Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 その他
眼科その他

(S779)

和漢薬 小柴胡湯内服後の家兎眼循環動態の検討

Study of ocular hemodynamics after oral Japanese herbal medicine Shosaikoto

山田 利津子, 熊丸 裕也, 竹林 英一郎, 山田 誠一

Ritsuko YAMADA, Hiroya KUMAMARU, Ei-Ichiro TAKEBAYASHI, Sei-Ichi YAMADA

1聖マリアンナ医科大学大学院アイソトープ研究室, 2AOI国際病院健康管理センター, 3竹林眼科医院眼科, 4東京医科歯科大学国際環境寄生虫病学

1Radioisotope Institute, St. Marianna University School of Medicine, 2Health Care Center, AOI Universal Hospital, 3Ophthalmology, Takebayashi Eye Clinic, 4Section of Environmental Parasitology, Tokyo Medical and Dental University

キーワード :

【目的】
柴胡と黄芩を主薬とした柴胡剤のなかで,大柴胡湯薬と小柴胡湯(xiaochaihu tang)は,其々枳実・大黄・芍薬と人参・甘草を含有することから,大柴胡湯は実症に,小柴胡湯は中間症の抗炎症剤に適応されている.小柴胡湯は構成成分のサイコサポニンにステロイド様の作用があり,肝機能障害の改善や肝血流量の増加,免疫調節作用,抗炎症作用,抗アレルギー作用,慢性B型肝炎や慢性C型肝炎に対する効果などが確認されている.小柴胡湯の免疫調整作用のなかで,サイトカイン産生に関してはin vitroにIL-1, IL-2, 可溶性IL-2レセプター,IL-1β,IL-6, GM-CSF, G-CS, TNF-α,IFN-γの産生量の増加やIL-5, IL-6の抑制がみられ, in vivoでMφの活性化がみられる.また,活性酸素抑制作用があるため眼科領域でもリンパ節炎やブドウ膜炎の治療に用いられている.今回は,小柴胡湯内服後の家兎眼循環動態を超音波パルスドプラ法で検討した.
【対象】
雌Dutch種家兎18匹(体重2.3±0.3kg)を対象とした.
【方法】
小柴胡湯(ツムラ)原末各々459mg(以下1:1群と示す),45.9mg(以下1:10群と示す),4.59mg/kg(以下1:100群と示す)を滅菌蒸留水で希釈し4ml/匹に調整した.齧歯目用ゾンデで単回内服させ, 1,2,4,6時間2,7,14日目に眼窩内短後毛様動脈(SPCA),外眼動脈(OA)の流速を超音波パルスドプラ法で測定し, 投与前値と比較した.超音波診断装置はSSA-260A(東芝)中心周波数7.5MHzリニア電子スキャナを用いた. SPCAの流速は視神経に隣接し視神経乳頭から約1mm後方のカラードプラ信号をとらえて計測した.OAの流速は眼窩内のもっとも後方のカラードプラ信号をとらえて計測した13,14.両眼の測定を行い,平均値を測定値とした.煩雑さをさけるため時刻毎に基準値を算出した.基準値は,各時刻における18匹の平均値とした.治療開始後の各時刻における測定値(x)の, 各時刻の基準値(x0)からの変動率(δx)を電圧変動率の類似法で,下記のように算出し, 治療開始前値と比較した.
       δx =100(x – x0)/ x0
平均値の差の有意差検定にはMann-WhitneyのU検定を用いた.
用量反応性は今回,内服2時間後の平均流速の変動率(δVmean), Resistance Indexの変動率(δRI)について対数回帰分析を用いて行った.危険率0.05以下を有意水準とした.
【結果】
 SPCAの平均流速変動率(δVmean)は459mg/kg投与群(1:1),45.9mg/kg投与群(1:10), 4.59mg/kg投与群(1:100)ともに4時間後に有意な(p<0.0001)上昇を示した.459mg/kg投与群(1:1)では7,14日後においても有意な(p<0.05)上昇がみられた.SPCAのResistance Index変動率(δRI)は459mg/kg投与群(1:1)が4時間後に有意な(p<0.05)下降を示した.
OAのδVmeanは459mg/kg投与群(1:1)が1,2,4,6時間後と2日後に有意な(p<0.05)上昇を示した.OAのδRIは459mg/kg投与群(1:1)が6時間・2日目に有意な(p<0.05)下降を示した.
【結論】
小柴胡湯内服後,家兎SPCA,OA血流速度の上昇,RIの下降にみられる眼循環の改善がみられた.閉塞性血管炎を病態とする各種ぶどう膜炎への適応が期待される.