Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
胆道/膵臓/症例

(S836)

膵臓癌の Virtual Touch Imaging(VTI)所見の2例

Two reports of VTI findings of pancreatic cancer

澁谷 友美, 後藤 隆, 飯島 克則

Tomomi SHIBUYA, Takashi GOTOH, Katsunori IIJIMA

秋田大学医学部附属病院消化器内科学

Division of Gastroenterology, Akita University School of Medicine

キーワード :

組織の固さを知る方法として, 収束超音波パルスの音響放射圧を用いて生体組織内に微妙な変位を生じさせ, その程度から組織の固さの情報を得るVirtual Touch Imaging(VTI)が実用化されている. しかし膵臓における使用報告は未だ少ない. 今回我々は膵臓癌のVTI所見について若干の知見が得られたので報告する. 使用機器は持田シーメンスメディカル社ACUSON 2000e(周波数 :3.5 MHz)である.
【症例1】
63歳男性. 食欲不振により近医受診, 肝機能障害, 黄疸を指摘され, CTにて膵頭部近傍に腫瘤を認め当院に紹介された.
【B-モード像, VTI】
腹部超音波では, 膵頭部に40mmの低エコー腫瘤を認めた. 腫瘤の形状は表面不整で, 境界不明瞭, 腫瘤内部は不均一で, 尾部膵管と肝側胆管の拡張を認めた. VTIでは, 膵頭部腫瘤は境界明瞭, 辺縁不整, 内部均一な黒色調に描出された. 膵実質と比較して硬い, 均一な病変と考えられた.
【超音波内視鏡】
膵鉤部に30mm大の低エコー腫瘤を認めた. 腫瘍尾側の膵管拡張と肝臓側の胆管拡張, 膵周囲組織および膵内胆管への浸潤を認めた.
【CT】
膵鉤部に濃染不良, 境界不明瞭の約30mmの腫瘤を認めた. 腫瘤頭側の総胆管, 肝内胆管の拡張および, 尾側主膵管の拡張, 肝門部リンパ節腫大を認めた.
【病理】
細胞診にて, 偏在核と核形不整, 核クロマチン増量を示す異型膵管上皮細胞を認めた. 組織診にて,中等度の核種大, 核クロマチン増量, 核形不整を示す異型腺上皮の乳頭状, 腺房状の小集塊を認め, 腺癌と考えられた. 同年膵頭十二指腸切除術術を施行, 手術標本では好酸性の胞体と核小体明瞭な腫大核を有する異型細胞の増殖からなる浸潤性膵管癌を認めた.
【症例2】
74歳男性. 胃逆流症状があり近医受診, CTにて膵頭部に腫瘤性病変を認めた.
【B-モード像, VTI】
膵頭部に長径75mm大の低エコー腫瘍を認めた. 腫瘤の形状は表面不整で, 境界明瞭, 腫瘤内部は不均一で中央部に不整形の無エコー域を認め,腫瘤尾部膵管の拡張を認めた. VTIでは,膵体部腫瘍はほぼ黒色域として描出され,その内部に白色域を認めた.
【CT】
膵頭部から体部にかけて60mm大の腫瘍性病変を認めた. 腫瘍内部は不均一であり, 腫瘤中央部に境界不整の低濃度域を認めた. 尾側主膵管の拡張を認め, 上腸間膜動脈, 腹腔動脈への直接浸潤を認めた.
【病理】
核腫大と核クロマチン増量とを示し, 弱酸性細胞質を有する異型腺上皮の集塊を認め,膵癌と考えられた.
【まとめと考察】
膵腫瘤性病変についての体外式超音波エラストグラフィによる報告は少ない. VTIでは,Bモード画像と比べて膵腫瘤性病変を明瞭に描出することが可能であり, また内部構造を反映していると推察された. VTI所見と病理所見を確認し得た膵臓癌の2例を報告する. VTIは膵臓癌の診断の一助になる可能性が示唆された.