Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 血管
血管疾患

(S861)

呼吸に応じて椎骨動脈の血流波形が変化した一例

A case of vertebral artery waveform changed by respiration

山本 義徳, 久保田 義則, 田中 裕子, 友藤 達陽, 濱口 浩敏

Yoshinori YAMAMOTO, Yoshinori KUBOTA, Hiroko TANAKA, Tatuaki TOMOFUJI, Hirotoshi HAMAGUCHI

1北播磨総合医療センター中央検査室, 2北播磨総合医療センター神経内科

1Clinical Laboratory, Kitaharima Medical Center, 2Neurology, Kitaharima Medical Center

キーワード :

症例は60才代男性.X-4年,他院よりめまいの精査で,当院脳神経外科へ紹介された.紹介時のMRA,頸動脈エコーでは左内頸動脈起始部にプラークが指摘されるのみであった.また,頸動脈エコー上,両側の椎骨動脈の血流波形は正常型であり,有意な流速の上昇も認めなかったため,年1度のフォローアップとなった.その後の検査において,左内頸動脈のプラークのわずかな増加を認めるも,明らかな著変なくフォローされていた.X年の頸動脈エコー検査において,呼吸に応じて左椎骨動脈の血流波形が変化する現象が観察された.血流波形を詳細に観察すると,吸気時では通常の順行性血流波形であるが,呼気時ではto and fro波形に変化することが確認された.左鎖骨下動脈を観察すると,吸気時では伸展している鎖骨下動脈が,呼気時では屈曲し,モザイク血流を生じることが確認された.鎖骨下動脈の収縮期最大血流速度は,吸気時で1.7m/sで,呼気時で2.8m/sと変化した.日常生活においてめまい症状が頻回に出現していないことから,日常生活体位である坐位での血流状態を観察した.坐位では鎖骨下動脈は伸展状態にあり,椎骨動脈の血流波形は正常型であった.
ABI・baPWV検査で脈波を確認すると,仰臥位での安静呼吸下と坐位では左右差が見られなかったが,仰臥位の呼気停止状態では左上腕に波形変化が見られた.MRAの経時変化を確認すると,左鎖骨下動脈が徐々に伸長し,一部屈曲変化を認めていた.現在日常生活において症状を認めないため,特に加療せず経過観察の方針となった.
今回,呼吸変化による左鎖骨下動脈の形状変化により狭窄をきたし,左椎骨動脈の血流波形に変化をきたした一例を経験した.頸動脈エコー検査において,有意な狭窄性病変がなくても血流波形の記録や左右差の評価は重要であると思われた.有症状時の潜在的な病変精査には,仰臥位安静でのルーチン検査だけでなく,呼吸や体位などを変化させた血流波形の観察も重要である.