Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓/症例

(S827)

Shear Wave Elastographyで経過を観察しえたHCV排除後肝細胞癌の1例

A case of the hepatocellular carcinoma followed with Shear Wave Elastography

行徳 芳則, 須田 季晋, 大川 修, 白橋 亮作, 金子 真由子, 正岡 亮, 正岡 梨音, 徳富 治彦, 玉野 正也

Yoshinori GYOTOKU, Toshikuni SUDA, Osamu OKAWA, Ryousaku SHIRAHASHI, Mayuko KANEKO, Ryo MASAOKA, Rion MASAOKA, Naohiko TOKUTOMI, Masaya TAMANO

獨協医科大学埼玉医療センター消化器内科

Gastroenterology, Dokkyo Medical University Saitama Medical Center

キーワード :

【症例】
74歳,男性.C型慢性肝炎で通院中であり,2016年1月からSofosbubir/Ledipasvirによる12週間のDirect-Acting Antiviral Agents(DAAs)治療が行われた.治療開始前の血液検査では,AST 104 U/L,ALT 113 U/L,GGT 151 U/L,T-Bil 1.21 mg/dl,Alb 3.67 g/dl,WBC 4400×10×3/l,Hb 14.3 g/dl,Plt 8.5×10×4/l,PT 82.0 %,HCV genotypeは1b,HCV RNA 5.3 LogIU/mlであった.治療開始4週でHCV RNAは陰性化し,治療終了後24週の持続的ウイルス排除を達成した.治療開始前,治療終了時,治療終了後12週の腹部超音波検査では肝に腫瘍性病変は認めなかった.治療終了後24週の腹部超音波検査で肝のSegment 4に2cm大の腫瘍を認め,God-EOB-DTPA MRIにて肝細胞癌と診断し,手術が施行された.本症例は腹部超音波検査施行時にShear Wave Elastographyによる剪断波速度(Vs)の測定が行われた.治療開始前のVsは2.06 m/sであり,治療終了時は2.04 m/sと不変であった.治療終了後12週には1.82 m/sまで低下したが治療終了後24週は1.80 m/sと横ばいであった.ALT値は治療開始前113 U/Lと高値であったが治療開始4週以降は30 IU/L以下で推移した.AFP値は治療開始前90.3 ng/mlと高値であったが,治療終了時と治療終了後12 週には20.9 g/ml,21.0 ng/mlと低下した.しかし,肝細胞癌が診断された治療終了後24週には54.6 ng/mlと再上昇した.M2BPGiは治療開始前に8.58 C.O.I.ときわめて高値であったが経時的に低下し,肝細胞癌診断時の治療終了後24週では1.07 C.O.I.と正常上限であった.摘出標本の病理学所見では非腫瘍部は肝硬変を呈し,炎症性細胞浸潤はごく軽度であった.
【考案】
Vsはびまん性肝疾患の線維化予測に有用とされている.しかし,肝硬度は組織の弾性(線維化)のみで決まるのではなく,粘性(炎症)にも影響される.我々は第90回の本学会シンポジウムでC型肝炎患者のVsは12週間のDAAs治療によって低下し,治療前のVsは線維化と炎症を,治療終了後12週以降のVsは線維化を示すと報告した.本症例の治療前の肝組織は得られていないが,ALT値から活動性の炎症が示唆される.治療終了後24週で得られた肝組織では炎症は消退し,高度の線維化を認めた.したがって,本症例のVsの改善は炎症の沈静化を反映したものと思われた.DAAs治療によるウイルス排除後の発癌危険因子は明らかではないが,Interferon治療後の発癌危険因子として治療後のALT,AFP,M2BPGiなどが有用とされる.本症例のようにDAAs治療終了12週以降もVsが高値の症例も発癌を考慮した経過観察が必要と考えられた.
【結論】
DAAs治療による持続的ウイルス排除後に発癌したC型慢性肝炎の1例をSWEで経過観察し得た.DAAs治療後のVsは肝線維化を良好に反映した.