篠田 航平, 吉澤 昌純, 石倉 誠也, 田川 憲男, 入江 喬介

Kohei SHINODA, Masasumi YOSHIZAWA, Seiya ISHIKURA, Norio TAGAWA, Takasuke IRIE

¹東京都立産業技術高等専門学校創造工学専攻, ²首都大学東京大学院システムデザイン研究科, ³マイクロソニック株式会社社長

¹Innovative Engineering, Tokyo Metropolitan College of Industrial Technology, ²Graduate School of System Design, Tokyo Metropolitan University, ³President, Microsonic co., ltd., Tokyo, Japan

キーワード :

【目的】
我々が実現を目指す穿刺型超音波顕微鏡^（1-2）では，超音波干渉法により音響インピーダンスの差を輝度変調し組織表面を画像化する方法を用いて，組織の物性情報を得ることによって病理診断を可能とすることを目標としている．また，超音波干渉法によるマルチスペクトル位相差画像法^（3）により，複数の周波数で計測した画像を1枚に合成することで，試料の周波数依存性を反映した画像を取得できる．今回，マルチスペクトル位相差画像法にて生体試料を対象とした事例研究を通して有用性を検討する．
【実験方法】
計測試料の一例を示す．牛肉の赤身部分について筋線維に直交する断面のマルチスペクトル位相差画像を取得した．試料は水中に没し計測を行った．振動子に波数20，振幅10V_p-p のバースト波を印加し，伝送線路およびセンサとして用いる石英棒先端と試料表面からの反射信号を干渉させ，試料と石英棒先端の間の距離を変化させ振幅が最大となる距離で固定した．自動ステージにより0.05mm間隔2mm四方の領域を2次元走査し，音響インピーダンスの大きさと位相差を反映する試料の干渉信号の振幅分布を画像化した．振動子に印加するバースト波の周波数は40MHz，44.9MHz，50MHzとし，取得した3枚の画像をそれぞれ青，緑，赤に対応させ1枚に合成し，マルチスペクトル位相差画像を取得した．
【結果と考察】
Fig.1に結果を示す．計測試料の光学画像と，各周波数の画像とそれを合成したカラーのマルチスペクトル位相差画像をグレースケール表示にて示す．グレースケールでは分かりにくいが，カラーで表示すると光学画像で斜めに走る筋の部分がより分かりやすく表示される．また，筋を境に右下と左上で肉質が異なっており，これもマルチスペクトル位相差画像上に色の変化として表れている．このことから，生体試料の組織の違いを画像上で確認することができた．今後，他の生体試料についても検討する予定である．
【文献】
1. M. Yoshizawa, T. Irie, K. Itoh, and T. Moriya: Jpn. J. Appl. Phys. 49（2010）08HF03.
2. 吉澤昌純, 瀬川達也, 入江喬介, ほか. J Med Ultrasonics Vo. 40 Supplement. S712（2014）.
3. 石倉誠也, 田川憲男, 吉澤昌純, ほか. 超音波干渉法による位相差画像法を用いた組織の周波数依存性の検討. Symp. Ultrason. Elec., 38, 2P5-8（Oct. 2017）.