弁輪石灰化とその後外側に4.9 × 3.0 cm大の異常腔を認めた.腔は左室と交通しており,submitral aneurysmと診断した.1年後,僧帽弁閉鎖不全症の増悪とsubmitral aneurysmの増大を認めたため,瘤切除術と僧帽弁形成術を行った.病理所見では瘤壁は線維化組織であった.Submitral aneurysmのほとんどは僧帽弁手術と外傷に関連して発生するが,本症例では特発的に発生していた.原因としては,僧帽弁輪石灰化部の組織脆弱性が瘤を発生させ,僧帽弁後尖の支持を弱くし,僧帽弁閉鎖不全症増悪につながったものと考えられた.
50-18 【症例報告】 脳梗塞を契機に発見された乾酪様僧帽弁輪石灰化の一例
1東北薬科大学病院中央検査部、2東北薬科大学病院循環器センター循環器内科、3東北薬科大学病院循環器センター心臓血管外科、4東北大学大学院医工学研究科
症例は60歳代女性.めまいを主訴に当院神経内科を受診し脳梗塞と診断された.塞栓源検索のため経胸壁心エコーを施行したところ,僧帽弁後尖弁輪は著明な高輝度を呈し,これに連続して後尖に同輝度の一部可動性を有する腫瘤性病変が観察された.経食道心エコーでは,この病変の構造物の中心に低輝度な部分を認めた.MRは(-).この病変が塞栓源と考えられ手術となった.僧帽弁後尖に石灰化の強い腫瘤状の付着物があり,腫瘤の一部には浮動性がみられた.腫瘤内からは泥状の内容物を認めた.病理検査では,腫瘍を疑う所見は認めなかった.感染性心内膜炎による疣贅との鑑別が必要であったが,腫瘤は後尖弁輪との連続性があり,MR(-),術前の血液データでは炎症所見(-),血液培養は陰性であり,感染性心内膜炎は否定的であった.以上より,乾酪様僧帽弁輪石灰化の診断に至った.今回,稀な疾患を経験したので,文献的考察を踏まえて報告する.
【循環器Ⅱ】
座長: 篠崎 毅(仙台医療センター循環器内科)
50-19 【症例報告】 両心室機能低下を来した家族性地中海熱の一例
秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学・呼吸器内科学
《症例》67歳男性.
《既往歴》幼少時より原因不明の発熱を繰り返していた. 平成24年,慢性腎不全に対し生体腎移植を施行. その後も腹痛,発熱を繰り返し,遺伝子解析で家族性地中海熱と診断された.
《現病歴》平成26年,全身倦怠感を主訴に当院を受診.収縮期血圧50 mmHg台とショック状態であり,入院した.心臓超音波検査では,左室のびまん性壁肥厚に加え右室肥大も伴っていた.左室苦出率は軽度低下し,左室流入血流波形は拘束型であった.さらに右室の拘束性障害も示唆された.両心室機能低下による低拍出がショックの原因と思われた.心筋生検でCongo-red染色陽性であり,家族性地中海熱に続発した心アミロイドーシスと診断した.
《考察》本症例は,家族性地中海熱による自己炎症が遷延し,AAアミロイドーシスを発症,心アミロイドーシスに至った.
《結語》続発性アミロイドーシスによる両心室機能低下を来した貴重な一例を経験した.
50-20 【症例報告】 失神の病態評価に起立試験時左室容量評価が有用であった二例
1医療生協わたり病院初期研修医、2医療生協わたり病院内科循環器内科、3医療生協わたり病院臨床検査科、4福島県立医科大学附属病院集中治療部
神経調節性失神や起立性低血圧の診断目的で施行するhead up tilt(HUT)試験や起立負荷試験は心拍数および血圧を指標とする.我々は,上記指標に加え心エコー図法による左室容量評価が治療法選択に有用であったので報告する.
《症例1》68歳男性.繰り返す失神のためHUT+イソプレテレノール負荷を施行.安静時血圧146/71 mmHg,左室拡張末期容積(LVEDV)151 mL,1回拍出量(SV)96 mLで,負荷時血圧76/53 mmHgと低下したが, LVEDV131 mL,SV88 mLは変化せず.血管抑制型神経調節性失神と診断,β遮断薬投与を開始した.
