Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
症例 3

(S856)

胃癌合併妊娠の一例

A case of stomach cancer during pregnancy

市川 剛, 小松 篤史, 中山 琢生, 仲尾 岳大, 東 裕福, 林 忠佑, 宮川 康司, 高田 眞一, 千島 史尚, 川名 敬

Go ICHIKAWA, Atsushi KOMATSU, Takuo NAKAYAMA, Takehiro NAKAO, Hiromitsu AZUMA, Tyuyu HAYASHI, Yasuji MIYAKAWA, Shinichi TAKADA, Fumihisa CHISHIMA, Kei KAWANA

日本大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, NIhon university

キーワード :

【緒言】
妊娠中に胃癌を合併することは0.016%と報告されており非常にまれである.発見時には進行していることが多く,その予後は不良である.卵巣転移を来した場合には,経腹・経腟超音波検査によって検出可能であることから,発見の契機になる可能性がある.今回我々は胃癌合併妊娠の一例を経験したので報告する.
【症例】
39歳2妊1産 既往歴は特になく,今回自然妊娠し前医で妊婦健診を受けていた.妊娠19週頃から胃の圧迫感の自覚があり妊娠22週から嘔吐と右下腹部に違和感を感じていたが受診をしなかった.妊娠23週に前医に妊婦健診受診時,経腹超音波で右側腹部に肝臓レベルに達するような長径19cmの腫瘍と,ダグラス窩に長径6cmの腫瘍を認めた.さらに血圧154/95mmHg 尿蛋白+を認め,骨盤内腫瘍,妊娠高血圧症候群の診断で同日,当科に母体搬送となった.
消化管精査を予定するも入院3日目に呼吸苦が出現し肺水腫を認めた.
妊娠23週であること,腫瘍の圧排や腫瘍随伴症候群の可能性を考え全身麻酔下で両側附属器切除,大網部分切除を施行した.術後1日,子宮収縮が増悪し経腟にて児を娩出した.児は626g Apgar score1分後2点,5分後9点,挿管され新生児科に入院となった.摘出腫瘍はAdenocarcinoma in both Ovaries and major omentum の病理診断であった. 術後,上部消化管内視鏡下での生検にてAdenocarcinoma, stomach.を認めた.胃癌4期の診断となり現在化学療法中である.
【考察】
経腹超音波検査によって,卵巣腫瘍を発見し,消化器癌の卵巣転移を疑った症例であった.しかし,妊婦における胃癌の早期発見は極めて困難である.妊娠初期の悪阻,妊娠中期の増大した子宮による圧迫症状は胃癌の症状である嘔気,心窩部痛と区別がつきづらいためと考えられる.消化器症状が持続するときには,消化器疾患や骨盤内腫瘍の存在を疑って,子宮内以外にも超音波検査を施行することは,早期発見とは言えないまでの消化器癌の発見という観点から有用であると考えられた.