Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
症例 1

(S845)

胎児心臓スクリーニングを契機に胎児診断に至った肺動静脈奇形の1例

A case of pulmonary arteriovenous malformation leading to diagnosis of a fetus after fetal heart screening

大村 真紀, 石川 美喜子, 田中 耕平, 星 和彦, 田中 高志, 川滝 元良

Maki OMURA, Mikiko ISHIKAWA, Kouhei TANAKA, Kazuhiko HOSHI, Takashi TANAKA, Motoyoshi KAWATAKI

1スズキ記念病院医療技術部, 2スズキ記念病院産婦人科, 3宮城県立こども病院循環器科, 4神奈川こども病院新生児科

1laboratory, suzuki memorial hospital, 2obstetrics and gynecology, suzuki memorial hospital, 3cardiology, miyagi children's hospital, 4neonatology, kanagawa children's hospital

キーワード :

【はじめに】
 肺動静脈奇形(Pulmonary Arteriovenous Malformation:以下PAVM)は,肺動脈と肺静脈に異常短絡をきたした肺循環内の動静脈奇形である.PAVMは,肺静脈還流に静脈血が混入した動脈血が体循環へ流れるため全身性のチアノーゼが出現する.今回,胎児心臓スクリーニングを契機に胎児診断に至った,出生直後からチアノーゼを発症したPAVMを経験したので報告する.
【症例】
 23歳,0妊0産.既往歴は喘息,メニエール病,うつ病.23w6dと25w5dに当院にて胎児心臓スクリーニンを実施した.四腔断面では,心胸郭断面積比CTAR25%,総心横径TCD21mm,P点正常位置,cardiac axis47°で正常値を示した.HD Flowにて左房へ流れる右肺静脈(RPV)の拡大所見を認めた.左房に近い拡大したRPVの最大流入速度は56.3cm/sで高値を示したが,左房から遠いRPVの最大収入速度は19.5cm/sと正常であった.卵円孔は開いているが,左右両方向性の血流を認めた.また,右肺に血流に富んだカラードブラ所見を認めた.流出路断面は,軽度の三尖弁逆流を認めたものの右室流出路の狭窄や閉塞を示す所見も認めなかった.左室流出路の狭窄なども認めなかった.以上の所見内容より,高次医療機関へ紹介となった.
 胎児心エコーの精査所見は,右肺動脈の拡張,右肺静脈も拡張し一部洞状化した連続性の血流を認めた.卵円孔は両方向性の血流を認めた.また,大動脈から直接右肺動脈に向かうMAPCA様の血管を認めた.胎児MRIでは右肺の肺門部を中心に著明な血管像を認めた.以上の所見からPAVM(肺静脈洞および体動脈からの側副血行路を伴うタイプ)と診断された.
 在胎38w3d,胎児仮死にて緊急帝王切開で出生(3214g,女児).Apgar soare3点(1分)6点(5分),羊水混濁,高度徐脈で蘇生された.重症新生児仮死,羊水吸引症候群,肺炎のため,人工呼吸管理,NO,カテコールアミン,抗生剤投与が行われた.SpO₂は80~90%で経過,生後1か月で鼻カニューラ1L/分投与下でSpO₂80%台中判だった.造影CT及びカテーテル検査による肺動脈造影を実施し,PAVMと確定診断された.肺内の右左短絡路が細く多数あるため,児の発育を待ってからカテーテル塞栓術を予定とし,在宅酸素療法で一時退院となった.
【考察】
 PAVMは,胎児期より肺血管抵抗を下げるため,肺血流を増加させるが心不全に至ることは稀である.しかし,この症例では肺血流増多によると思われる卵円孔の左右両方向性の血流を認め胎児診断の端緒となった.
【結語】
 近年,胎児心臓スクリーニングは胎児の周産期管理をする上で重要な検査として実施されている.PAVMは,瘻の大きさや右左短絡量によるが無症状で経過することが多く,チアノーゼや胸部X線の異常陰影で偶然発見されることが多い.今回,肺内の血管を観察することが出来る胎児エコーの長所を生かして,PAVMの胎児診断に至った症例を経験した.