Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 循環器
心筋症その他

(S815)

収縮性心膜炎の心膜癒着,心膜切除時の血行動態の変化を心エコー図にて確認し得た1例

A case of constrictive pericarditis

岩瀧 麻衣, 鍋嶋 洋裕, 屏 壮史, 尾上 武志, 永田 泰史, 尾辻 豊

Mai IWATAKI, Yousuke NABESHIMA, Soushi HEI, Takeshi ONOUE, Yasufumi NAGATA, Yutaka OTSUJI

産業医科大学第2内科学

Second Department of Internal Medicine, University of Occupational and Environmental Health, School of Medicine, Kitakyushu, Japan

キーワード :

症例は,33歳の男性.20XX年4月頃より,下腿浮腫を認め,7月までに4kgの体重増加を認めた.近医にて,腹水貯留が指摘され,当院消化器内科へ紹介となった.利尿剤の効果に乏しく,心エコー上で収縮性心膜炎が疑われ,精査加療目的に当科紹介後に入院となった.経胸壁心エコー図検査では,左室後壁側の輝度上昇と吸気時に心室中隔はbounceを認め,左室流入血の呼吸性変動は25%と吸気時に有意低下を認めた.組織ドプラ法によるE’は,左室側壁は15cm/sであったが,右室側E’は7.9cm/sと低下を認めた.心臓カテーテル検査による圧波形は,dip and plateauを示し,右室・左室同時圧曲線にて等圧化現象を認めた.内科的治療抵抗性の収縮性心膜炎と診断し,心臓血管外科に転科後,心膜切除術を施行した.術中所見は,心膜は弾性硬で厚さ5から10mm程度と肥厚し,右室前面から左室高位側壁にかけて癒着は強固で,一部石灰化も認めた.左室は前面から心尖部まで剥離され,後壁の癒着は疎であり下壁まで十分に剥離された.術中の経食道心エコー図所見では,麻酔時よりseptal bounceを認め,閉胸後までわずかに残存した.左室流入血流速波形の経時的変化は,心膜切開の時点で,まずはA波が増高し,続いて右房側剥離後よりE波増高を認めた.肺静脈血流波形は,麻酔時から右室前面剥離後まではS波D波は低値であったが,右房側剥離後より,S波D波とも著明に増高しそれは術後まで持続した.術中のSwan Ganzカテーテル検査では,麻酔時心係数は低値であったが,左房前面の心膜剥離後より心係数の上昇を認めた.術後経過は良好であり,評価目的に施行した経胸壁心エコー図上の組織ドプラでは,術中心膜癒着が疎であった左室側E’は術前に低下なく15cm/sから術後13cm/s程度であった.一方,強固に癒着していた右室側E’は元々7.9cm/sと低下していたが,術後は10cm/sへ上昇し,E’は癒着の程度を反映しうる可能性を考えた.経胸壁心エコー図法により心膜癒着を評価し,血行動態の改善とともに経食道心エコー図法により心機能の改善を確認し得た興味深い1例を経験したので報告する.