Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 循環器
その他 2

(S824)

ICUにおける心不全疑い例でのintrarenal Doppler ultrasonographyとPEEP/CPAPの効果

Impact of PEEP/CPAP on intrarenal Doppler ultrasonography in patients suspected with of having heart failure in intensive care unit

都築 通孝, 大橋 大器, 伊藤 岳司, 森 佳子, 佐藤 直和, 倉田 久嗣

Michitaka TSUZUKI, Taiki OHASHI, Takeshi ITO, Yoshiko MORI, Naokazu SATO, Hisatsugu KURATA

1豊田厚生病院救急科, 2豊田厚生病院循環器内科, 3豊田厚生病院腎臓内科

1Department of Emergency Medicine, Toyota Kosei Hospital, 2Department of Cardiology, Toyota Kosei Hospital, 3Department of Nephrology, Toyota Kosei Hospital

キーワード :

【はじめに】
慢性期の心不全患者に対する腎うっ血の評価としてintrarenal Doppler ultrasonography(IRD)が試みられているが心不全急性期の評価としてのIRDは確立されたとは言えない.腎うっ血の原因として中心静脈圧の上昇といった因子の関与が考えられるがICUにおいては心不全急性期において陽圧呼吸管理がしばしば行われ,positive end-expiratory pressure(PEEP)/continuous positive airway pressure(CPAP)は胸腔内圧を上昇させることにより間接的に中心静脈圧上昇を引き起こす可能性がある.挿管・人工呼吸管理および非侵襲的陽圧換気の際のPEEP/CPAPが腎葉間静脈の流速波形の変化と関連するかどうか検討することとした(nasal high-flowについては2 cm H2Oとして扱った).
【対象と方法】
2017年4月1日より12月25日の間に当院ICUに入室したもしくはICU入室中に心不全が疑われた症例に対し行ったIRD(複数回行った症例あり)を後方視的に解析した.
【結果】
72人(71.2±11.7歳,男性48人)の患者に対し161回(単回施行の患者33人)施行された検査結果を解析した.記録された腎葉間静脈血流波形はcontinuous venous flow(C)pattern 115, biphasic(B)pattern 41, monophasic(M)pattern 2, poor image(P)3であった.まずM patternが少ないことよりB及びM patternをまとめてB+M patternとしC patternと比較するロジスティク回帰分析を行った.この際PEEP/CPAPに加え腎の灌流圧に関わると考えられた平均血圧を独立変数として扱った.任意の検査結果(n=158, 複数施行した患者を含む)でのPEEP/CPAPのオッズ比は0.866(95% confidence interval[CI]0.794-0.944, p=0.001)であったがPEEP/CPAP 0 cm H2Oであったものを除いた99検査では0.972(95% CI 0.843-1.12, p=0.70)と波形に対するPEEP/CPAPの影響は有意でなかった.患者初回検査(n=72)での解析では0.883(95% CI 0.756-1.03, p=0.12), PEEP/CPAP 0 cm H2Oを除いたもの(n=41)では1.150(95% CI 0.853-1.54, p=0.37)であった.平均血圧はいずれのモデルにおいても有意ではなかった.次に複数回検査を受けた患者(n=40)での検討を行った.PEEP/CPAPの変化にともない腎葉間静脈血流波形の変化した患者は11,変化しなかった患者は15であった.その一方,PEEP/CPAPの変化がなかったが経過中血流波形変化が見られた患者が5,変化のなかった患者が9であった(p=0.746, Fisher exact test).
【考察】
今回の検討ではICU入室の心不全が疑われる患者においてPEEP/CPAPによる腎葉間静脈血流波形への影響は有意とは言えない結果であった.IidaらはC patterの患者とB patternの患者では下大静脈圧に有意な差がなかったと報告している.今回の検討ではM patternを示した患者および検査が少なく関連を示すことができなかった可能性はあるが実際のPEEP/CPAPの影響は大きくないのかもしれない.
【結論】
ICU入室の心不全が疑われる患者において腎葉間静脈の流速波形パターンに対するPEEP/CPAPの影響は有意でない可能性が示唆された.