Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 循環器
その他 1

(S803)

経胸壁冠動脈エコーにてiFR,FFRの進行を予測し得た1例

Prediction of progressive iFR and FFR by transthoracic coronary Doppler echocardiography : Report of a case.

伊藤 敦彦, 原田 修, 杉下 靖之, 田部井 史子, 山下 淳

Nobuhiko ITO, Osamu HARADA, Yasuyuki SUGISHITA, Fumiko TABEI, Jyun YAMASHITA

1公立学校共済組合関東中央病院循環器内科, 2公立学校共済組合関東中央病院臨床検査科, 3東京医科大学循環器内科

1Cordiology, Kanto Central Hospital, 2Clinical Laboratory, Kanto Central Hospital, 3Cardiology, Tokyo medical College

キーワード :

症例は 60歳代女性
主訴:労作時胸部不快感  既往歴:甲状腺機能低下症,高脂血症,高血圧
現病歴:2016年8月ころより,坂道などでの労作性の胸部不快感が出現するようになったため,外来紹介受診.心電図では前胸部誘導で陰性Tがみられ,虚血性心疾患が疑われた.心エコー図検査では,壁運動異常は認めず,冠動脈CTでは,前下行枝(LAD)近位部に有意狭窄が疑われ,CAG検査入院となった.この際,経胸壁冠動脈エコーでは,病変部最高流速は0.3m/sであり,平均流速での病変前/病変部の比率は0.33,連続の式で%DSは63.2%であった.CAGでは,右冠動脈(RCA) #2に50%,前下行枝(LAD)には,冠動脈エコーの予測に近い(50~)75%狭窄を認め,Pressure wireによる評価を行った.iFR(instantaneous wave-Free Ratio)0.94,FFR(Fractional Flow Reserve)0.87であり,冠動脈拡張術は施行しなかった.冠攣縮も疑いカルシウム拮抗剤と冠リスク管理を強めた.しかし,その約半年後,新たな心電図変化はないものの,経過観察のために施行した心エコーにて,前下行枝近位部の流速上昇(約1.43m/s)を認めた.病変前との比率は0.15と前回と比較し低下し,%DSは81.7%であった.冠動脈エコー上,左前下行枝狭窄病変の増悪が疑われたため,追加で心筋シンチ冠動脈CTを施行した.心筋負荷シンチやCTからも同部位の虚血の進行が疑われ,2017年5月に再評価入院となった.採血検査所見:冠リスクコントロールとして,LDL 83,TGL 95,HbA1c6.0.入院後経過: CAGでは,前下行枝の狭窄は,病変がやや長くなり,狭窄度は,75~90%に進行してみえた.iFR,FFR施行したところ,iFR 0.80,FFR 0.60と低下していたため,今回はPCI施行とし,さらに薬物療法を強めた.考察:至適薬物療法を始めて経過観察したが,約半年後には病変の進行がみられた.病変進行は速く,さらなる薬物療法を強化した.フォローアップの心電図に病的変化はないものの,非侵襲的な経胸壁冠動脈エコーで病変部流速変化をとらえることができ,早期に対応することができた.結語:心筋負荷シンチや冠動脈CT,iFR, FFRなどの虚血評価の検査と同様に,経胸壁冠動脈エコー検査は,前下行枝病変部に限られるが,狭窄評価可能と考えられた.また,iFR,FFRの結果,PCIを行われなかった症例の予後は悪くないといわれているが,本症例のように進行する例かどうか観察するためには,より非侵襲的な経胸壁冠動脈エコーを追加する意義があると考えられる.