Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
症例 3

(S857)

母体感染性心内膜炎の急性増悪により子宮内胎児死亡となった一例

A case of intrauterine fetal death due to acute exacerbation of maternal infective endocarditis

森田 晶人, 黒沢 幸嗣, 日下田 大輔, 星野 正道, 井上 真紀, 小板橋 紀通, 亀田 高志, 岸 裕司

Akihito MORITA, Koji KUROSAWA, Daisuke HIGETA, Masamichi HOSHINO, Maki INOUE, Norimichi KOITABASHI, Takashi KAMEDA, Hiroshi KISHI

1群馬大学医学部附属病院産科婦人科, 2群馬大学医学部附属病院循環器内科, 3群馬大学医学部附属病院検査部

1Department of Obstetrics and Gynecology, Gunma university Hospital, 2Department of Cardiovascular Medicine, Gunma university Hospital, 3Department of Clinical Laboratory Medicine, Gunma university Hospital

キーワード :

【はじめに】
感染性心内膜炎(infective endocarditis:IE)は極めてまれな妊娠中の合併症の一つだが,母体死亡率は30%,胎児死亡率は20%前後と周産期死亡率が高く,的確な診断と治療が必要である.過去にもIEを妊娠中に発症した報告は散見されるが,妊娠中にIEによる急性心不全を来した報告は少ない.今回我々は,母体IEによる急性心不全が原因と考えられた子宮内胎児死亡の一例を経験した.
【症例報告】
28歳,1妊0産.歯科治療歴を含め既往歴に特記事項はなかった.自然妊娠が成立し,近医で妊婦健診を受けており,妊娠12週頃より弛張熱が持続したが放置していた.妊娠23週6日に呼吸困難,胸痛,動悸を自覚し,妊娠24週0日に呼吸困難の増悪と意識障害が出現し,近医に救急搬送された.搬送時はすでに子宮内胎児死亡(intrauterine fetal death:IUFD)となっていた.症状より急性心不全が疑われ,母体の心精査・循環管理目的に当院に転院した.転院後の母体経腹超音波検査でもIUFDを確認した.母体経胸壁超音波検査で,僧帽弁後交連側に約20mmの可動性に富む疣腫,および高度僧帽弁逆流(mitral regurgitation:MR)を認めた.また母体胸部X線画像でも右中肺野の著明なうっ血を認め,IEに伴う高度MRによるうっ血性心不全を疑った.子宮血流は母体に対し負荷となると判断し,緊急帝王切開で614gの女児を分娩した.児には明らかな外表奇形や皮下浮腫などは認めず,IUFD直後の分娩であったと考えられた.術後の経食道超音波検査では,両尖ともに中央からmedial側に付着する20mm大の著明な可動性を有する腫瘤を認め,左房壁にも一部不整を認めた.疣腫による塞栓リスクが高いと考え,術後2日目に僧帽弁置換術を施行した.血液培養ではStreptococcus oralisが検出された.僧帽弁置換術後,抗凝固療法を開始し,リハビリを行い独歩退院した.
【考察】
本症例は,IEの急性増悪に伴うMRによるうっ血性心不全により,胎児胎盤循環不全の結果IUFDを来したと考えられた.胎盤病理診断では軽度な絨毛膜羊膜炎を認めるのみであり,また歯科治療歴などもなく感染契機は不明であった.妊娠中のIEは非常に稀であるが,一旦発症すると母児に重篤な影響を及ぼす可能性があるため,早期診断・早期治療が必要であり,そのためには多科での連携が重要である.