《症例2》72歳男性.歩行時前失神感のため起立試験を施行.安静時血圧139/88 mmHg,LVEDV79 mL,SV51 mLであったが,立位5分で血圧84/54 mmHg,LVEDV44 mL,SV25 mLと著明低下した.起立性低血圧にて水分摂取などの生活指導の方針とした.
50-21 【症例報告】 重症心不全を呈した家族性マルファン症候群の一例
秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学・呼吸器内科学
《症例》26歳,男性.
《家族歴》母; 47歳,大動脈解離,心筋梗塞で死亡.祖父; 60歳,大動脈瘤破裂で死亡.
《現病歴》12歳時にバ洞拡大(40 mm),軽度大動脈弁閉鎖不全症(AR)と診断され15歳まで経過観察されていた.24歳で心不全を発症しA病院に入院.バ洞拡大(86 mm),高度ARに対しBentall手術を施行後,当科外来に通院.26歳,上気道炎を機に心不全が増悪し,入院した.左室拡張末期径120 mm,tetheringによる僧帽弁閉鎖不全症(MR)を認め,利尿剤の投与により翌朝には肺うっ血は改善した.しかし同日夜間に肺うっ血の再増悪,ショックをきたし,腱索断裂による僧帽弁前尖の逸脱を認めた.PCPSによる補助循環を含む治療を行うも,救命できなかった.本症例は,身体所見,家族歴からマルファン症候群が疑われた.MRやEF低下を伴うマルファン症候群は予後不良との報告があり,本症例の経過を振り返りながら治療方針,介入のタイミングについて考察する.
50-22 【症例報告】 1年間で増大した左房粘液腫の2症例
1国立病院機構仙台医療センター臨床検査科、2国立病院機構仙台医療センター循環器内科
1年の間に発生した左房粘液腫を2症例経験したので報告する.
《症例1》55歳,女性.Lamin A/C遺伝子異常関連特発性拡張型心筋症の定期検査のため心臓超音波検査(以下UCG)を施行し,19 × 13 mmの心房腫瘍を認めた.1年前のUCGではこれは指摘されていなかった.経食道心臓超音波検査によって腫瘍内の豊富な血流を認め,悪性腫瘍を疑い手術目的で転院となった.病理診断は左房粘液腫であった.
《症例2》73歳,女性.食道癌術後の定期検査のため造影CTを施行したところ,僧帽弁輪レベルまでに広がる巨大な左房腫瘍を認めた.1年前のCTではこれを認めていなかった.UCGでは可動性のある58 × 29 mmの心房腫瘍を認めた.増殖速度が速いため悪性疾患を疑い,手術目的に転院となった.病理診断は左房粘液腫であった.
《まとめ》左房粘液腫の中には,その増殖速度が速いものが存在する.
50-23 【症例報告】 孤立性右室低形成の同胞例
秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学・呼吸器内科学
《症例》26歳,男性.
《家族歴》母; 47歳,大動脈解離,心筋梗塞で死亡.祖父; 60歳,大動脈瘤破裂で死亡.
《現病歴》12歳時にバ洞拡大(40 mm),軽度大動脈弁閉鎖不全症(AR)と診断され15歳まで経過観察されていた.24歳で心不全を発症しA病院に入院.バ洞拡大(86 mm),高度ARに対しBentall手術を施行後,当科外来に通院.26歳,上気道炎を機に心不全が増悪し,入院した.左室拡張末期径120 mm,tetheringによる僧帽弁閉鎖不全症(MR)を認め,利尿剤の投与により翌朝には肺うっ血は改善した.しかし同日夜間に肺うっ血の再増悪,ショックをきたし,腱索断裂による僧帽弁前尖の逸脱を認めた.PCPSによる補助循環を含む治療を行うも,救命できなかった.本症例は,身体所見,家族歴からマルファン症候群が疑われた.MRやEF低下を伴うマルファン症候群は予後不良との報告があり,本症例の経過を振り返りながら治療方針,介入のタイミングについて考察する.
【基礎・消化器Ⅶ】
座長: 吉澤 晋(東北大学大学院工学研究科)
50-24 【一般演題】 造影超音波検査時FFT(fast Fourier transform)波形取得の試み
1秋田厚生医療センター臨床検査科、2秋田厚生医療センター消化器内科、3秋田赤十字病院超音波センター、4市立横手病院消化器科、5N.G.I.研究所
《はじめに》造影超音波は通常低音圧(M.I値: 0.2前後)で施行されており,造影剤の移動から生じるドプラ偏位を可視化する方法はカラー表示のみ可能である.一方FFT波形を取得する際は高音圧(M.I値: 1.0以上)を用いるため,造影剤が破壊され造影超音波検査を持続できない,今回我々はこの問題を解決すべく下記の検討を行い若干の治験を得たので報告する.使用診断装置: GEヘルスケアLOGIQE9.造影剤: Sonazoid®(第一三共).
