坪内 啓正, 前野 孝治, 北野 陽一, 山村 修, 林 寛之, 山城 正司, 宮山 士朗, 久田 あずさ, 藤澤 克憲, 岡藤 和博

Hiromasa TSUBOUCHI, Kouji MAENO, Youichi KITANO, Osamu YAMAMURA, Hiroyuki HAYASHI, Syouji YAMASHIRO, Shirou MIYAYAMA, Azusa HISADA, Katsunori FUJISAWA, Kazuhiro OKAFUJI

¹福井県済生会病院放射線技術部, ²福井県済生会病院循環器内科, ³福井県済生会病院健診科, ⁴福井大学医学部地域医療推進講座, ⁵福井大学医学部総合診療部, ⁶福井県済生会病院放射線科

¹Radiotechnology, Fukui-ken Saiseikai Hospital, ²Cardiology, Fukui-ken Saiseikai Hospital, ³Medical Check-up Center, Fukui-ken Saiseikai Hospital, ⁴Community Medicine, University of Fukui Hospital, ⁵Family Medicine, University of Fukui Hospital, ⁶Radiology, Fukui-ken Saiseikai Hospital

キーワード :

【背景と目的】
大動脈解離を合併しない腹部内臓動脈解離は比較的稀な疾患である.
Guthrieらによれば,その頻度は剖検例の約0.01％に過ぎないと報告されている.発見が遅れると動脈解離破裂の危険があり，生命にも関わる．今回，腹部超音波検査において，腹部内臓動脈解離を発見し，超音波が有用であった2例を経験したので報告する．
【症例1】
63歳 男性．当院ドックにて腹部動脈根部の膨隆疑いあり精査を勧められた.自覚症状なし. 既往歴：高血圧,脂質異常症.嗜好品：喫煙42年（20/日），毎日飲酒.血液検査：腹部超音波検査において腹腔動脈,上腸間膜動脈根部に限局性の拡張を認めた.腹部造影CTにおいて腹腔動脈本幹は径13mmに拡張.腹腔動脈本幹との間には隔壁様の構造が見られ,動脈解離を認めた.上腸間膜動脈根部に解離を認め,真腔は血栓により解離直後に閉塞を認めた.
【症例2】
70歳 男性．心窩部痛,左背部痛,食道つかえ感を主訴に近医を受診し，症状が改善されないため，当院紹介となった．既往歴:高血.圧.家族歴父：心疾患.嗜好品：喫煙歴なし,毎日飲酒.腹部超音波検査にて上腸間膜動脈起始部にflap様構造を認めるがドプラでは偽腔内に血流シグナルは認めなかった.腹部造影CTにおいて上腸間膜動脈に限局性解離を認め,偽腔内は造影剤の染影を認めた.
【考察】
腹部内臓動脈解離は稀ではあるが，見落としは生死に関わるため，限局的な解離を見つけ，早期に治療，管理することは重要であると考える
【結語】
腹部内臓動脈解離の発見には，腹部超音波検査が有用であった．
【参考文献】
Guthrie W, Maclean H. Dissecting aneurysms of arteries other than the aorta. J Pathol 1972;108:219-235.