Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 その他
頭頸部

(S786)

遊離空腸を用いた頸部再建術後の腸間膜リンパ節腫脹にたいする超音波診断

Cervical ultrasonographic examination for patients with free jejunal transfer

江原 浩明, 福原 隆宏, 堂西 亮平, 松田 枝里子, 森崎 剛史, 竹内 裕美

Hiroaki EHARA, Takahiro FUKUHARA, Ryouhei DONISHI, Eriko MATSUDA, Tsuyoshi MORISAKI, Hiromi TAKEUCHI

鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

Department of Otolaryngology:Head and Neck Surgery,Faculty of Medicine, tottori university

キーワード :

【はじめに】
下咽頭癌や頸部食道癌に対して,咽頭喉頭頸部食道摘出術を行った場合,遊離空腸による再建術が行われる.そして術後の頸部リンパ節における再発診断のための超音波検査で,頸部に移植された遊離空腸腸間膜リンパ節(以下,腸間膜リンパ節)が腫脹していることは珍しくはなく,再発転移との鑑別診断が難しいことも多い.この度我々は,頸部移植後の遊離空腸間膜リンパ節腫大に対する超音波診断について検討を行った.
【対象と方法】
2006年から2017年の間に当科において頭頸部癌で咽喉頭頸部食道摘出術後に遊離空腸による咽頭食道再建術を施行した82例のうち,術後の超音波検査を行い検討可能であった49例を対象とした.これらの症例の術後超音波検査結果のうち,長径が5mm以上の腸間膜リンパ節について,長径,厚み,縦横比を測定し検討した.
【結果と考察】
術後の超音波検査が検討可能であった49例のうち,腸間膜リンパ節腫脹を認めたものが22例あった.腫脹が認めらた腸間膜リンパ節は97個あり,平均値はそれぞれ長径が8.7mm,厚みが4.7mm,長軸比が0.58であった.22例のうち5例で長径,厚み,縦横比が大きいなどの理由で穿刺吸引細胞診を行ったが,いずれも悪性所見は認めなかった.また1例で腸間膜リンパ節が増大傾向を示したため,リンパ節生検を行ったところ,転移陽性であった.
頸部リンパ節では転移陽性と診断されるような大きさ,形でも,腸間膜リンパ節ではすべて陰性であった.遊離空腸では再建した血管が唯一の血流となるため,診断のために穿刺細胞診を行う際には,超音波検査で再建血管を確認しながらこれを損傷しないように注意を払う必要がある.このため頭頸部リンパ節の転移診断と同様な基準で腸間膜リンパ節の腫脹を診断して,穿刺細胞生検を施行することは控えた方がよいと思われた.
【結論】
超音波検査において,頸部移植後の腸間膜リンパ節は,長径,厚み,縦横比が大きくても転移ではないことが多く,血流変化や増大傾向などの情報を加えて判断し,安易な穿刺生検は控えるべきと考えられた.