《対象と方法》正常肝10例に関し低音圧ハイフレームレイト造影超音波時に肝内の門脈枝,動脈枝から明瞭なFFT波形が取得可能かを検討した.
《結果》造影剤を破壊することなく全例明瞭な波形が得られた.
50-25 【一般演題】 造影US時におけるくも状エコー(range-ambiguity artifact)を除去するくふう
1市立横手病院消化器科、2秋田赤十字病院超音波センター、3NGI研究所、4秋田厚生医療センター臨床検査科、5由利組合総合病院臨床検査科、6東芝メディカル超音波担当、7日立アロカ超音波担当
*発表者の意思により発表抄録は非開示とします.
50-26 【一般演題】 新しい携帯超音波について
1秋田赤十字病院超音波センター、2NGI研究所、3市立横手病院消化器科、4レキオパワーテクノロジ、5MU社、6フジキン
*発表者の意思により発表抄録は非開示とします.
50-27 【一般演題】 適応型信号処理を用いた高分解能血管イメージングにおける安定化手法
1東北大学大学院医工学研究科、2東北大学大学院工学研究科
頸動脈超音波画像の高画質化により,頸動脈病変の早期診断精度改善が期待できる.我々は血管壁からの超音波エコーの周波数特性に注目し,適応型信号処理を用いた高分解能頸動脈イメージングを行っている.本信号処理法は従来の超音波イメージング法と比較し高い空間分解能を有するが,所望信号と相関の高い妨害波が存在する場合,推定される信号電力が真値より低下する.そのため,従来の適応型信号処理によって得られた推定電力を,安定化手法を用いて得られた推定電力で補正する手法を報告する.所望信号と妨害波が無相関である場合,受信信号の周波数成分間の相関を表す相関行列がToeplitz行列となる.そのため,相関行列を強制的にToeplitz行列へ変換し,所望信号と妨害波間の相関を排除する.従来法における推定電力誤差は-8.0 dBであったが,提案法による誤差は0.15 dBであり,提案法の有効性が示された.
50-28 【一般演題】 高脂血症患者の投薬に伴う頸動脈弾性率の遷移
1東北大学大学院工学研究科電子工学専攻、2東北公済病院内科
位相差トラッキング法は,通常用いられる縦波超音波を,通常の画像表示のためではなく,生体内の組織や臓器の微小速度を時間波形として高精度に計測する手段として用いられた[Kanai, et al. IEEE UFFC, 1996].1本の超音波ビーム上に設定した2点で速度波形を同時計測し,それらの波形の空間的な差を時間積分することで2点間に生じる厚み変化の高精度計測も可能となった.この手法を動脈壁に適用し,1拍間での血圧上昇に伴い血管壁が数十ミクロン薄くなる厚み変化と脈圧から動脈壁の弾性特性を非侵襲的に評価できる[Kanai, et al. Circulation, 2003].本手法を,高脂血症患者1名のフルバスタチンナトリウム投薬に伴う頸動脈の健常部に適用し,壁の弾性率とコレステロール等の遷移を7年間にわたり継続的に計測した.スタチン投与1月後からLDLコレステロールが低下し弾性率も低下したが,その後,7年間にわたりLDLコレステロールと弾性率が徐々に上昇している.
【消化器Ⅲ】
座長: 鈴木 克典(山形県立中央病院消化器内科)
50-29 【症例報告】 多数の肝内結節を呈した悪性リンパ腫の二例
1山形県立中央病院消化器内科、2山形県立中央病院中央検査部、3秋田組合総合病院臨床検査科、4市立横手病院消化器内科、5秋田赤十字病院超音波センター
我々は,過去の本学会で,a)広範に門脈浸潤を呈する症例,b)浸潤腸管の破裂を生じる症例など,やや特殊な臨床像を呈する悪性リンパ腫例を報告した.今回は,肝内に多数の結節を形成した悪性リンパ腫の2例を経験したので,その超音波所見を中心に報告する.使用診断装置: 東芝社製: Aplio 500, XG.超音波造影剤はSonazoid®(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
《症例1》50歳代男性,肝内結節のエコー輝度は低いものが主で,径に関わらず造影上均一濃染パターンを示した.
