Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 血管
血管疾患

(S862)

下大静脈内腫瘍塞栓を合併したバーキットリンパ腫の女児例

Burkitt lymphoma with malignant inferior vena caval thrombosis in a girl

橋田 祐一郎, 上桝 仁志, 坂田 晋史, 美野 陽一, 神崎 晋

Yuichiro HASHIDA, Hitoshi UEMASU, Shinzi SAKATA, Yoichi MINO, Susumu KANZAKI

鳥取大学医学部附属病院周産期小児医学分野

Pediatrics and Perinatology, Faculty of Medicine, Tottori University

キーワード :

【緒言】
下大静脈内腫瘍塞栓の原因として腎腫瘍や横紋筋肉腫が多く,悪性リンパ腫による合併は稀である.今回,全身の多発転移と下大静脈内腫瘍塞栓に伴う静脈うっ血により著明な胸水と腹水を合併し,Oncologic emergencyとして発見されたバーキットリンパ腫の女児例を経験したので報告する.
【症例】
12歳,女児.主訴は腹部膨満,呼吸困難,右乳房腫瘤.1ヶ月前より右乳房に腫瘤を自覚し,1週間前より腹部膨満を認め,呼吸困難も出現したため受診.腹部エコーでは,腹腔内に境界明瞭な2個の充実性腫瘤(右側:13×8cm大,正中から左側寄り:10×7cm大)と著明な腹水を認めた.また,肝静脈合流部付近の下大静脈内に26×9mm大の腫瘤性病変を認め,同部位の血管内腔は狭小化しモザイク血流を認めた.パルスドプラでは,連続性波形で流速は150cm/sと加速していた.CTとMRIにて腹腔内腫瘤は卵巣腫瘍と診断し,右乳腺,右腎,腸間膜などにも腫瘤性病変を認めた.また,縦隔と腹腔内に多数のリンパ節腫脹と大量の両側胸水を認めた.胸水の細胞診にて悪性リンパ腫と診断し,全身の多発転移に加えて,下大静脈内の腫瘍塞栓に伴う静脈うっ滞により著明な腹水と胸水の貯留及び呼吸困難(Oncologic emergency)を呈していると判断した.両側胸腔ドレナージとステロイドの先行投与を開始し,右乳房腫瘤の生検によりバーキットリンパ腫(stageⅣ)と診断した.ステロイド開始後は,エコー上,下大静脈内の腫瘤性病変は縮小を認め,血流波形も拍動性となり加速所見(流速:52cm/s)も改善した.ステロイド開始9日目には下大静脈内の腫瘤性病変は消失し,腹水と胸水も軽快した.現在化学療法を継続中だが再燃は認めていない.【結語】
全身に多発転移を合併する急速進行性の悪性リンパ腫では,下大静脈内腫瘍塞栓とそれに伴う静脈うっ血の合併にも注意が必要で,その診断と評価には超音波検査が有用である.