Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
脾臓/消化管/その他/症例

(S842)

急性腹症で発症した大網リンパ管嚢腫の一例

A case of mesenteric lymphangioma developed with acute abdomen disease

小河 智也, 井本 勝治, 山本 敦子, 中森 勇二, 山崎 道夫, 坂本 力, 岩井 義隆, 中右 雅之, 池田 房夫

Tomoya OGAWA, Katsuji IMOTO, Atsuko YAMAMOTO, Yuji NAKAMORI, Michio YAMASAKI, Tsutomu SAKAMOTO, Yoshitaka IWAI, Masayuki NAKAU, Fusao IKEDA

1公立甲賀病院放射線科, 2公立甲賀病院小児科, 3公立甲賀病院外科

1Department of Radiology, Kohka public hospital, 2Department of Pediatrics, Kohka public hospital, 3Department of Surgery, Kohka public hospital

キーワード :

【はじめに】
腸間膜リンパ嚢腫は比較的小児期に発見されることの多い稀な良性腫瘍の一つである.今回我々は急性腹症で発症した大網由来のリンパ管嚢腫の1例を経験したので報告する.
【症例】
症例は11歳男児. 腹痛および38度台の発熱を認め当院を受診し,胃腸炎と診断され対症療法で経過観察となった.翌日,症状が増強し再受診され,腹膜刺激症状が認められたため腹部超音波検査(以下US)が依頼された.USでは肝下面から骨盤腔におよぶ隔壁を有する液体貯留が認められ,腹膜炎に伴う被包化腹水や腸間膜リンパ管嚢腫が疑われた.精査のため腹部造影CT(以下CT)を行い,リンパ管嚢腫の破裂または感染を疑い,当日腹腔鏡下で緊急手術を行った.手術所見として淡血性漿液性の大量の腹水と巨大な多房性嚢胞性腫瘤が認められ,腹膜は発赤充血し腹膜炎の所見であった.嚢胞性腫瘤は右胃大網動静脈と固着するように腹腔内に広く存在し,骨盤腔では癒着が強く剥離時に破れて漿液性や血性の液体が房により異なっていた.可能な限り癒着を剥がしながら嚢胞性腫瘤を切除した.後日,病理学的に大網リンパ管嚢腫と診断された.術後経過は良好で,術後6日目に退院し,現在まで1年になるが再発なく経過順調である.
【考察】
リンパ管腫は全身に発生するが,特に頸部,腋窩,顔面,四肢,縦隔などに好発し,腹部発症は全体の5%程度と比較的まれである.腹部に発生するリンパ管嚢腫は無症状で腹部手術時や剖検時に偶然発見されるものも多いが,本症例のように急性腹症として発症する症例もある. 過去の報告では感染や破裂の他に出血や捻転,腸重積にて発症したリンパ管腫が見られた.リンパ管腫の治療は手術による腫瘍摘出術であり,完全摘出が可能であれば再発は少なく予後は良好である.
【結語】
腹腔内の嚢胞性病変を伴う急性腹症の鑑別診断として,稀ではあるがリンパ管嚢腫の破裂や感染を考える必要があると考えられた.