《症例2》60歳代男性,肝内結節は,1)無 ~ 低エコー小結節と,2)厚いhaloを有する内部構造不均一な大結節に,大別されたが造影上ともに均一濃染パターンを示した.2症例ともに脾内に多数の結節を認めるがリンパ節腫大は無かった.組織学的には,過去のa)b)同様,浸潤傾向の強いlarge B cell typeであった.
50-30 【症例報告】 正常肝の上に発生した原発性肝細胞癌の二例
1由利組合総合病院臨床検査科、2由利組合総合病院外科、3市立秋田総合病院外科、4市立秋田総合病院病理診断科、3市立横手病院消化器科、4秋田赤十字病院超音波センター
正常肝の上に発生した原発性肝細胞癌(HCC)は比較的稀である.最近経験したそのような2例を超音波所見を中心に報告する.使用診断装置: Aplio XG,超音波造影剤: Sonazoid®(第一三共).
《症例1》50歳代女性.肺癌,甲状腺癌,高血圧症,閉塞性動脈硬化症,混合性結合組織病等多彩な既往歴とそれに対する薬物治療中.腹部症状なし.肝機能ほぼ正常.偶然施行したCTにてS7に腫瘍あり.超音波検査でも同部に7 × 7 cm大の高エコー腫瘍を認め,造影超音波検査で均一多血性HCCも否定できない所見であり,区域切除術施行.術後経過順調で外来通院中.
《症例2》80歳代女性.無症状で肝機能も正常.偶然見つかったS6の小血管腫の経過観察目的に外来受診.S7に2 × 2 cm大の高エコー腫瘍を認め,造影超音波検査で均一多血性HCCを疑った.高齢であり経過観察したが次第に増大した.患者自身が加療を希望したため,区域切除術施行.術後経過順調で外来通院中.
50-31 【症例報告】 エラストグラフィーで腫瘍部を観察した原発性肝細胞癌の一例
1栗原中央病院放射線科、2秋田赤十字病院超音波センター、3秋田組合総合病院臨床検査科、4市立横手病院内科、5栗原中央病院内科、6栗原中央病院外科、7東北大学病院病理部
近年,超音波を用いたびまん性肝疾患の"硬さ診断"が広く行われるようになった.しかし肝腫瘍の診断に対する応用は未だ限定的である.そこで我々は,原発性肝細胞癌にエラストグラフィーを応用した1例を経験したので報告する.診断装置: 日立アロカ社製: Ascendus.超音波造影剤: Sonazoid®(第一三共社).
《症例》60歳代男性.主訴: 心か部痛.肝機能は軽度異常.CTで左外側区全体を占める多血性腫瘍有り.超音波上,a)同部に不均一な内部構造を示す(高エコー領域が主体の)腫瘍を認め,b)腫瘍内部はどの部位もエラスト上高値を示した.c)腫瘍は造影超音波上均一多血性でHCCも否定できない所見であり,区域切除術施行.術後経過順調で外来通院中. 組織学的には中分化主体の原発性肝細胞癌で,周囲肝組織は軽度の肝炎を呈していたが,non-B/non-C,NAFLD/NASHを支持する所見はあきらかでなかった.
50-32 【症例報告】 Strain Elastographyと病理所見を比較検討した肝細胞癌の一例
1大曲厚生医療センター臨床検査科、2大曲厚生医療センター病理診断科、3大曲厚生医療センター消化器科、4大曲厚生医療センター外科、5市立横手病院内科、6秋田赤十字病院超音波センター、7日立アロカメディカル株式会社メディカルシステム営業部
《はじめに》近年Elastography(Elast)は肝の硬さ診断に用いられるようになってきており肝腫瘍にも応用されてきている.今回我々はElastを施行したHCC症例で手術を施行し,病理組織と比較検討する機会を得たので報告する.
《使用装置》日立アロカAscendus.
《症例》70歳代女性.近医でC型肝硬変の経過観察中に肝腫瘤を指摘され紹介受診.USでS6に26 mmの低エコー腫瘤を認めた.Elastでは腫瘍の中央(LFI 2.61)が辺縁(LFI 7.14)に比して柔らかであった.造影USでは動脈相で濃染し門脈相でwash outされ後血管相で陰影欠損となった.肝部分切除施行.病理所見は高分化型線癌で,腫瘍辺縁は細胞密度が高く,腫瘍中央では類洞が比較的拡張し血液やリンパ液が多く細胞密度が比較的低かった.
