英文誌(2004-)
一般ポスター 循環器
心機能・新技術
(S807)
慢性期冠動脈疾患患者における心室血管結合の特性
Ventricular-Aortic Coupling in Patients with Cardiac Arterial Disease
郡山 恵子, 小板橋 俊美, 藤田 鉄平, 甲斐田 豊二, 前川 恵美, 野田 千春, 阿古 潤哉
Keiko KORIYAMA, Toshimi KOITABASHI, Teppei FUJITA, Toyoji KAIDA, Emi MAEKAWA, Chiharu NODA, Junya AKO
北里大学医学部循環器内科
Cardiology, Kitasato University School of Medicine
キーワード :
【背景】
左室の収縮末期容積および一回拍出量から求められる心室と血管間の結合は大動脈と左室の弾性の調和,すなわち左室から大動脈への拍出効率を評価する指標として知られている.動脈の加齢性変化や心筋の線維化による動脈,心筋の弾性の変化が,心室と血管の結合に変化をもたらし,心血管の予備機能に影響すると報告されている.
【研究の目的と方法】
心収縮能の保たれた慢性期冠動脈疾患患者において心室と血管の結合の特性について評価するため,冠動脈疾患の二次予防を目的として加療中の患者を対象として後ろ向きに解析を行った.経胸壁心臓超音波検査においてmodified Simpson法から得られた左室駆出率50%以上の患者において,通常診療の計測項目と左室収縮末期容積,一回拍出量を測定した.また,同日に測定された血圧脈波検査における収縮期圧を用いて,収縮期の左室弾性(Elv),大動脈の弾性(Ea)とその比で求められる心室血管結合(Ventricular-Arterial Coupling: VAC)を評価した.
【結果】
対象となった慢性期冠動脈疾患患者30人(男性23人,77%)の平均年齢は69歳で,加療期間の平均は6.8年,左室駆出率の平均は63±7%であった.Eaの平均は2.7 mmHg / ml で既知の基準値範囲内であったが,Elvは4.6mmHg / mlと高値で,VACは0.67と基準値の下限を示した.左室の局所壁運動障害は9人に認められた.局所壁運動異常を有さない群と有する群での比較において,左室駆出率は局所壁運動異常を有さない群で有意に高く(66±5% 対55±6%, p<0.01),Ea,Elvは両群間で有意差は認めなかったがElvは有さない群において高い傾向を示し,VACは低値(0.56±0.14 対0.91±0.40, p<0.01)であった.
【結語】
心収縮能の保たれた慢性期冠動脈疾患患者において収縮期の左室弾性は上昇しており,心室血管結合は低下する傾向がみられた.左室壁運動異常を有さない患者においては左室駆出率で評価した収縮能は良好だが,心室血管結合はより低下しており,大動脈と左室のミスマッチをきたしている可能性が示唆された.