Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 消化器
肝臓/症例

(S826)

嚢胞後方に出現する小血管腫様所見(pseudo-hemangioma)の検討

Echogenic mass appearing below hepatic cyst (“pseudo-hemangioma” phenomenon)

石田 秀明, 長沼 裕子, 渡部 多佳子, 山中 有美子, 小松田 広美, 小松田 智也, 長井 裕, 宇野 篤, 大山 葉子

Hideaki ISHIDA, Hiroko NAGANUMA, Takako WATANABE, Yumiko YAMANAKA, Hiromi KOMATSUDA, Tomoya KOMATSUDA, Hiroshi NAGAI, Atushi UNO, Yoko OHYAMA

1秋田赤十字病院消化器科, 2市立横手病院消化器科, 3秋田赤十字病院臨床検査科, 4NGI研究所NGI研究所, 5市立大森病院消化器科, 6秋田厚生医療センター臨床検査科

1Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 2Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Red Cross Hospital, 4New Generation Imaging Laboratory, New Generation Imaging Laboratory, 5Department of Gasroenterology, Ohmori Municipal Hospital, 6Department of Medical Laboratory, Akita Kousei Medical Center

キーワード :

現在,多くの健診施設で腹部超音波検査が組み込まれて日常的に施行されているが.未だ,偽陽性,偽陰性が多いのが現実である.その一因として,施行技師が超音波の原理を理解せずに仕事に従事している事が挙げられる.今回,いわゆるドックエコーで“肝血管腫疑”と判定され,当院の精査で“肝嚢胞”による小血管腫様所見(pseudo-hemangioma: PA)と最終診断された症例の超音波所見を再検討した.また,その発展形として肝内多発小嚢胞例の超音波所見も再検討し,共に若干の知見を得たので報告する.
使用診断装置:東芝社製Aplio500(中心周波数:3-4MHz),超音波造影剤はSonazoid(第一三共社)で,通常の肝腫瘍の造影方法に準じた.
検討1:ドックエコーで“肝血管腫疑”と判定され,当院の精査で“肝嚢胞”による小血管腫様所見PAと最終診断された3例(60歳代女性,60歳代男性,70歳代女性,各1例)の超音波像を再検討した.
検討2:肝内に数mm-数cmの小嚢胞が無数にみられる6例(20-74歳(平均:47歳)男性2,女性4)の肝深部に関し,PAがみられないか検討した.
結果1:3例全てPAはS7に出現し(径:7,8,10mm),前方の嚢胞(径:10,11,13mm)を含まない断面ではPAが消失した.
結果2:6例全例で,肝深部は,多数の外側音響陰影の存在により,超音波像の判定に難渋したが,嚢胞を含む断面で出現するPAと思われる所見が多数みられた.
まとめと考察:超音波診断の基盤はBモードで未だに解明されていない現象が多数存在する.今回報告した,嚢胞後方に出現する円形高エコー腫瘤様所見もその一つである.嚢胞の後方エコーに関しては,a)嚢胞内部に(超音波を減衰させる)散乱体,反射体,がないこと,b)嚢胞(の超音波伝搬速度が周囲肝組織より遅いため)の前後壁で超音波ビームが内側に屈折する,という二つの要因により生ずるとされている.特に,b)が今回のpseudo-hemangiomaという現象の出現機序として重要と思われる.嚢胞の前後壁で2度屈折した超音波ビームは嚢胞後方である点に収束(そしてそれより深部では拡散)するため,嚢胞後方の超音波は均一ではない.このため,収束点近傍にある散乱体は他の箇所のそれに比して強く(高エコーに)なる結果,正常肝内の“均一小円形腫瘤”様所見,として表現される,と考えられる.これが,嚢胞後方のpseudo-hemangiomaの出現機序と考えられる.嚢胞の個数が少ない場合はこの現象の規則性(前方に嚢胞がある)に注意する事により解決する小問題点以上ではないが,嚢胞が無数にある場合は,今回の検討(2)で示されたように,pseudo-hemangiomaか実際に病変が存在するのかの判定はほぼ不可能であり,他の画像診断も合わせ判定する慎重さが必要と思われた.
結論:今まで報告されなかった肝嚢胞後方に出現する均一小円形腫瘤様所見pseudo-hemangiomaに関し,その出現機序を考察し報告した.