Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
脾臓/消化管/その他/症例

(S839)

術前診断が困難であった脾索毛細血管腫splenic cord capillary hemangiomaの一例

A case of splenic cord capillary hemangioma with difficult preoperative diagnosis

樋口 真希, 小山 里香子, 浦崎 裕二, 田村 哲男, 河野 優子, 今村 綱男, 井上 淑子, 石綿 清雄, 橋本 雅司, 竹内 和男

Maki HIGUCHI, Rikako KOYAMA, Yuji URASAKI, Tetsuo TAMURA, Yuko KAWANO, Tsunao IMAMURA, Yoshiko INOUE, Sugao ISHIWATA, Masaji HASHIMOTO, Kazuo TAKEUCHI

1虎の門病院臨床生理検査部, 2虎の門病院消化器内科, 3虎の門病院消化器外科, 4赤坂虎の門クリニック

1Clinical Physiological Laboratory, Toranomon Hospital, 2Gastroenterology, Toranomon Hospital, 3Digestive surgery, Toranomon Hospital, 4Akasaka Toranomon Clinic

キーワード :

【はじめに】
脾臓腫瘍はときに画像のみでは悪性腫瘍との鑑別や確定診断が困難で,診断的治療として切除になることも多い.本例も術前に確定診断には至らず,病理組織学的検査所見で脾索毛細血管腫splenic cord capillary hemangiomaと診断された.本腫瘍はかつて過誤腫に分類されていたが,現在は過誤腫とは異なる病態と認識されている.赤脾髄の脾索性毛細血管が結節状に増生し,免疫組織学的特徴としてCD34陽性,CD8陰性で,従来の過誤腫に発現するCD8陽性の髄洞構造はほとんど存在しないのが特徴である.非常に稀であり興味深い症例のため報告する.
【症例】
50代男性.検診の超音波検査(US)で脾臓に腫瘤を指摘され,当院消化器内科に紹介された.無症状.USでは脾臓は軽度腫大し,内部に85mm大の腫瘤を認めた.腫瘤は類円形で境界は比較的明瞭,内部エコーは脾臓よりやや高エコーと低エコーが混在し,不均一であった.カラードプラ法では腫瘤を取り囲むように脾門部からの血流シグナルが検出された.MRI検査ではT1・T2・拡散強調像で腫瘤内部に低信号が混在し,ヘモジデリンの沈着もしくは線維化が示唆された.Dynamic CT検査では単純で脾実質と等吸収,造影によって緩やかに増強効果が見られた.また内部にやや強く濃染する索状構造が見られた.PET-CT検査ではSUV max=9.83とFDGの強い集積を認めた.US所見では腫瘤のエコーレベルは低くなく高低混在しており,MRI・造影CTの所見も含めて,脾過誤腫,炎症性偽腫瘍が鑑別にあがった.しかしPETでの異常集積やsIL2Rが670 U/mlと高値であったことから,悪性リンパ腫を否定できず,開腹脾臓摘出術が施行された.病理組織学的検査で脾索毛細血管腫の診断であった.
【まとめ】
脾索毛細血管腫は稀で,文献的報告も少数であるが,文献を基に本症例のUS所見を見直すと,脾と等エコーを呈し,隔壁を有し,モザイクパターン様にみえる像は,赤脾髄の毛細血管が結節状に増殖する脾索毛細血管腫の特徴を表していた.今後の症例の蓄積により,US所見が診断の一助となることが期待できると思われる.