Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 運動器
病態へのアプローチ

(S773)

尾骨前脊索腫の1例とその超音波像とその発生についての研究

Pre-coccygeal chordoma and its ultrasonographical apaearance and its origination 

鈴木 正敏, 土田 隼太郎, 廣田 健児, 清永 英利, 小野崎 智之, 細田 誠弥, 加地 正明, 斎尾 武郎, 松熊 晋

Masatoshi SUZUKI, Shuntarou TSUCHIDA, Kenji HIROTA, Hidetoshi KIYONAGA, Tomoyuki ONAZAKI, Seiya HOSODA, Masaaki KAJI, Takeo SAIO, Susumu MATSUKUMA

1フジ虎ノ門整形外科病院外科, 2フジ虎ノ門整形外科病院整形外科, 3フジ虎ノ門整形外科病院内科, 4自衛隊中央病院研究検査課,病理

1surgery, FujiToranomon Orthopaedic Hospital, 2Orthopaedics, FujiToranomon Orthopaedic Hospital, 3medicine, FujiToranomon Orthopaedic Hospital, 4pathology, The Central Self-defence Hospital

キーワード :

【はじめに】
脊索腫は胎生期,神経原器の脊索細胞から発生する稀な腫瘍で,主に仙骨下前と頭蓋亭に発生し,その多くは10cm以上の大きさになるまで発見されず,症状がでて発見されてからは,姑息切除となることが多く,有効な追加治療がないので,平均余命は約年間と言われている.また,その主な発生部位のため,超音波診断に対象とはならない.今回尾骨前に発生した脊索腫を経験し,その超音波像について検討したので報告する.
【症例】
64才,男性.
【主訴】
は臀部痛
【起始および経過】
2015年2月近医受診.2016年2月別の近医受診.臀部腫瘍として紹介される.尾骨前のdevelopmental cyst様の腫瘍として,主に悪性奇形腫を考え,3月尾骨合併切除.尾骨には強固に癒着するが,仙骨に接しているだけで,癒着していなかった.病理診断でphysaliphorousな細胞を持つ脊索腫と診断.
【USとドプラー検査】
尾骨の左右から経会陰走査で,表皮直下に後縁は存在し,尾骨先端から肛門側表皮近くに膨瘤していた.尾骨前の約5cm大の球形の充実性腫瘍で,内部および前方被膜に不整形の石灰化を多数ともなっていた.後側は放射状にhypervascularであった.
【CT】
尾骨前の数cm大の概ね球形の腫瘍だが,上部で多房性の腫瘍で,造影でわずかな造影効果を認めた.
【MRI】
尾骨前の多房性腫瘍.
【注腸造影】
では,腫瘍は肛門後に接していた.
【大腸内視鏡検査】
では肛門,直腸に異常を認めなかった.
【考察】
脊索腫は稀な腫瘍であるが,多くは仙骨下部正中から発生し,10cm以上の大きさになって,尾骨,直腸,肛門,脊髄などに浸潤して発症する.尾骨前あるいは下に限局して発生することは,さらにまれで,尾骨前脊索腫として報告されている症例は4例であった(文献1,2,3など).仙骨前脊索腫は大きくなると前腹壁から観察できることもありうるが,尾骨まで浸潤した仙骨前脊索腫はCT,MRIで評価されている.一方,尾骨前スペース(後は尾骨,前は直腸後壁,下は肛門挙筋,上は腹膜翻転部,外縁は尿管,文献4,5)に発生するdevelopmental cystは主に,dermoid cyst,epidermoid cyst,tailgut cystであるが,消化器外科,皮膚科で発見された場合に経会陰走査US検査されていることが稀にある.また腸重積,奇形腫も鑑別が必要であったが,経験がなく術前診断確定できなかった.Developmental cystと脊索腫との関係について,古くから研究されており(文献4,5),胎生期5週頃,肛門,脊椎の発生過程で,primitive knot付近に残存するtotipotenntial cellが尾骨先端に位置するとされ,この付近にdevelopmental cyst,奇形腫,脊索腫が1直線上で発生する可能性があると考えられた.
【参考文献】
(1),尾骨前の発生した脊索腫に1例,長谷川智彦ほか,整形外科,49(12),1460-1471,1988.(2)診断に至るまで長期間を要した尾骨脊索腫の1例,加藤有紀ほか,臨整外,36(1)77-80,2001.(3),尾骨脊索腫に1例,田中亨ほか,skin cancer,15(3)271-275,2000.(4)前仙骨部epidermoid cystの1例:枝畑智彦ほか,日本臨床外科学会誌,58(10)2454-2457,1997(5)Tailgut cysts:Brent M,Hjerstad,et al,AJCP,89(2),139-147,1988