田中 智美, 中坊 亜由美, 小林 紘子, 水野 幸子, 斎藤 優樹, 菅井 綾里, 飯塚 ともよ, 大久保 健志, 南野 徹

Satomi TANAKA, Ayumi NAKABOU, Hiroko KOBAYASHI, Sachiko MIZUNO, Yuki SAITOU, Ayari SUGAI, Tomoyo IIZUKA, Takeshi OOKUBO, Toru MINAMINO

¹新潟大学医歯学総合病院循環器内科, ²新潟大学医歯学総合病院診療支援部臨床検査部門

¹Department of Cardiovascular Biology and Medicine, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences, ²Department of Clinical Examination, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences

キーワード :

【背景】
心エコー図法における肺高血圧症の所見として，三尖弁最大圧較差（TR−PG）から求める推定肺動脈収縮期圧の上昇と，肺動脈収縮期流速加速時間/右心室駆出時間（AcT / ET）が0.3 未満であることがあるが，両者ともに肺高血圧を疑う値を有する症例の背景は不明である．
【目的】
心エコー図法からみた肺高血圧症を疑う症例の特徴を検討する．
【方法】
2015年4月から2017年3月に新潟大学医歯学総合病院生理検査室にて心エコー検査を施行した8480例のうち，TR−PG25mmHg以上を示すものが771例，AcT/ETが0.3未満を示すものが244例存在し，両者を満たす148例について基礎疾患，心エコー図計測値を検討した．
【結果】
基礎疾患として，98例（65.5％）に心疾患（先天性心疾患5例，心筋症23例，虚血性心疾患17例，不整脈60例，弁膜症38例），41例（27.7％）に肺高血圧の原因となる疾患（膠原病・間質性肺炎22例，慢性閉塞性肺疾患1例，門脈圧亢進症2例，動静脈シャント1例）が存在し，心疾患及び肺高血圧原因疾患が存在していない症例は10例だった．基礎疾患に心疾患を認める群（心疾患群）と肺高血圧原因疾患を認める群（肺高血圧原因疾患群）の比較では，TR−PGは有意に肺高血圧原因疾患群が高値であったが（心疾患群：35.03±1.64mmHg，肺高血圧原因疾患群：45.59±4.98mmHg，p＜0.05），右室機能低下を反映する三尖弁輪収縮期移動距離（TAPSE）は両者で有意差を認めなかった．また，左室拡張能を反映するE/e’は心疾患群で有意に高値であった（心疾患群：17.78±1.97，肺高血圧原因疾患群：12.55±1.76，p＜0.05）．
【結語】
心エコー図法にて肺高血圧が疑われる症例のうち，93.9％に心疾患もしくは肺高血圧の原因となる疾患が背景に存在していた．TR−PGは肺高血圧原因疾患群にてより高値となる傾向であったが，右室機能の低下は有意な差を認めなかった．