Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
症例 2

(S853)

中大脳動脈最高血流速度の上昇を呈しKasabach-Merritt徴候を疑った先天性血管腫の一例

A case of congenital hemangioma with elevated middle cerebral artery peak systolic velocity, mimicked Kasabach-Merritt phenomenon.

染谷 真行, 笹原 淳, 中西 研太郎, 山下 亜貴子, 川口 晴菜, 山本 亮, 金川 武司, 石井 桂介, 光田 信明

Masayuki SOMEYA, Jun SASAHARA, Kentaro NAKANISHI, Akiko TAMASHITA, Haruna KAWAGUCHI, Ryo YAMAMOTO, Takeshi KANAGAWA, Keisuke ISHII, Nobuaki MITSUDA

大阪母子医療センター産科

Department of Obstetrics, Osaka Mother's and Children's Hospital

キーワード :

【背景】
先天性血管腫(CH)は胎児期に形成される腫瘤性病変である.胎児診断される症例は稀であり,胎児超音波による画像診断上,カポジ型血管内皮腫(KHE)や房状血管腫(TA)との鑑別が困難である.KHEやTAはKasabach-Merritt徴候(KMP)を示すことがあり,生命予後に影響する場合がある.胎児左大腿の血管腫及び中大脳動脈最高血流速度(MCA-PSV)の上昇を呈し,KMPを伴うKHE及びTAとの鑑別に苦慮したCHを経験したため報告する.
【症例】
母体は37歳,G2P1.26週時の健診で胎児左大腿に境界不明瞭な腫瘤及びMCA-PSVの上昇を認め,32週に初診した.超音波検査上,胎児左大腿前方に血流豊富な腫瘤を認め,MCA-PSVは74.9cm/sec(1.68MoM)と上昇を認めた.母体はJra抗体陽性であり,血液型不適合妊娠による溶血性貧血もしくはKMPに伴う消費性の貧血を否定できず,33週に経皮的臍帯血採取(PUBS)を施行した.採血上,Hb:15.0g/dL,Hct:45.2%,Plt:23.7万/mm3と正常値であった.MCA-PSVは経時的に改善し正常範囲となった.Jra抗体価は26週で128倍であったが32週では32倍と低下を認めた.38週で2,544gの児を経腟分娩した.新生児の採血はHb:13.3g/dL,Hct:42.3%,Plt:17.5万/mm3と貧血及び血小板減少は認めなかった.外表所見として左大腿腹側に長径7cm程度の皮下組織の膨隆を認めた.超音波検査では腫瘤内部に豊富な血流を伴う境界明瞭な血管像を認め,造影MRIでは左外腸骨動脈より豊富な血流供給を受ける造影効果の強い境界明瞭な腫瘤を認め,CHに矛盾しない所見であった.その他の部位に明らかな血管腫を疑う所見は認めなかった.腫瘤は出生後増大を認めず,潰瘍形成・出血を起こすことなく経過しており,CHと診断された.今後は自然退縮を期待し,退縮が認められなければβ-blockerの導入を検討している.
【考察】
CHは胎児期に病変として完成され出生後に増大を認めない血管腫と定義されている.既報では,CHにおいて出生後のKMPの報告自体が極めて少なく,出生前のPUBSに基づいた介入の報告は認められなかった.本症例においては,CHを疑う富血管性の腫瘤並びに母体の抗Jra抗体陽性と複数の胎児貧血のリスク因子が存在しており,かつMCA-PSVの上昇を認めたことから,重症胎児貧血に対する胎児輸血の要否を検討するためPUBSを行った.
【結語】
CHを含む富血管性の腫瘤は胎児貧血のリスクであり,MCA-PSVの上昇を認める際には胎児輸血の適応を念頭にPUBSの施行が検討される.