中西 研太郎, 石井 桂介, 山本 亮, 山下 亜貴子, 川口 晴菜, 林 周作, 光田 信明

Kentaro NAKANISHI, Keisuke ISHII, Ryo YAMAMOTO, Akiko YAMASHITA, Haruna KAWAGUCHI, Syusaku HAYASHI, Nobuaki MITSUDA

大阪母子医療センター産科

Obstetrics, Osaka Women's and Children's Hospital

キーワード :

【はじめに】
selective IUGR（sIUGR）を伴う一絨毛膜二羊膜双胎（MD）の大児の心拡大や心筋肥厚が報告されている．出生前に心拡大及び心筋肥厚を認めたsIUGR type IIIの2例を経験したので経過を報告する．
【症例報告】
＜症例1＞41歳の経産婦で自然妊娠 のMDであった．妊娠26週から両児間の推定体重差を指摘され，妊娠29週4日に当科紹介となった．一児は臍帯動脈拡張期血流（UA）の周期的な途絶・逆流を伴う発育不全児であり，sIUGR type IIIと診断した．また，大児の心拡大と心筋肥厚と少量の腹水を認め，右室収縮能低下が疑われた．妊娠29週6日，大児の胎児機能不全の診断で緊急帝王切開となった．大児は1724g，Apgarスコア8/8，小児は836g，Apgarスコア6/8であった．大児は心機能低下を認め，ドブタミン塩酸塩，ニトログリセリン，ミルリノンの投与を開始した．日齢29に投与中止したが，その後も軽度の心機能低下を認めている．胎盤に動脈-動脈吻合（AAA）を認めた．＜症例2＞26歳の初産婦で自然妊娠 でのMDであった．妊娠22週に両児間の推定体重差及び小児のUAの途絶を認め，妊娠24週に当科紹介となった．sIUGR type Iの診断だったが，妊娠30週に小児のUAの周期的な途絶・逆流を認め，type IIIと診断した．妊娠32週に大児の心拡大と心筋肥厚を認め，拡張障害も疑われた．妊娠34週6日にUA異常を伴う胎児発育不全のため帝王切開となった．大児は2268g，Apgarスコア8/8，小児は1552g，Apgarスコア8/8であった．大児は心機能低下を認め，ドブタミン塩酸塩，ミルリノンの投与を開始した．日齢9に投与中止したが，その後心機能の改善を認め，心筋肥厚も認められなくなった．胎盤にAAAを認めた．
【考察】
sIUGR type III症例では，AAAを介した大児から小児への血流（rescue transfusion）に関連する大児の心負荷に留意する必要がある．