Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 その他
健診

(S784)

当センターにて発見された肝細胞がんの検討

Study of the hepatocellular carcinoma in our center

田上 恵, 大野 奈緒, 竹本 京子, 木場 博幸, 大竹 宏治

Megumi TANOUE, Nao OHNO, Kyoko TAKEMOTO, Hiroyuki KOBA, Koji OHTAKE

1日本赤十字社熊本健康管理センター第二検査課, 2日本赤十字社熊本健康管理センター内科

1Second examination division, Japanese Red Cross Kumamoto Health Care Center, 2Depertment of internal medicine, Japanese Red Cross Kumamoto Health Care Center

キーワード :

【はじめに】
原発性肝がんの大部分が肝細胞がん(以下HCC)であり,その多くはウイルス性肝疾患や,アルコール性肝障害などの慢性疾患を基盤に発症するとされているが,最近,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を基盤にしたHCCの増加が懸念されている.今回,当センターで発見されたHCCについて比較検討し,さらに非ウイルス性および非アルコール性のHCCについて検討したので報告する.
【対象】
2006年から2015年度の10年間において,当センターの施設内健診超音波検査で肝腫瘤を指摘され,精密検査の結果がHCCであった40症例.
【方法】
1,40例をウイルス性HCC(以下Ⅰ群),アルコール性HCC(以下Ⅱ群),非ウイルス非アルコール性HCC(以下Ⅲ群)に分類し,数,年齢,性別,大きさについて検討した.
2,Ⅲ群について,超音波画像,BMI,血圧,血液生化学所見,既往歴について検討した.
【結果】
1,数:Ⅰ群24例(60%),Ⅱ群4例(10%),Ⅲ群12例(30%)年齢:Ⅰ群38~78(平均61.4)才,Ⅱ群45~68(平均59.0)才,Ⅲ群57~82(平均69.0)才 性別:Ⅰ群男性18例(75%)女性6例(25%),Ⅱ群男性4例(100%),Ⅲ群男性10例(83%)女性2例(17%)大きさ:Ⅰ群9~86(平均26.5)mm,Ⅱ群15~29(平均22.0)mm,Ⅲ群16~96(平均38.6)mmだった.
2,Ⅲ群における超音波画像:肝実質エコー粗3例,脂肪肝6例,正常肝3例 腫瘤像:辺縁低エコー帯を認めた高エコー腫瘤3例,ほぼ均一な高エコー腫瘤3例,辺縁低エコー帯を認め,モザイクパターンを示した等エコー腫瘤3例,ほぼ均一な等エコー腫瘤2例,均一な低エコー腫瘤1例 BMI:18.5~24.9 4例,25.0~34.9 8例 血圧:正常8例,軽度上昇1例,上昇3例 血液生化学所見・糖代謝:軽度上昇4例,上昇8例 脂質:正常3例,軽度上昇4例,上昇5例 肝機能:正常4例,軽度上昇4例,上昇4例 既往歴:糖尿病9例,高血圧7例,脂質異常症1例,肝機能異常1例,高尿酸血症1例だった.
【まとめ・考察】
肝炎治療法の進歩により,ウイルス性HCCは減少傾向にあると言われている.当センターで発見されたHCCにおいても40%は非ウイルス性のHCCであった.Ⅲ群はⅠ群,Ⅱ群に比べて大きな性差は無かったが,高齢で腫瘤径が大きく見つかる傾向であった.
Ⅲ群における超音波画像では,肝実質に異常を認めた症例が多かった.半数には辺縁低エコー帯やモザイクパターンなどのHCCに特徴的な所見を認めたが,典型的な特徴を示さない症例もあり,他の肝腫瘤との鑑別に注意が必要である.特に脂肪肝がある場合は腫瘤自体が見えにくいため,画像調節や拡大操作,体位変換などを行い,慎重に観察する必要がある.BMIにおいては,半数以上が軽度の上昇であった.血液生化学所見においては,糖代謝は全症例,脂質,肝機能においても半数以上が高値を示しており,糖尿病や高血圧の既往歴のある症例が多かった.
HCC診断の第一歩は超音波検査における肝腫瘤の発見であり,スクリーニング検査を適切に実施することが重要であるが,特に糖尿病,高血圧,脂質異常症,肝機能異常の危険因子を持つ場合は有効と考える.また背景に危険因子を持たない症例も見られたことから,今後さらに症例を蓄積し検討していきたい.