Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓/胆道/膵臓/症例

(S832)

腹部超音波検査で非典型的所見を呈し,胆道造影で確定診断に至った胆道閉鎖症の1例

A case of biliary atresia with atypical ultrasonic findings diagnosed by laparoscopic cholangiography

京戸 玲子, 吉田 志帆, 宮崎 峰幸, 神保 圭佑, 浅井 宣美, 東間 未来, 矢内 俊裕, 清水 俊明

Reiko KYODO, Shiho YOSHIDA, Takayuki MIYAZAKI, Keisuke JINBO, Nobuyoshi ASAI, Miki TOHMA, Toshihiro YANAI, Toshiaki SHIMIZU

1東部地域病院小児科, 2順天堂大学小児科, 3茨城県立こども病院小児外科, 4茨城県立こども病院超音波診断室

1Pediatric, Toubu chiiki hospital, 2Pediatric, Juntendo University, 3Pediatric Surgery, Ibaraki children's hospital, 4Ultrasonic inspection department, Ibaraki children's hospital

キーワード :

【はじめに】
胆道閉鎖症(Biliary atresia: BA)は進行性に肝線維化をきたす疾患で,乳児期に速やかに診断し,手術を行う必要がある.BAの診断において,腹部超音波検査(US)は有用な検査法の一つで,Triangular cord sign(TCS)や哺乳に伴う胆嚢収縮の有無など,いくつかの所見を併せることで高い診断率が得られる.今回,US上でTCS陰性であったが,哺乳に伴う胆嚢収縮が確認できたBAの1例を経験したので報告する.
【症例】
日齢25の女児で在胎38週,体重2,916gで出生.日齢2の自排便は便色カード(4から7が正常)で2から3番の便色であった.生後3週頃,便色は1から2番となり,BA疑いで日齢25に当院へ紹介となった.受診時の便色は2番で,血液検査上,D-Bil 3.6mg/dL,γGTP 208IU/L,総胆汁酸 143,4µmol/Lと胆汁うっ滞の所見を認めた.紹介時のUS上,TCSは陰性で,胆嚢径は哺乳前3.8mm,哺乳後1.4mmと明瞭な収縮を認めた.以後,複数回のUSフォローを行ったが変化はみられず,所見の再現性を確認した.一方で,右肝動脈径の拡張(15mm)やcolor doppler imagingにおける肝被膜下血流の出現などの所見を認めた.入院後に実施した99mTc-PMT肝胆道シンチグラフィーで肝に取り込まれた核源の腸管内排泄は認めず,外表所見上も黄疸の改善がみられなかったため,日齢39に腹腔鏡下胆道造影を行った.胆嚢,総胆管,および十二指腸は造影されたが,総肝管から肝内胆管にかけて造影されず,BAと確定診断し,速やかに葛西手術(肝門部空腸吻合とRoux-en Y再建)を実施した.術中の肉眼所見で,胆嚢から十二指腸へ続く索状物(総胆管)を認めⅢa1ν型のBAと診断した.また,本症の肝組織所見はBAとして矛盾しないものであった.
【考察】
TCSはBAの門脈腹側に帯状もしくは管状に描出され,肝門部の線維化を反映したものである.TCSの診断特異度は高いが,感度は報告により様々である.従って,TCSが陰性でも胆嚢の異常所見を呈する場合はBAを否定できないため,TCSに加えて胆嚢萎縮や哺乳に伴う胆嚢収縮などの超音波所見を評価することで高い診断率が得られるが,a型BA(総胆管開型)では,TCS陰性にも関わらず哺乳に伴う胆嚢収縮を認めた複数の症例報告が確認できる.本症例でも,既報と同様の超音波所見がみられ,BAとして非典型超音波所見を呈したが,臨床経過からBAを疑い術中胆道造影検査にて速やかに診断し,手術に至った.一方,他のUS所見として,肝動脈径の拡張やcolor doppler上の肝被膜下血流を認めたが,これらの所見は同様の経過をたどった既報でも認められ,BAにおいてTCS以外の参考所見として有用であることが示唆された.
【結語】
非典型的超音波所見を呈し,術中胆道造影で確定診断に至ったⅢa1ν型BAの1例を経験した.USは非侵襲的検査法としてBAの診断に有用ではあるが,症例ごとに臨床経過と所見を鑑み,胆道造影の実施を躊躇してはならない場合があることを念頭に置かなければならない.