Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 血管
血管疾患

(S862)

高血圧を契機に発見された過剰血管を伴う左腎動脈高度狭窄,右低形成腎の若年症例

A rare case of right hypoplastic kidney and severe stenosis of left renal artery in a young patient with hypertension

高橋 智映, 佐藤 和奏, 田村 明日美, 戸島 洋子, 新保 麻衣, 佐藤 輝紀, 渡部 久美子, 飯野 貴子, 廣川 誠, 渡邊 博之

Tomoe TAKAHASHI, Wakana SATO, Asumi TAMURA, Yoko TOSHIMA, Mai SINBO, Teruki SATO, Kumiko WATANABE, Takako IINO, Makoto HIROKAWA, Hiroyuki WATANABE

1秋田大学医学部附属病院中央検査部, 2秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学

1Central Laboratory Division, Akita University Hospital, 2Department of Internal Medicine Division of Cardiovascular, Akita University School of Medicine

キーワード :

【背景】
高血圧患者の10%以上は二次性高血圧と推定され,特に若年発症の高血圧ではその可能性が高い.健康診断で高血圧を指摘され,腎動脈超音波検査で左腎動脈高度狭窄,さらに右腎の低形成が疑われた症例を経験したので報告する.
【症例】
20歳男性.健康診断にて高血圧を指摘され近医受診し,二次性高血圧の精査目的に当院循環器内科紹介となった.24時間平均血圧162/95mmHgと高値であり,尿潜血陽性,尿蛋白陽性を呈していた.レニン活性6.0ng/ml,アルドステロン365pg/mlと軽度上昇を認めたため,腎動脈超音波検査を施行したところ,左腎動脈は起始部から6mm遠位にモザイク血流を認め,同部位の最大流速3.7m/s,RAR5.7と左腎動脈起始部の高度狭窄が示唆された.左腎区域動脈のAcceleration time 211msecと延長を認めた.左腎は12.1cm と腫大しており,左腎静脈の拡張を伴っていた.また,右腎は高度に萎縮しており超音波検査では同定困難であった.造影CTでは,超音波検査所見と同様に左腎動脈狭窄を認め,更に左腎周囲に多数の蛇行した過剰血管を認めた.また左腎静脈は腹部大動脈と上腸間膜動脈の間に挟まりNutcracker現象を呈していた.超音波検査所見で得られた腎静脈の拡張はこれによるものと考えられる.右腎は高度に萎縮しており,造影効果はやや不良であった.左腎動脈狭窄部や過剰血管の走行を評価するため,大動脈造影検査を施行したところ,左腎動脈起始部は高度に狭窄し,腹部大動脈から直接分岐して左腎内へ灌流する蔓状の過剰血管が2本あることがわかった.レノグラムでは,左腎は正常に機能していたが,右腎はほぼ無機能と考えられた.
【考察】
過剰血管を伴う左腎動脈高度狭窄に,原因不明の右低形成腎を併発した若年発症の高血圧症例を経験した.二次性高血圧において,腎血管性高血圧による高血圧は重症の場合が多く,若年者では線維筋性異形成(FMD)によるものが多いとされる.本症例はFMDに典型的な数珠状狭窄を呈しておらず,左腎動脈起始部の局所的な狭窄であったが,年齢や他合併症がないことを考えると,診断としてはFMDを第一に考える.二次性高血圧のスクリーニング検査として,非侵襲的である腎動脈超音波検査が推奨されるため,検査にあたる際には二次性高血圧を示唆する様々な病態を念頭において慎重に検査する必要がある.今後の治療としては右腎低形成を伴っているため,左腎動脈狭窄に対し経皮的腎血管形成術(PTRA)を積極的に考慮すべきと考える.