瀬賀 敏之, 山崎 元, 中村 憲, 楢林 賢, 辻井 邦昌, 長野 紘一, 大橋 まゆ, 久保 良美, 東山 香織

Toshiyuki SEGA, Hajime YAMASAKI, Ken NAKAMURA, Ken NARABAYASHI, Kuniaki TUJII, Kouithi NAGANO, Mayu OOHASHI, Yoshimi KUBO, Kaori HIGASHIYAMA

¹医療法人東和会第一東和会病院検査部, ²医療法人東和会第一東和会病院消化器内科, ³医療法人東和会第二東和会病院外科, ⁴医療法人東和会第二東和会病院消化器内科

¹Department of Medical laboratory, Daiitchi Towakai Hospital, ²Department of Gastroenterology, Daiitchi Towakai Hospital, ³Department of Surgery, Daini Towakai Hospital, ⁴Department of Gastroenterology, Daini Towakai Hospital

キーワード :

【症例】
83歳女性
【既往歴】
乳癌手術（1999年），B型慢性肝炎
【現病歴】
2017年，骨盤脱症候群による術前検査で腹部超音波検査施行し肝腫瘍を指摘
【超音波検査所見】
肝右葉前下区域（S5）に肝表面に突出した大きさ28×25mm，輪郭整，境界明瞭，内部充実性で高～低エコーのモザイク状で辺縁低エコー帯伴い，カラードプラーにて流入するシグナルを検出（拍動性，最高血流速36.4cm/s）され，SMIでは辺縁にも血流シグナルを検出．ウイルス性肝炎の罹患歴有るため肝細胞癌を考えたが肝背景に粗雑無く，転移性腫瘍も否定できなかった．
【造影超音波検査】
動脈相では強い濃染，門脈相にては内部欠損像呈するも腫瘍辺縁にリング状濃染を認め，後血管相では内部欠損像呈し転移性腫瘍示唆する所見であった．
【PET-CT検査，造影CT検査】
PET-CT検査では両肺，肝に異常集積認め，造影CT検査でも両肺に腫瘍，肝右葉前上区域に造影早期にて辺縁部淡い濃染と中心部低吸収，造影後期に中心部淡い濃染と辺縁部低吸収を認め転移性腫瘍が疑われた．
【肝生検病理検査】
確定診断のため肝生検を施行したところ，核の大小不同を伴う異形細胞が胞巣状，索状となって増殖しており上皮性悪性腫瘍と診断するも乳癌組織像は不明で転移性か原発性かの鑑別困難の為，免疫染色を施行しER強陽性，HepPar1陰性となり乳癌の転移と診断された．
【考察とまとめ】
患者は手術後，乳癌の再発無く5年以上寛解続いており，18年後に超音波検査を契機に乳癌の再発転移を認めた．日本超音波医学会用語・診断基準委員会発行の「肝腫瘤の超音波診断基準」より大きさ20mm超える結節型肝細胞癌のBモード所見は形状，円形又は類円形，境界，明瞭で整，腫瘍辺縁に薄い辺縁低エコー帯伴い，内部はモザイクパターン呈し，ドプラ所見では血流性状は拍動性を伴うとされており腫瘤像を観察しただけでは肝細胞癌が示唆される所見であった．しかし最終診断は転移性腫瘍であり，過去に癌病歴あるならば転移性腫瘍も鑑別診断の1つとして認識しておく必要があると考えられた．