Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
脾臓/消化管/その他/症例

(S839)

皮下浸潤を伴った脾悪性リンパ腫の1例

Localized malignant lymphoma of the spleen with thoracic wall invasion

石渡 志穂美, 金井 美穂, 藤沢 一哉, 森山 浩, 志賀 淳治, 長沼 裕子, 石田 秀明

Shihomi ISHIWATA, Miho KNAI, Kazuya FUJISAWA, Hiroshi MORIYAMA, Jyunji SHIGA, Hiroko NAGANUA, Hideaki ISHIDA

1上尾中央医科グループ金沢文庫病院検査科, 2上尾中央医科グループ金沢文庫病院外科, 3上尾中央医科グループ津田沼中央総合病院検査科, 4上尾中央医科グループ津田沼中央総合病院病理部, 5市立横手病院消化器科, 6秋田赤十字病院超音波センター

1Department of Clinical Laboratory, Kanazawabunko Hospital, 2Department of surgery, Kanazawabunko Hospital, 3Department of Clinical Laboratory, Tsudanuma Central General Hospital, 4Department of pathology, Tsudanuma Central General Hospital, 5Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 6Depart of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
悪性リンパ腫(malignant lymphoma:ML)は日常臨床で頻繁に遭遇する機会の多い疾患である.しかし.脾臓に限局し.その周囲胸壁のみに浸潤する例は比較的稀である.今回我々は.そのような1例を経験したので.超音波所見を中心に報告する.
使用診断装置:日立社製Arietta70(中心周波数:3-4MHz)で.超音波造影剤はSonazoid(第一三共社).通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
【症例】
80歳代男性.誤嚥性肺炎を反復する認知症例.施設入所中に.発熱と喘鳴あり当院受診.受診時生化学データ.CRP:29.57mg/dl.白血球数:15400.と炎症反応有り.胸部X線写真で.左無気肺を伴う陳旧性胸膜炎の所見あり.加療目的に当院入院.
【CT所見】
入院時CTでは左膿胸・左胸膜肥厚があり.陳旧性胸膜炎による変化と考える.また左胸壁から腹腔内に連続する腫瘤あり.造影CTでは不均一な造影効果を認めた.大動脈周囲.腋窩.傍胸骨.縦隔に有意なリンパ節腫大はなし.
【超音波所見】
入院20病日目に施行した超音波検査では.1)脾内に6x7cm大の円形腫瘤あり.2)その一部が胸壁へ伸展し.3)胸壁が盛り上がるように腫大していた.カラードプラ上.脾周囲から胸壁に貫いて走行する拍動性血流を認めた.造影超音波では.病変の中心は常に無染域で壊死と思われた.病変の辺縁には.細かい血流が均一に分布しており.従来から報告されているMLを最も疑わせるものであった.
【追加採血データ】
インターロイキン2レセプター抗体の上昇を認めた.
【CNB所見】
治療方針決定のため胸壁部の腫瘍生検施行.CNB(core needle biopsy)では.細胞異型が高度で多発性の核分裂像を有し.広汎な壊死傾向著明.腫瘍細胞の腺腔形成・角化傾向は認められず.悪性腫瘍は確定的であった.免疫染色を施行した結果.腺癌マーカーのCEA.CA19-9.神経系マーカーのS100は陰性.リンパ球マーカーであるLCAが陽性.B-cell マーカーであるCD20.CD79aが陽性でありdiffuse large B-cell lymphomaと最終診断した.
【まとめと考察】
MLは通常多臓器に病変が及び.リンパ節腫大がみられる等の所見から診断に苦慮することは少ない.しかし.特定の臓器に限局している場合.診断は困難になる場合がある.最近では.このような例で造影超音波検査での特徴的所見から.診断に有用という報告が増加してきている.特に.壊死部を除く腫瘍全体が早期に濃染する(いわゆるpseudo-hypervascularity)現象を示す点である.本例でもこの所見が決め手となり治療方針決定を早めることが出来た.尚,MLは孤立性でも低率ではあるが破裂や脈管浸潤を来すこともあり.今回の様な周囲組織浸潤の可能性も念頭に入れることが必要である.
文献:Lock G,Schmidt C, Schroder C, et al. Straight vessel pattern and rapid filling time. J Ultrasound Med 2016;35:1593-99