Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 循環器
その他 2

(S821)

右室梗塞に合併した低酸素血症の診断に経食道心エコーが有用であった一例

A case of hypoxemia accompanied by right ventricular infarction that Trans-esophageal echocardiography was useful for a supporting diagnosis

出石 さとこ, 入江 圭, 吉田 千春, 森山 祥平, 横山 拓, 深田 光敬, 有田 武史, 小田代 敬太, 丸山 徹, 赤司 浩一

Satoko IDEISHI, Kei IRIE, Chiharu YOSHIDA, Shohei MORIYAMA, Taku YOKOYAMA, Mitsuhiro FUKATA, Takeshi ARITA, Keita ODASHIRO, Toru MARUYAMA, Koichi AKASHI

九州大学病院血液腫瘍心血管内科

Department Of Medicine And Biosystemic Science, Kyushu University Hospital

キーワード :

【症例】
84歳女性.前医で右冠動脈に対しての待期的な冠動脈インターベンション施行中に右冠動脈の急性閉塞を来し,右室梗塞を伴う急性心筋梗塞に至った.カテコラミン投与と輸液負荷で経過を見られていたが,呼吸状態の悪化と乏尿を認め当院緊急搬送されICU入室となった.来院時酸素15L/min投与下でSpO2 80%台であり,気管挿管を行いFiO2 1.0かつPEEP 15mmHgの陽圧換気を行ったが呼吸状態は改善は軽度でSpO2は90%前後,PaO2 70.1mmHgと著明な低酸素血症を認めていた.胸部レントゲンおよびCTでは肺うっ血や肺炎像,肺塞栓は認めず,低酸素血症の原因は不明であった.ベッドサイドでの経胸壁心エコーでは右室の基部から中部にかけて壁運動低下と,左室の圧排所見を認めており右室梗塞に伴う右心不全と考えられた.また中心静脈圧は15mmHgと著明な上昇を認めていた.ICUベッドサイドで経食道心エコーを施行したところPFOを介した右左シャントを認め,著明な低酸素血症の原因と考えられた.Swan-Ganzカテーテルで中心静脈圧のモニタリングを行いながら,カテコラミン投与,持続的血液濾過透析,人工呼呼吸器管理下での心不全管理を行った.中心静脈圧低下に伴い呼吸状態は徐々に改善を認め入院5日目に抜管,CHDFを離脱した.抜管後右上肢の麻痺を認めており,頭部MRIでは散在性の亜急性期脳梗塞を認めた.PFOを介した奇異性塞栓の可能性が考えられ,二次予防として経皮的卵円孔閉鎖術を施行した.
【考察】
卵円孔開存(patent foramen ovale:PFO)を合併した病)は成人の20%程度に認められるが,通常は左房圧が右房圧よりも高いため右左シャントを呈することはない.本症例の様に右室梗塞に伴う右房圧上昇により,PFOを介した右左シャントを来たし低酸素血症を呈した.経胸壁心エコーは描出不良であり,経食道心エコーの施行によってはじめてPFOを指摘し低酸素血症の原因の診断に至ることができた.
【結語】
右室梗塞を含めた右心系圧の上昇を伴う病態においては,低酸素血症の原因としてPFOの存在を念頭に置く必要があり,経食道心エコーで積極的な検索を行うことが診断に有用と考えられる.