Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 血管
血管疾患

(S864)

感染性腸間膜動脈瘤の一例

Infected aneurysm of mesenteric artery

藤沢 一哉, 山口 梨沙, 河野 通貴, 本折 健, 志賀 淳治, 長沼 裕子, 石田 秀明

Kazuya FUJISAWA, Risa YAMAGUCHI, Michitaka KOUNO, Ken MOTOORI, Junji SHIGA, Hiroko NAGANUMA, Hideaki ISHIDA

1津田沼中央総合病院検査科, 2津田沼中央総合病院外科, 3津田沼中央総合病院放射線科, 4津田沼中央総合病院病理センター, 5市立横手病院消化器科, 6秋田赤十字病院超音波センター

1Department of Clinical Laboratory, Tsudanuma Central General Hospital, 2Department of surgery, Tsudanuma Central General Hospital, 3Department of radiology, Tsudanuma Central General Hospital, 4Department of pathology, Tsudanuma Central General Hospital, 5Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 6Depart of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
今回,我々は感染性腸間膜動脈瘤と思われた1切除例を経験したので,その超音波所見を中心に報告する.
使用診断装置:日立社製ProSound F75  東芝社製Aplio 500
【症例】
60代,男性,既往歴は,平成27年8月に下行結腸癌で腹腔鏡補助下左半結腸切除,ステージⅢaで補助化学療法施行,3クール施行中に副作用で中断.発熱,腎障害で12月に入院となった.
当初,これらの症状は化学療法の副作用と思われたが,入院中の心エコーで僧房弁両尖に疣贅を認め,感染性心内膜炎を指摘された.さらに断裂した腱索の一部が左房内に内翻し,著明なMRと左房,左室の拡大も認めた.発熱,腎障害はこれに由来するものと考えられ,他施設に転科,僧房弁形成術が施行された.
平成28年, 2月大腸癌の経過観察のためCTを実施した.その際,腹部に30mmの腫瘤を指摘されたが,腎障害のため造影は行えず,確定のために腹部超音波検査を実施した.
【採血データ】
平成27年12月では,Hb5.7g/dl,Ht19.0%で貧血とBUN 50.2mg/dl,Cre3.22mg/dl,CRP5.79mg/dlで腎障害と炎症を認めた.平成28年2月の採血でも貧血,腎障害と炎症,さらに肝機能障害も認められた.またBNPが461.1pg/mlと高値であった.
【CT】
平成27年12月に施行した際には認められなった33×27mmの比較的厚い被膜を持つ内部やや低濃度病変を腸間膜に認めた.確認のため,腹部超音波が依頼された.
【腹部超音波検査】
大動脈と交通する直径33mmの無エコー病変として認められ,内部に拍動性血流あり.体表側で血管が流入し,腹部大動脈と交通あり.上腸間膜動脈分枝の腸間膜の動脈瘤と思われた.
【経過】
これらの結果より.感染性の腸間膜動脈瘤として摘出手術が行われた.
【摘出標本】
トライツ靭帯より50cmの動脈瘤支配領域の空腸が切除された.肉眼的に空腸の漿膜面に白色の色調変化を認めた.
【病理】
腸間膜の嚢胞状,限局性拡張所見を認めるが組織的には動脈瘤で,流入する動脈は直径約3mmで先端部が動脈瘤内腔に開いていた.肉眼的に腸間膜,腸管の粘膜下層や漿膜下層に白く見える部分は高度に拡張した静脈とリンパ管の内腔や脈管周囲に形成された泡沫細胞の集簇巣であった.
【まとめ】
今回の動脈瘤は感染性心内膜炎の既往があり,それにより引き起こされた感染性の大動脈瘤と考えられた.感染性大動脈瘤は,感染によって血管壁の破壊が起こり,局所的に大動脈が拡張した状態のことをいい,感染に起因したすべての動脈瘤,および既存の動脈瘤に感染が加わったものも含めて感染性動脈瘤と総称されている.
原因として① 感染塞栓によるもの(mycotic aneurysms),② 血管壁への局所感染から新たな瘤が形成されるもの(microbial arteritis with aneurysm), ③ 既存の大動脈瘤や血管病変に2次的に感染が合併するもの(infected preexisting aneurysm),④ 外傷後のもの(post-traumatic infected false aneurysm)があり, 本例は①の感染性心内膜炎による 感染によるものと考えられた.
感染性大動脈瘤は全大動脈瘤の0.5~1.3%とまれではあるが,死亡率11~44%と報告される治療困難な疾患である.その診断は大動脈瘤壁やその周囲組織から細菌が検出され,炎症に伴う身体および検査所見があれば確診しうるが,既に抗菌薬が投与されている場合など,起因菌が検出されない症例も多い.そのような場合でも診断に有用なのが画像所見であり,中でもCT所見が最も有効とされているが超音波検査も同様に有効で,特に腎機能が悪く造影ができない場合において超音波検査は病変の確認に有用である.