Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
症例 1

(S848)

Three-vessel-trachea viewの異常血流を契機に疑われた胎児脳動静脈瘻の一例

The case of pial arteriovenous fistula suspected based on abnormal flow in three-vessel and trachea view

五日市 美奈, 生野 寿史, 関塚 智之, 田村 亮, 吉田 邦彦, 能仲 太郎, 山口 雅幸, 高桑 好一, 榎本 隆之

Mina ITSUKAICHI, Kazuhumi HAINO, Tomoyuki SEKIDUKA, Ryo TAMURA, Kunihiko YOSHIDA, Taro NONAKA, Masayuki YAMAGUCHI, Kouichi TAKAKUWA, Takayuki ENOMOTO

新潟大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Niigata University

キーワード :

【緒言】
脳動静脈瘻(pial arteriovenous fistula: pial AVF)は動静脈奇形と異なり,栄養動脈が直接流出静脈に短絡する稀な疾患である.今回,胎児スクリーニングエコー検査にて異常を認めたことが契機となって発見された胎児脳動静脈瘻の一例を報告する.
【症例】
症例は,30代経産婦で,既往歴に特記すべきことはなかった.前医で体外受精にて妊娠が成立し,以後妊婦検診が行われていた.妊娠初期検査に異常を認めなかった.妊娠28週の妊婦検診時の推定体重は1321g(1.02SD)で,羊水は正常範囲内であったが,胎児スクリーニングエコー検査において,Three-vessel trachea viewにて下行大動脈から上行大動脈へ向かう血流を認めたため,精査目的に妊娠29週に当院を紹介された.小児循環器医師とともに胎児心エコー検査を施行したが,下行大動脈から上行大動脈へ向かう異常血流を認める所見(図1)以外に,胎児心エコー検査上,明らかな構造異常・血流異常を認めず,先天性心疾患を疑う所見は認めなかった.一方,中大脳動脈は著明に拡張しており,また中大脳動脈最高流速は94.26cm/sと上昇していた.上大静脈の血管は大動脈と同程度に拡張していた.また脳実質表面にhigh-flowな異常血流をみとめたため,妊娠30週に胎児MRI検査を施行した.右前大脳動脈の拡張が目立ち,上矢状洞に連続していた.また上矢状洞および上矢状洞に注ぐ静脈の拡張も目立ち,内部はflow voidを呈しており,胎児動静脈瘻の診断となった.以後外来で慎重に周産期管理を実施.胎児心拡大が徐々に進行し,CTAR 40%まで拡大したが,胎児のwell beingは保たれていた.妊娠36週時に胎児MRI再検査し,脳動静脈瘻に著変ないことを確認した.胎児脳動静脈瘻に対する分娩様式については一定の見解が得られておらず,脳神経外科と相談.脳動静脈瘻破綻に伴う脳出血のリスクを考慮し,妊娠38週に選択的帝王切開術にて,女児2958gにて娩出.出生児の大泉門に拍動を触れ,また連続性雑音を聴取した.児はNICU管理となり,日齢5に造影CT検査が施行され,動静脈短絡部を確認した.現在,精査中であるが,心不全兆候はなく早急の治療は必要なしと判断され外来管理となった.
【結語】
Three-vessel trachea viewにおける血流方向を確認することにより,脳動静脈瘻を疑うことができた.また,胎児中大脳動脈最高流速の上昇を認めた場合は,胎児貧血の他に胎児構造異常の可能性を考慮する必要があると思われた.