Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓/胆道/膵臓/症例

(S833)

腹部超音波検査で経過観察し得た仮性膵嚢胞(出血・穿破)

Pancreatic pseudo cyst which could be followed by abdominal ultrasonography

山本 竜太, 深水 航, 蒲池 直紀, 上野 恵里奈, 青柳 武史, 谷口 雅彦, 河野 弘志, 酒井 輝文

Ryuta YAMAMOTO, Wataru FUKAMI, Naoki KAMACHI, Erina UENO, Takeshi AOYAGI, Masahiko TANIGUCHI, Hiroshi KAWANO, Teruhumi SAKAI

1社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院内科, 2社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院消化器内科, 3久留米大学医学部内科学部講座消化器内科部門, 4社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院外科, 5社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院機能回復科

1St. Marry's Hospital, 2St. Marry's Hospital, 3Kurume University, 4St. Marry's Hospital, 5St. Marry's Hospital

キーワード :

【はじめに】
仮性脾動脈瘤・仮性膵嚢胞は,膵炎に伴う合併症のひとつとして知られているが,仮性膵嚢胞破裂例は時に重篤な腹膜炎や出血性ショックをきたすことがある.近年,CT検査等の画像診断の進歩に伴い,早期発見が可能になってきている.今回,我々は腹部超音波検査を定期的に行うことで,仮性膵嚢胞内の出血性変化を同定し,消化管穿破後も迅速に診断し,Transcatheter arterial embolization(以下TAE)により出血コントロールを得ることができた症例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
【症例報告】
61歳,大酒家の男性.急性膵炎のために,入院加療となった.急性膵炎の治療中に複数個の仮性膵嚢胞(最大径64mm)を形成した.入院第7病日に施行した腹部超音波検査では,仮性膵嚢胞内部に均等な点状小エコーを認め,血液成分の含有が示唆され,仮性膵嚢胞内出血が疑われた.入院第14病日に施行した腹部超音波検査では,仮性膵嚢胞は増大傾向を認め,最大径97mmとなった.入院第27病日に300ml程の吐血を認めたため,腹部造影CT検査を施行すると,仮性脾動脈瘤から仮性膵嚢胞への出血が胃内に穿破した可能性が示唆された.同日,仮性瘤の遠位部・近位部の脾動脈本幹に対してTAEを施行した.入院第28病日に施行した腹部超音波検査では,仮性膵嚢胞は縮小し,胃体上部後壁との交通が確認された.入院第35病日に施行した腹部超音波検査では胃体上部との交通は確認できなくなっていた.
【考察】
仮性膵嚢胞は,慢性または急性膵炎の10~20%に発生する.さらに嚢胞内出血は,その6~10%に併発し,比較的稀である.症例報告も散見されるが,その多くが出血後に造影CT検査や血管造影検査で診断されている.自験例は,出血を防ぐことはできなかったが,定期的に腹部超音波検査を施行することで消化管出血前から嚢胞内出血の診断が可能であり,その後の経過を追うことができた.造影CT検査や血管造影検査は,被爆や造影剤の有害事象のために頻回には施行できない.同様の症例を検討・集積することで,ハイリスク症例には予めTAE等の出血予防策を講じることに役立つのではないかと考えられる.