《まとめ》HCCのElast所見は病理組織所見を反映していると考えられた.
50-33 【症例報告】 胆道系酵素の高度上昇を呈した肝転移の二例
1秋田赤十字病院超音波センター、2横手市立病院内科、3秋田厚生医療センター臨床検査科、4秋田赤十字病院放射線科、5地方独行政法人市立秋田総合病院臨床検査科
《はじめに》肝転移は,a)背景肝が正常のことが多く,b)肝内脈管に血栓や腫瘍栓を伴う事が少なく,c)周囲肝組織に炎症を惹起しない,等の理由で病巣が多発,広範囲になっても,肝機能はほぼ正常のことが多い.我々は,著明なALP値上昇を示した肝転移の2例を経験したので超音波所見を中心に報告する.
《使用診断装置》東芝社製AplioXG,他.
《症例1》80代男性: 右腎癌からの肝転移.
《症例2》50代男性: S状結腸癌からの肝転移.ともに肝は全体に腫大し,両葉にやや輪郭が不明瞭な多発転移巣あり,その周辺にカラードプラで動脈 – 門脈短絡を多数認めた.胆管拡張や門脈腫瘍栓はみられなかった.
《まとめ》肝内では動脈,門脈,胆管,はほぼ併走しており,肝転移巣の周囲組織圧迫が高度になるとこれらを圧迫する.1)胆管圧迫が生化学データ上ALP値上昇として,2)動脈,門脈の圧迫が超音波所見上,動脈 – 門脈短絡形成という形で表されていると思われた.
【消化器Ⅳ】
座長: 虻江 誠(宮城県立がんセンター消化器科)
50-34 【一般演題】 肝内石灰化のミラーイメージ
1秋田赤十字病院超音波センター、2市立横手病院消化器内科、3秋田厚生医療センター臨床検査科、4NGI研究所、5小豆嶋胃腸科内科クリニック超音波室
我々は肝内病変のミラーイメージについて多くの視点から検討を加え,過去の本学会で報告をしてきた.今回は,肝内石灰化のミラーイメージに関し,特にその音響陰影(AS)を中心に検討し若干の知見を得たので報告する.使用診断装置は東芝社製: Aplio500,AplioXG,GE社製: LOGIQ E9,日立アロカ社製: Preirus.今回のASのミラーイメージに関する検討は前回の肝嚢胞の後方音響増強効果(PEE)のミラーイメージの検討と類似した視点であり,ASの場合もPEEの場合と同様に,a)実像では(音源と石灰化を結ぶ直線上に)石灰化の背側にASが出現し,b)(ミラーイメージでも)石灰化のミラーイメージの背側(音源と石灰化のミラーイメージを結ぶ直線上に)にASが出現した.
50-35 【一般演題】 非観血的肝線維化診断におけるShear Wave Elastography(SWE)の有用性
1岩手医科大学内科学講座消化器内科肝臓分野、2岩手医科大学中央臨床検査部、3岩手医科大学臨床検査医学講座
《背景》我々はこれまでに,SWE(GE Healthcare)の肝硬度測定における高い再現性について報告してきた(JSUM2015).今回,C型慢性肝疾患の肝線維化診断におけるSWEの有用性を検討した.
《方法》対象は当科で肝生検を施行したC型慢性肝炎41例,肝硬変9例.男性24例,女性26例.平均年齢64.5歳.使用器機はLOGIQ E9.探触子はC1-6-Dプローブ.ROIの中央を3.5 cm以深に設置し,肝右葉のShear wave speed(SWS)を10回連続して行い,平均値を最終測定結果とした.
《結果》肝線維化stage別のSWSの平均値は,F0 - 1: 1.39 ± 0.16 m/s,F1: 1.47 ± 0.23 m/s,F2: 1.68 ± 0.31 m/s,F3: 2.08 ± 0.13 m/s,F4: 2.21 ± 0.27 m/sで,線維化進行に伴いSWSは高値を示した.
《結語》SWEはC型慢性肝疾患において有用な非侵襲的肝線維化評価法になると考えられた.
