Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 その他
頭頸部

(S785)

唾液腺腫瘍の鑑別におけるARFI imagingの臨床的有用性の検討

The clinical utility of ARFI imaging for differentiating salivary gland tumors

松田 枝里子, 福原 隆宏, 堂西 亮平, 小川 絢女, 竹内 裕美

Eriko MATSUDA, Takahiro FUKUHARA, Ryohei DONISHI, Ayame OGAWA, Hiromi TAKEUCHI

1鳥取大学医学部感覚運動医学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野, 2鳥取大学大学院医学系研究科保健学専攻

1Department of Otolaryngology-Head and Neck Surgery, Tottori University Faculty of Medicine, 2School of Health Science, Tottori University Faculty of Medicine

キーワード :

【目的】
唾液腺腫瘍の超音波検査では,従来Bモードや血流によって良悪性の鑑別を行うが,鑑別が困難なことも少なくない.そのため付加情報としてのエラストグラフィーの有用性が期待されるが,従来の用手圧迫エラストグラフィーでは十分な診断精度が得られていない.新しいAcoustic radiation force impulse(ARFI)imagingは,音響的圧迫により生じた組織の変位の程度を画像化する定性的なエラストグラフィーであり,現在のところSiemens社のVirtual Touch Imaging(VTI)のみである.VTIは細かな音波で圧迫する点が,プローブ全体で押す用手圧迫エラストグラフィーとは異なるため,新たな情報をもたらす可能性がある.しかしVTIは,グレースケール表示であることから分類方法が定まっておらず,さらに唾液腺領域においてはVTIに関する報告がほとんどない.本研究の目的は,唾液腺腫瘍のVTIをパターン分類し,良悪性の鑑別における臨床的有用性を検証することである.
【対象と方法】
2014年7月から2017年8月の間に当科を受診した唾液腺腫瘍を有する患者で,超音波検査を施行し,かつ細胞診または組織診により診断が得られたものを対象とした.超音波診断装置はACUSON S2000(Siemens Healthineers)を用い,VTIを記録した.VTIの画像はグレースケールのパターンによって5つに分類した.パターン1は白,パターン2は明るいグレーに白い部分が混在,パターン3は明るいグレー,パターン4は暗いグレーに明るい部分が混在,パターン5は暗いグレーまたは黒とした.良悪性および各腫瘍におけるVTIの結果を比較した.
【結果】
良性腫瘍93例(ワルチン腫瘍56例,多形腺腫34例,オンコサイトーマ3例),悪性腫瘍15例(扁平上皮癌3例,粘表皮癌2例,腺様嚢胞癌2例,唾液腺導管癌2例,筋上皮癌2例,上皮筋上皮癌1例,腺房細胞癌1例,大細胞癌1例,多形腺腫由来癌1例)だった.VTIの結果はパターン1から5までそれぞれ,良性腫瘍(8例,34例,29例,22例,10例),悪性腫瘍(1例,1例,2例,3例,11例)だった.具体的には,良性腫瘍のうちワルチン腫瘍ではパターン1から3が48例(85.7%)を占めたが,多形腺腫では24例(70.6%)がパターン4と5であり変位量が少なく硬いと判定された.一方,悪性腫瘍では11例(73.3%)がパターン4と5であった.パターン4と5を悪性と定義すると,VTIの良悪性の鑑別能は,感度73.3%,特異度65.6%,正診率65.7%であった.
【結語】
本結果ではVTIのみでの良悪性の診断精度は十分でなく,VTIを良悪性の鑑別に用いるためにはさらなる工夫が必要と考えられた.