Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
症例 3

(S855)

前縦郭を占拠した胎児リンパ管腫の1例

Prenatal diagnosis of anterior mediastinal lymphangioma

室本 仁1, 赤石 里奈1, 小川 浩平2, 杉林 里佳1, 小澤 克典1, 梅原 永能1, 和田 誠司1, 左合 治彦1

Jin MUROMOTO1, Rina AKAISHI1, Kohei OGAWA2, Rika SUGIBAYASHI1, Katsusuke OZAWA1, Nobuyoshi UMEHARA1, Seiji WADA1, Haruhiko SAGO1

1国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター胎児診療科, 2国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター産科

1Major, Center of Maternal-Fetal, Neonatal and Reproductive Medicine, National Center for Child Health and Development, 2Major, Center of Maternal-Fetal, Neonatal and Reproductive Medicine, National Center for Child Health and Development

キーワード :

【緒言】
リンパ管腫は胎生期のリンパ管発生異常により形成されるリンパ管嚢胞を主体とした疾患である.病変部位は頸部が最多であり縦郭内に形成されることはまれである.今回,心臓周囲から前縦郭に広範に生じた胎児リンパ管腫を1例経験したので報告する.
【症例】
35歳,2経妊1経産,妊娠20週に胎児胸水を疑われ当院紹介受診となる.初診時,心臓の両側に6mm程度の液体貯留を認めた.超音波検査所見からは軽度の心嚢液貯留が疑われた.その他の異常所見は認めなかった.28週2日の超音波検査では両側前縦郭に心臓を取り囲むように大量の液体貯留を認め,両側肺は背側へ圧排された状態であった.液体貯留は単房性で内部に血流を認めずlow echoicであった.妊娠29週に胎児MRIを行い,心嚢液が疑われた.31週0日,肺低形成予防および診断のため穿刺を行ったところ淡黄色53mlの内容液が吸引除去されCTAR(心胸郭面積比)は18%から23%まで改善し速やかな肺野の拡張が認められた.細胞診の結果, 異形の乏しいリンパ球を多数認め心嚢液やリンパ管腫の内容液として矛盾しない結果であった.2週間後には液体再貯留をきたしており,36週0日に2度目の穿刺を行い75mlが吸引除去され,CTARは20%から28%に改善した.38週0日,既往帝切のため選択的帝王切開で分娩とした.帝王切開直前に再度の穿刺を行い,48mlを吸引除去した.出生後,努力呼吸増強のため人工呼吸器による呼吸管理を要したが日齢20に抜管可能であった.日齢14に造影MRIを施行し心嚢腔とは別の嚢胞であることが確認され,心膜由来の前縦郭リンパ管腫の診断となった.日齢23にドレーンを留置し排液が持続することからOK-432による硬化療法が施行され,日齢35にはドレーン抜去,日齢37でNICU退院となった.
【考察】
これまで胎児期に診断される前縦郭リンパ管腫の報告は少ない.心臓周囲に形成される嚢胞の鑑別疾患としてpericardial cyst,neurenteric cyst,bronchogenic cyst,gastroenteric cystなどの症例報告があり,リンパ管腫に限っても自然軽快から胎児水腫をきたす症例まで多様である.今回の症例は臨床経過と画像所見に関しての知見に乏しい疾患であり診断および管理に苦慮した.今後の症例蓄積が期待される.