Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓/症例

(S828)

興味深い腹膜播種を呈した肝細胞癌

Hepatocellular carcinoma with interesting peritoneal dissemination

山本 竜太, 上野 恵里奈, 西田 直代, 河野 弘志, 酒井 輝文

Ryuta YAMAMOTO, Erina UENO, Naoyo NISHIDA, Hiroshi KAWANO, Teruhumi SAKAI

1社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院内科, 2社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院消化器内科, 3社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院病理診断科, 4社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院機能回復科

1St. Mary's Hospital, 2St. Mary's Hospital, 3St. Mary's Hospital, 4St. Mary's Hospital

キーワード :

【はじめに】
画像診断で,腹膜播種を発見することは,しばしば困難である.PET-CT検査は従来の画像診断よりも診断能が優れているとの報告が多いが,臨床現場ではCT検査や腹部超音波検査ほど気軽に行えないのが現状である.CT検査による診断能は,病変の大きさが5cm超える場合で60~67%,1cm未満になると9~24%である一方,報告例は少ないが,腹部超音波検査による診断能は,30.6%とされている.さらに,腹膜播種の超音波所見の特徴についての報告は,これまでほとんどなされていない.今回,我々は腹部超音波検査にて治療経過を観察し得た肝細胞癌による腹膜播種を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
【症例報告】
58歳,男性.低血糖と腹水貯留のために,精査加療目的に入院となった.腹部CT検査にて多量の腹水と多発する小結節を認めた.腹部超音波検査では,腹水貯留やomental cakesなどの癌性腹膜炎を示唆する所見の他に,小腸間膜に播種と思われる多発する内部エコー不均一の低エコー域を認めた(図中のA:小腸,B:肥厚した小腸間膜,C:小腸間膜の血管).原発巣精査のために施行したPET検査でも腹部全域に異常集積を認め,腹膜播種への集積が考えられた.その後,播種巣に対して開腹生検を施行し,肝細胞癌が最も疑われ,血管造影にて肝臓外に腫瘍濃染像を認めた.肝外発育型肝細胞癌による腹膜播種であることが判明した.化学療法を開始したが,奏効せず,Best supportive careに移行し,約1年半後に永眠された.病理解剖を行い,小腸間膜に多発した内部エコー不均一な低エコー腫瘤は,結合組織が増生しており,その間に癌細胞が存在していたことが分かった.
【考察】
腹部超音波検査で認める播種の画像所見は,原発巣や播種組織の種類によって規定されると考えられる.本症例は,腹膜播種をきたすことが少ない肝細胞癌の中でも比較的稀な肝外発育型肝細胞癌による腹膜播種であった.肝外発育型肝細胞癌は,1891年にCristianiにより初めて報告され,特殊な肉眼型をとることが多いとされている.そのために,播種巣も特殊な肉眼型をとっている可能性は高いと考えられた.本症例は,特殊な例である可能性は高いが,このような超音波検査で認める特徴的な知見を集積し,病理組織と対応することで,気軽に行える腹部超音波検査による診断能を向上することに役立つと考えられる.