Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
脾臓/消化管/その他/症例

(S838)

10年間の長期観察で増大傾向を認め切除に至った脾リンパ管腫の1例

Lymphangioma of the spleen with enlargement after 10 years follow-up: A Case Report

泉谷 正和, 佐竹 秀美, 斎藤 なお, 松本 靖司, 上原 恭子, 久野木 健仁, 藤林 周吾, 芹川 真哉, 鈴木 康秋

Masakazu IZUTANI, Hidemi SATAKE, Nao SAITOU, Yasushi MATSUMOTO, Kyouko UEHARA, Takehito KUNOGI, Syugo FUJIBAYASHI, Sinya SERIKAWA, Yasuaki SUZUKI

1名寄市立総合病院臨床検査科, 2名寄市立総合病院消化器内科

1Clinical Laboratory, Nayoro City General Hospital, 2Gastroenterology, Nayoro City General Hospital

キーワード :

【はじめに】
脾嚢胞は剖検例中の0.07%に認める稀な病変であり,脾リンパ管腫は,脾嚢胞の中で真性の内皮性嚢胞に分類され,異常に拡張したリンパ管で構成される.脾リンパ管腫は脾嚢胞性病変の17%に認めると報告されているが,長期の経過観察例や増大例の報告は極めて少ない.今回我々は,10年間の長期観察で増大傾向を認め,切除に至った脾リンパ管腫の1例を経験したので報告する.【症例】
40歳代・女性.以前より肝血管腫にてフォローアップされていた.2007年,CTで脾臓に径6mmの嚢胞性腫瘤を指摘.2010年の検診USでは径12mmと軽度増大していた.その後2013年までの検診USではサイズに著変は認めなかった.2015年,検診USで更に増大した為,精査目的で当院消化器内科初診となった.血液生化学所見,腫瘍マーカーに異常所見は認めなかった.超音波では径39mmと増大しており,大部分は嚢胞状であるが一部で小嚢胞の集簇による蜂巣状構造を呈した.造影CTでは,脾内に一部境界が不整な低吸収腫瘤を認め,内部は造影されず,隔壁様構造を認めた.MRI T1強調は,腫瘤は周囲の脾実質とほぼ等信号であり,T2強調は強い高信号で,一部に超音波と同様に小嚢胞の集簇による蜂巣状構造を認めた.造影超音波では主嚢胞壁と小嚢胞集簇領域の隔壁のみが造影され,全体として山田らが提唱した「ネコの足の“肉球”様構造」所見を呈した.以上より,脾リンパ管腫と診断した.増大傾向ではあったが無症状であり,更なる経過観察とした.しかし,2年後には径47mmとさらに増大を認めたため,用手補助腹腔鏡下脾摘術を施行した.肉眼標本では,黄色透明漿液を容れた多房性嚢胞性病変で,組織学的には,被膜下に薄い隔壁を有する大小の脈管の集簇で,既存の脾臓組織が少量介在していた.内腔は異型に乏しい一層の扁平な細胞に裏打ちされており,CD31陽性,リンパ管内皮細胞特異的抗体D2-40一部陽性で,泡沫組織球の集簇も認め,脾リンパ管腫の病理診断となった.【考察】本邦の脾リンパ管腫増大8例の検討では,最長2年の観察期間で全例脾摘術がされている.本症例のように10年間の経過で増大し脾摘術に至った報告は無く,極めて貴重な症例と考え報告する.