50-36 【一般演題】 Superb Microvascular Imaging(SMI)を用いたC型慢性肝疾患に伴う血管改築過程の可視化と肝線維化評価の試み
1岩手医科大学内科学講座消化器内科肝臓分野、2岩手医科大学中央臨床検査部、3岩手医科大学臨床検査医学講座
NASH(非アルコール性脂肪肝炎)が原因と考えられる肝硬変の報告が増加している.更にその上に発生したHCC(肝細胞癌)例の報告も散見されるようになった.今回我々は,そのような3例に造影超音波検査を施行する機会を得たので,本検査法の意義を中心に報告する.使用診断装置: 東芝社製: Aplio XG,500, GE社製: LogiqE9.超音波造影剤はSonazoid®(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
《症例1》70歳代女性,S2/3,3 cm,
《症例2》60歳代女性,S4,2 cm,
《症例3》60歳代男性,S2,2 cm.全て,CT-乏血性病変,造影超音波-不均一淡染病変であった.考察:肝硬変の画像所見が原疾患により異なる様に,その上に発生したHCCの画像所見にも差異が生ずる事は当然と思われる.今回の症例では腫瘍はCTで乏血性病変として,造影超音波上不均一な淡染病変として,表現された.今後,更に症例数を増やし,この"不均一淡染"所見が一般的傾向か検討を続けたい.
50-37 【一般演題】 NASHによる肝硬変を基盤にしたHCC病変の検討
1山形県立中央病院消化器内科、2山形県立中央病院中央検査部、3秋田組合総合病院臨床検査科、4市立横手病院消化器内科、5市立横手病院消化器内科
《背景》我々はこれまでに,SWE(GE Healthcare)の肝硬度測定における高い再現性について報告してきた(JSUM2015).今回,C型慢性肝疾患の肝線維化診断におけるSWEの有用性を検討した.
《方法》対象は当科で肝生検を施行したC型慢性肝炎41例,肝硬変9例.男性24例,女性26例.平均年齢64.5歳.使用器機はLOGIQ E9.探触子はC1-6-Dプローブ.ROIの中央を3.5 cm以深に設置し,肝右葉のShear wave speed(SWS)を10回連続して行い,平均値を最終測定結果とした.
《結果》肝線維化stage別のSWSの平均値は,F0 - 1: 1.39 ± 0.16 m/s,F1: 1.47 ± 0.23 m/s,F2: 1.68 ± 0.31 m/s,F3: 2.08 ± 0.13 m/s,F4: 2.21 ± 0.27 m/sで,線維化進行に伴いSWSは高値を示した.
《結語》SWEはC型慢性肝疾患において有用な非侵襲的肝線維化評価法になると考えられた.
【消化器Ⅴ】
座長: 鵜飼克明(仙台医療センター総合内科)
50-38 【症例報告】 健診US発見後5年後に切除したインスリノーマの一例
1東北薬科大学病院検査部、2東北薬科大学病院健康管理センター
症例は60歳代男性.平成16年より当院健診にてドック受診.平成19年のUSで膵頭部に1.5 cm大の内部に拍動血流を認める低エコー腫瘤を指摘され,当院消化器内科紹介.平成19年6月のMRIでは膵内分泌腫瘍が疑われたが質的診断には至らず経過観察となる.以来5年間ほぼ大きさの変化なし.平成21年からは血糖低値を示し,平成24年には傾眠を自覚され,膵頭部インスリノーマの疑いで大学病院紹介.SACIテストでインスリンの上昇を認め,平成24年8月亜全胃温存膵頭十二指腸切除術施行.腫瘍は病理診断で神経内分泌腫瘍であった.USでは早期発見されたがインスリノーマの最終診断に苦慮した一例を経験したので報告する.
50-39 【症例報告】 健診USを契機に発見された膵clear cell neoplasmの一例
1手稲渓仁会病院臨床検査部生理検査室、2手稲渓仁会病院心臓血管センター循環器内科
《症例》70歳代男性.全身倦怠感,腹痛,体重減少があり,健診で何か分からないかと当院健診センター受診.腹部USで膵鉤部に16 mm大の境界明瞭,内部エコーやや不均一な円形の低エコー腫瘤を認めた.カラードプラでは腫瘤内部に豊富な血流信号を認めた.腹部造影CTでは早期濃染像を認め,腹部単純MRIではT1W1軽度低信号,T2W1等信号であった.各種腫瘍マーカーは正常であった.膵内分泌腫瘍をはじめとする上腹部豊血性腫瘍の鑑別の為,当院消化器内科経由で他院にてEUS-FNAを実施.組織型はclear cell neoplasmであった.診断及び治療目的に腫瘍摘出術施行.病理診断では腎細胞癌からの転移を第一に疑うものであったが,明らかな腎病変は認めなかった.極少数であるが不顕性の腎病変が存在し,それが顕性化する前に膵転移病変を指摘される症例も存在することから,転移か原発であるかは今後の経過観察が必要とされた.
