Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 その他
頭頸部

(S787)

超音波検査上リンパ節内部構造の消失を伴ったIgG4関連疾患の1例

A case of IgG4-related disease with loss of lymph nodes internal structure on ultrasonography

森崎 剛史, 福原 隆宏, 松田 枝里子, 堂西 亮平, 竹内 裕美

Tsuyoshi MORISAKI, Takahiro FUKUHARA, Eriko MATSUDA, Ryohei DONISHI, Hiromi TAKEUCHI

鳥取大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科

Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Tottori University Faculty of Medicine

キーワード :

【はじめに】
IgG4関連疾患にはリンパ節中にIgG4陽性形質細胞が浸潤するタイプのものがある.このたびわれわれは,リンパ節内部構造が消失し,頸部超音波検査で悪性を強く疑ったIgG4関連疾患による頸部リンパ節腫脹症例を経験した.
【症例】
症例は67歳の女性.右顎下部腫瘤の増大傾向を主訴に受診した.両側顎下部に最大径4cmほどの弾性硬な頸部リンパ節腫脹が多発していた.頸部超音波検査では,厚みが増し形状が球形で,正常で見られるfatty hilumが消失し,均質となり,悪性を疑う所見であった.まず,頭頸部癌の頸部リンパ節転移の可能性を考え,頭頸部領域を精査したが,原発となる病変は認めなかった.PET/CT検査では多発する頸部,縦隔リンパ節腫脹に一致して強いFDG集積を認めた.さらに可溶性IL-2レセプター値の血中濃度上昇を認めたため,次に悪性リンパ腫を疑った.そこで腫大した顎下部リンパ節の組織生検をしたが,悪性リンパ腫を疑う所見は認めず,反応性リンパ濾胞過形成の所見であった.フローサイトメトリーでもκ:λ比に偏りはなく,悪性リンパ腫は否定的であった.その後,免疫組織学的検査で胚中心に多数のIgG4陽性形質細胞の浸潤を認めたため,血清IgG4:614 mg/dlと高値(基準値:105 mg/dl以下)であることを確認し,IgG4関連疾患と診断した.全身精査したところ,リンパ節以外の病変は顎下腺のみであり,整容面以外に症状がなく,糖尿病の既往があったためステロイドを使用せず無治療での経過観察の方針とした.頸部超音波検査では両側の顎下腺のエコー輝度の低下,不均質性が見られ,IgG4関連唾液腺炎に矛盾しない所見を認めた.
【考察】
IgG4関連疾患は良性の疾患であるにもかかわらず,リンパ節病変として発症すると,リンパ節内への形質細胞の浸潤により正常のリンパ節内部構造を消失させる場合があることが示された.頸部超音波検査にてリンパ節の内部構造が消失し悪性が疑われた場合も,顎下腺の超音波像からIgG4関連疾患を疑うことができた可能性も考えられた.