Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 循環器
その他 2

(S823)

心エコー図で循環評価し得た妊娠を契機に受診した肺高血圧合併成人先天性心疾患の一例

Echocardiography for a case of adult congenital heart disease with pulmonary hypertension and pregnancy

佐伯 茉紀, 面家 健太郎, 大塚 真子, 仲村 純奈, 小路 達也, 坂井 英雄, 山本 育美, 青木 美由紀, 長屋 麻紀, 山本 哲也

Maki SAEKI, Kentaro OMOYA, Mako OTSUKA, Junna NAKAMURA, Tatsuya SHOJI, Hideo SAKAI, Ikumi YAMAMOTO, Miyuki AOKI, Maki NAGAYA, Tetsuya YAMAMOTO

1岐阜県総合医療センター臨床検査科, 2岐阜県総合医療センター小児循環器内科, 3岐阜県総合医療センター成人先天性心疾患診療科

1Department of Clinical Laboratory, Gifu Prefectural General Medical Center, 2Department of Pediatric Cardiology, Gifu Prefectural General Medical Center, 3Department of Adult Congenital Heart Disease, Gifu Prefectural General Medical Center

キーワード :

【はじめに】
左右短絡を有し肺血流量が増加する先天性心疾患は,未手術の場合,成人期に肺高血圧症をしばしば合併する.肺高血圧症の診断や重症度評価において心臓カテーテル検査がゴールドスタンダードとなるが,侵襲的な検査であることが課題となる.心エコー図は簡便かつ繰り返し検査可能であるが,測定誤差の存在や,複数病変が組み合わさった際にその結果が妥当かどうか判断が困難なことがある.今回,妊娠を契機に受診した複数の短絡を有した肺高血圧合併成人先天性心疾患患者の循環動態を心エコー図を元に評価したので報告する.
【症例】
29歳,女性.フィリピンで出生,出生時の詳細不明.8歳時に心雑音から先天性心疾患の手術を勧められたが,金銭的理由で施行されなかった.小児期から労作時息切れを認めたが,これまで進行している自覚はなかった.7年半前より日本に在住,3経妊2出産(帝王切開)の既往あり.今回,妊娠中絶目的にて受診した産婦人科にて心電図異常と心雑音,胸部レントゲンにて心拡大を指摘され当院紹介となった.
初診時,身長146.6cm,体重42.8kg,心拍数77bpm,血圧90/60mmHg,SpO2 98%であった.NYHA/WHO FC Ⅲ,頸静脈怒張なし,浮腫なし,ばち状指は認めず,心音はリズム整で,収縮期雑音を聴取した.
血液検査ではHANP 68.0pg/mL,BNP 117.9pg/mLと高値であり,胸部レントゲンでCTR 74%と心拡大を認めた.心電図は洞調律で心拍数73bpm,Ⅱ,Ⅲ,aVF,V4-V6でST低下を認めた.
心エコー図では,右室自由壁の壁厚増を認め,収縮末期の心室中隔の形態は変形,三尖弁逆流による右房右室間圧較差は64mmHgと右室圧高値を認めた.また,左室壁も全周性に肥厚しており,大動脈弁下にridgeを認め,左室流出路での最大流速は4.0m/s,圧較差63mmHgと大動脈弁下狭窄を認めた.左室流出路のridgeの遠位には心室中隔欠損を認めた.欠損孔は最大10mmで左室から右室への短絡血流であり,最大流速1.6m/s,圧較差10mmHgであった.また,動脈管開存を認め,短絡血流の拡張期の最大流速は2.0m/s,圧較差16mmHgであったが,収縮期には血流が確認できず,肺動脈と大動脈の収縮期圧がほぼ等圧であるためと考えられた.以上より,心室中隔欠損症,動脈管開存,大動脈弁下狭窄,肺高血圧症と心エコー図で診断した.左室収縮期圧は収縮期血圧に大動脈弁下狭窄の圧較差を加え153mmHgと推定した.右室収縮期圧は右房右室間圧較差に右房圧を加えた推定,収縮期血圧から心室中隔欠損の圧較差を引いた推定,動脈管開存の短絡血流が収縮期にはほぼ等圧であることが疑われたことからの推定を併せて70~90mmHg程度と評価し,肺高血圧症と診断した.
妊娠中絶後に施行した心臓カテーテル検査では,右室収縮期圧 90 mmHg,肺動脈収縮期圧 85 mmHg,拡張期圧 40 mmHg,平均圧 58 mmHg,左室収縮期圧 142 mmHg,大動脈収縮期圧89 mmHg,拡張期圧62 mmHg,平均圧71 mmHg,Qp/Qs=2.8,心係数 3.8 L/min/m2,肺血管抵抗 4.0 wood unit・m2と心エコー図で想定していた循環と同一であった.負荷試験にてO2,NOに反応性を示したため,外科手術の方針となり,心室中隔欠損閉鎖術,動脈管clip閉鎖術,大動脈弁下狭窄解除術を施行した.術後経過は良好で,肺高血圧症についても手術及び術後の薬物治療が奏功し改善している.
【まとめ】
本症例は未手術成人先天性心疾患の患者であり,肺高血圧症を合併していた.複数の短絡を有した複雑な循環動態であっても,妊娠中の患者においては安易に心臓カテーテル検査を実施することはできず,構造診断および肺高血圧症の診断において,心エコー図は非侵襲的かつ簡便に循環動態の評価を行うことができ有用であった.