50-40 【症例報告】 Cavernous transformation of the portal veinを伴った慢性膵炎の一例
1市立横手病院外科、2市立横手病院消化器内科、3秋田赤十字病院超音波センター
慢性膵炎が脾静脈血栓を伴う事や脾静脈血栓が胃静脈瘤を伴う事は以前から知られているが,実際の臨床の場で遭遇することは比較的稀である.一方,CTPVは門脈血栓に続発する門脈系の側副血行路で通常門脈本幹周囲にみられる.今回我々は,膵全体を包むようにCTPVが著明に発達し,胃静脈瘤も伴った慢性膵炎例を経験したので報告する.使用診断装置: 日立アロカPreirus. 《症例》30歳代男性.慢性膵炎で複数回入院歴あり.一ヶ月続く食欲不振で来院.脱水と軽度のAMYの上昇あり.肝機能異常なし. 《まとめ》CTPVが主に膵周囲に発達することは比較的稀であるが慢性膵炎例では脾静脈血栓の存在を,更に臨床的に大きな意味を持つ胃静脈瘤の合併も疑う必要がある.診断確定後は,超音波検査と胃内視鏡検査で経過観察を密にすべきと思われる.
50-41 【症例報告】 胆嚢粘液嚢胞腺癌の一例
1秋田赤十字病院臨床研修センター、2秋田赤十字病院超音波センター、3秋田赤十字病院外科、4秋田赤十字病院放射線科、5秋田赤十字病院病理部、6市立横手病院消化器内科、7秋田厚生医療センター臨床検査科
胆嚢粘液嚢胞腺癌(mucinous cystadenocarcinoma)は比較的稀な疾患でその報告は散見される程度である.また本症の予後は不良とされている.今回我々は本症長期生存の1例を経験したので報告する. 《症例》70歳代女性.無症状.軽度肝機能障害の経過観察で年数回外来受診.肝観察目的の超音波検査で胆嚢底部に約1 cm程度の嚢胞あり.壁肥厚と嚢胞径がわずかに増加.造影超音波では嚢胞壁が均一ではあるが濃染した.悪性病変の可能性も考慮し胆嚢摘出術施行.病理学的に,a)胆嚢底部に15 mmの嚢胞性腫瘍がみられ,b)内部には粘液が充満し,c)嚢胞粘膜上皮が乳頭状に増殖し,d)高分化腺癌,e)間質浸潤や血管浸潤は認められなかった.なお,肝臓は慢性肝炎(A2,F1)の所見であった.術後経過良好で,術後6年経過するも再発や転移の所見はない. 《まとめ》予後不良といわれる本症でも早期発見で長期生存が期待できる事が示された1例であった.胆嚢底部の観察が重要である.
【消化器Ⅵ】
座長: 阿部眞秀(東北薬科大学病院健康管理センター)
50-42 【症例報告】 肝内脈管へ血栓形成を認めた肝膿瘍の二例
1秋田赤十字病院超音波センター、2秋田赤十字病院放射線科、3秋田厚生医療センター臨床検査科、4市立横手病院消化器科
我々は,前回の本会で造影超音波検査が肝膿瘍の診断に有用である事を報告した.今回は,肝膿瘍自体のみならず周囲脈管の血栓の拾い上げ診断に造影超音波が有用であった肝膿瘍の2例を経験したので報告する.
《使用診断装置》東芝社製: AplioXG,GE社: LOGIQE9,超音波造影剤: Sonazoid®(第一三共社).なお造影法は通常の肝腫瘍造影法に準じた.
《症例1》80歳代男性.急性胆嚢炎に続発した肝S5の小膿瘍.膿瘍周囲の門脈内に血栓を認めた.
