Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般ポスター 循環器
その他 1

(S802)

シェーグレン症候群に合併した肺高血圧症を心臓超音波検査にて診断した一例

Sjogren's syndrome with pulmonary hypertention:A case report

中山 小百合, 下山 寿, 山本 聖, 二井 理恵, 嶋本 新作, 小竹 悠理香

Sayuri NAKAYAMA, Hisashi SHIMOYAMA, Satoshi YAMAMOTO, Rie HUTAI, Shinsaku SHIMAMOTO, Yurika KOTAKE

市立伊丹病院循環器内科

cardiology, Itami City Hospital

キーワード :

はじめに:心不全疑いにて当科外来に紹介受診となった72歳女性.全身浮腫,両側胸水貯留のため近医にて心不全を疑われた.心電図にて右心負荷所見,心臓超音波検査にて著明な肺高血圧を認め,肺高血圧症に伴う右心不全の診断に至った.入院中の検査にてSS-A抗体陽性,唾液腺機能低下を認め,シェーグレン症候群の確診を得た.膠原病に伴う肺高血圧症の診断でステロイド,免疫抑制薬による治療を開始し,肺高血圧は改善を認めている.外来での心臓超音波検査が診断の一助となった症例を報告する.
症例報告:症例は72歳女性.30代の頃に関節リウマチと診断され,一時内服薬にて加療された.来院時,関節痛等の症状は認めず,関節リウマチに対する内服は中止となっていた.2017年9月頃から下腿浮腫が出現し,近医で利尿剤を処方されたが,その後も浮腫が増強した.同年11月には全身に浮腫が拡大し,近医での胸部レントゲンにて両側胸水貯留を認めたため,心不全の疑いで当科紹介となった.安静時の自覚症状は認めなかったものの,軽労作にて息切れが出現した.著明な全身浮腫を認め,SpO2 は室内気で84%と低下していた.心電図では右軸偏位,V1~V4陰性T波と右室負荷所見を認め,心臓超音波検査にて右室拡大,左室の圧排所見と著明な肺高血圧(三尖弁収縮期圧較差(TR-PG)119mmHg)を認めた.左室は圧排されているものの,左室機能低下は認めず,肺高血圧症に伴う右心不全と診断した.利尿剤静注にて治療を開始し,肺高血圧症の原因検索を行った.造影CT,血流シンチより肺塞栓症は否定され,右心カテーテルにて左心不全,心内シャントによる肺高血圧も否定された.CTにて下肺野に間質性肺炎の所見を認めたが,小範囲であり上記の如く著明な肺高血圧症の原因となる病変ではなかったため,更なる検査を行った.血液検査にてSS-A抗体陽性,唾液腺シンチにて唾液腺機能低下を認め,シェーグレン症候群の診断に至った.シェーグレン症候群に伴うⅠ群肺高血圧症と診断し,プレドニゾロン,免疫抑制薬にて治療を開始した.治療開始後,症状は改善を認めたが,TR-PG 46mmHgと肺高血圧は残存していたため,免疫抑制薬の変更や肺血管治療薬の導入を検討している.
考察:肺高血圧症を合併する膠原病として,強皮症(SSc),全身性エリテマトーデス(SLE),混合性結合組織病(MCTD)の頻度は高い.関節リウマチやシェーグレン症候群でも肺高血圧症の報告はあるが,その頻度は稀である.今回,シェーグレン症候群を有し,関節リウマチの既往のある女性に発症した肺高血圧症を経験したため症例報告する.膠原病に合併する肺高血圧症は予後不良群である.肺高血圧症を早期に診断し,SSc,SLE,MCTDを示唆する所見に乏しい症例でも,膠原病の可能性を否定せず検索することが重要であると考えられる.