Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
症例 1

(S848)

当院における胎児胸水8例の後方視的検討

Retrospective study of 8 cases of fetal pleural effusion in our hospital

櫻井 理奈, 梁 栄治, 長屋 陽平, 瀬戸 理玄, 森田 政義, 生井 重成, 鎌田 英男, 松本 泰弘, 木戸 浩一郎, 綾部 琢哉

Rina SAKURAI, Eiji RYO, Youhei NAGAYA, Michiharu SETO, Masayoshi MORITA, Shigenari NAMAI, Hideo KAMATA, Yasuhiro MATUMOTO, Koichiro KIDO, Takuya AYABE

帝京大学医学部附属病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Teikyo University

キーワード :

【緒言】
胎児胸水は12,000~15,000妊娠に1例の頻度で発症するといわれている.胎児胸水は自然消失する場合もあるが,圧迫による肺低形成などの胸腔内臓器の発達障害,胸腔内圧上昇に伴う心不全,羊水過多による早産などを引き起こし,予後改善のために胎児治療が必要となる症例もあり,その臨床経過は様々である.今回,当院で2010年から2017年までに周産期管理を行った胎児胸水症8例を後方視的に検討した.
【結果】
その他の合併症を伴わない原発性胸水6例(うち自然消失例が2例),二次性胸水が2例であった.
二次性胸水症例は1例が染色体異常(モザイク92XXXX/46XX),1例が母体のシェーグレン症候群による胎児完全房室ブロックであった.胸水の出現は前者が妊娠17週,後者が24週と発症時期が早く,胸水出現後1~2週間で両者ともに胎児死亡に至っている.
自然消失症例の2例の胸水出現時期は24週,31週で羊水過多を伴ったが,胎児水腫は認めなかった.両者ともに胎児胸腔穿刺を検討していたが,前者は2週,後者は4週後に胸水が自然消失した.2例とも正期産まで妊娠継続し,前者は骨盤位,後者は陣痛発来後胎児機能不全の適応で帝王切開分娩となった.児は出生後,明らかな異常は認められなかった.
自然消失しなかった4例のうち,27週,28週で胸水の出現した2例は,羊水過多および胎児水腫を伴い,胎児胸腔穿刺により乳び胸水を確認,術後の再貯留に対し,胎児胸腔羊水腔シャント術を施行,前者は5週後に破水後子宮内感染,後者は4週後に胎児機能不全を適応として,両者とも32週に帝王切開で出生となった.残りの2例は胸水出現が妊娠33週と34週で,その後胸水の増量を認め,新生児治療の方針で,34週と35週にそれぞれ帝王切開となった.共に胎児水腫は出現しなかった.出生後,乳び胸水が確認された.
原発胸水6例は,染色体異常を認めず,予後は良好であった.
胸水の部位は6例が両側性で,自然消失の1例が右側,染色体異常の1例が左側であった.
【考察】
二次性の胸水症例は原疾患が予後を左右すると思われた.原発性の胸水は乳び胸水が多く,その予後は胎児水腫の有無や自然消失の有無が大きく左右するが,胸水の発症時期もまた重要な予後因子と思われた.