《症例2》70歳代男性.胆管炎に続発した肝S4の小膿瘍.膿瘍周囲の肝静脈内に血栓を認め,敗血症を合併していた.2例とも膿瘍径は比較的小さいがCRP高値で炎症反応が強く治癒まで時間を要した.
《まとめと考察》肝膿瘍が周囲脈管系へ進展した場合,重篤化を考慮し診療に当たる必要がある.造影超音波検査は膿瘍の周囲脈管系への影響を把握するのに有用である.
50-43 【症例報告】 肝ポルフィリア症(chronic hepatic porphyria: CHP)と思われた一例
1市立横手病院消化器内科、2秋田赤十字病院消化器病センター消化器内科(肝胆膵)、3秋田大学大学院医学系研究科器官病態学講座)
《症例》60歳代男性.HBVキャリアーで近医通院中,USで多発肝腫瘤を指摘され紹介受診.焼酎700 ml/日のアルコール歴あり.肝機能,腫瘍マーカーは異常なし.US所見では肝全体に円形高エコー腫瘤が多発していた.カラードプラでは脈管に異常認めず.造影USで肝全体が均一に染影され,腫瘍血管は認めなかった.肝腫瘤生検は軽度の脂肪沈着の所見で腫瘍細胞は認めなかった.3ヶ月の断酒後の経過観察のUSで多発肝腫瘤は消失していた.
《使用装置と造影剤》日立アロカPreirus,Sonazoid®.
《まとめと考察》CHPでは肝内に多数の円形高エコー腫瘤が出現する事が知られており,今回の事例はそれに相当すると思われる.アルコール多飲者の場合,高頻度な慢性肝障害+HCCの可能性を除外するためにも,CHPの超音波所見を十分に理解しておくことが重要と思われる.
50-44 【症例報告】 Superb microvascular imaging(SMI)が診断に有用であった門脈腫瘍栓の一例
1市立横手病院臨床検査科、2市立横手病院消化器内科、3秋田赤十字病院超音波センター、4秋田厚生医療センター臨床検査科、5東芝メディカルシステムズ超音波担当、6栗原市立栗原中央病院放射線科
SMIは,微細な低速血流をhigh frame(60/sec程度)で観察可能なドプラ技術である.HCCに伴った門脈腫瘍栓をSMIで観察し診断に有用だった一例を経験したので報告する.
《使用装置》東芝Aplio500.
《症例》70歳代女性.NASHで経過観察中,肝機能の増悪を認め精査.USで肝全体に多発腫瘍を認め,門脈本幹,右枝,左枝に腫瘍栓を認めた.カラードプラ(CD)では門脈内に拍動性の遠肝性血流を認めた.SMIでは門脈腫瘍栓内部にCDでは描出できなかった微細な線状の血流を認めthread & streak signが疑われた.造影USでも門脈腫瘍栓の内部及び周囲に線状の細い血流が認められた.造影CTも同様の所見で,画像所見を総合して門脈腫瘍栓を伴った多発肝細胞癌と診断された.
《まとめ》SMIは造影USをしなくとも門脈腫瘍栓内および周囲の微細な血流の観察が可能で門脈腫瘍栓の観察や診断に有用であった.
50-45 【症例報告】 高アンモニア血症を伴った肝内門脈 – 静脈(PV)短絡の一例
1秋田赤十字病院超音波センター、2秋田赤十字病院放射線科、3秋田赤十字病院消化器外科、4市立横手病院内科、5秋田厚生医療センター臨床検査科
我々は過去の本学会で,約70例の肝内PV短絡を対象に検討し,ほとんどの例では,a)背景肝は正常で,b)原因不明で,c)高アンモニア血症を伴わないこと,d) PV短絡部は一箇所であること,e)臨床症状を呈する例のほとんどがHHT(Osler病)であること,を報告してきた.しかし,今回このc)d)e)から離れた1例を経験したので,その超音波所見を中心に報告する.使用診断装置: 東芝社製: AplioXG,GE社: LogiqE9.超音波造影剤はSonazoid®(第一三共社)を用い,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた. 《症例1》60歳代男性.胃癌切除目的に入院.術前は特記すべき臨床症状無し.CT上も問題なし.術後時折意識レベル低下.血中アンモニア値が385 μg/dlと著明上昇(正常: 20 – 87).精査目的の超音波検査でS6,S7中心に右葉全体に及ぶ多数のPV短絡を認めた.モ二ラック,リーバクト,などの内服で血中アンモニア値は正常化.現在外来通院中.