Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 循環器
心筋症その他

(S814)

心エコー図で比較的長期の経過観察が可能であった三尖弁位真菌性感染性心内膜炎の1例

A Case of Fungal Endocarditis on the Tricuspid Valve

西村 圭司, 伊藤 隆英, 赤松 加奈子, 西口 温子, 柴田 多恵子, 池田 有利, 石坂 信和, 岡田 仁克

Keiji NISHIMURA, Takahide ITOU, Kanako AKAMATSU, Atsuko NISHIGUCHI, Taeko SHIBATA, Yuri IKEDA, Nobukazu ISHIZAKA, Yoshikatsu OKADA

1大阪医科大学附属病院中央検査部, 2大阪医科大学附属病院循環器内科

1Central Clinical Laboratory, Osaka Medical College Hospital, 2Department of Cardiology, Osaka Medical College Hospital

キーワード :

【症例】
79歳男性.20XX年8月初頭から発熱があり,近医で去痰薬の投与を受けていたが改善せず,悪寒戦慄が出現したため当院に紹介された.来院時の胸部レントゲンで肺炎像を認め入院となった.血液検査では白血球14,000/μL,CRP10.8 pg/dLと高値を示し,血液培養でCandida albicansが検出された.β-D-グルカンが81.9 pg/mLと上昇しており,真菌による感染症が示唆された.経胸壁心エコー図では三尖弁前尖および中隔尖に付着する約2cmの可動性腫瘤が認められた.経食道心エコー図では大動脈弁や僧帽弁など左心系には異常はみられなかった.心房細動の病歴がないこと,下肢静脈に血栓がみられなかったことより,腫瘤は真菌性感染性心内膜炎にともなって生じた疣腫であると考えられた.血行動態が安定していたことその他諸事情により開心術のリスクが高いと判断され,抗真菌薬投与による内科的治療を継続することになった.心エコー図のフォローでは,約2ヶ月の間に徐々に疣腫は縮小し,抗真菌薬が効果的であることが示唆された.その後,β-D-グルカンの再上昇とともに疣腫の増大が認められるなど病状は悪化,肺炎再発からDIC発症を経て第164病日に永眠された.
【考察】
真菌性感染性心内膜炎は,おもに人工弁やカテーテル留置,あるいは免疫力低下に関連して発症し,Candida属による感染性心内膜炎は全体の2%未満ときわめてまれである.本例では感染が先行しており,免疫力低下にもとづく日和見感染が発症の契機になったものと思われる.本例の疣腫は諸文献のものと同じく典型的なエコー性状を呈していた.抗真菌薬に対する反応は良好で,経過の観察には心エコーが有用であった.外科的介入なく長期観察が可能であった真菌性感染性心内膜炎の報告例は少なく,3Dエコー画像なども提示しつつ報告する.