Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 運動器
病態へのアプローチ

(S772)

70才代の肩腱板断裂の超音波診断

Ultrasound diagnosis of rotator cuff tear with seventies people

平林 伸治

Shinji HIRABAYASHI

日生病院リハビリテーション科

Department of Rehabilitation Medicine, Nissay Hospital

キーワード :

【はじめに】
整形外科手術後に車椅子操作の障害となる肩病変;腱板断裂,石灰・結晶沈着,インピンジメント障害となる腱板炎,肩峰下滑液包炎を観察した.2016年関西地方会ではそのうち80歳代について,腱板断裂は101例中61例,60.4%に認め,検査器械を変更する2013年以前の50.4%から10%増えたことを報告した.そこで症例の多い70歳代の高齢者の腱板断裂についてどこが変ってきているのかを検討した.
【方法と対象】
2013年から2016年に大阪労災病院で下肢人工関節全置換術を施行した症例のうち,SLE,関節リウマチなどの多発関節炎,脳血管障害による片麻痺,肩の手術例などを除外して対象とした.超音波検査は東芝Aplio300,12MHz探触子を使用した.肩の走査は,①肩関節前方より走査.腕を下垂し,上腕二頭筋を短軸方向から走査,回旋を加え肩甲下筋腱を観察する.②大結節から棘上筋,棘下筋を短軸方向から観察する.③直角方向に探触子の向きを変え,肩峰~大結節と棘上筋を長軸方向に走査する方向を標準画面とする.④棘上筋~棘下筋に標準画面と平行に走査し観察した.
 腱板断裂診断基準は,①腱板欠損,腱板厚さ<4mm.②陥凹,不連続(全層性).③腱内低エコーを所見とし陥凹,不連続(腱板表面)を所見として診断し,棘上筋腱の長軸方向の計測で 大(3-5cm),中(1-3cm),小(<1cm)断裂は全層性とした.さらに,腱表面や内部にのみ断裂を認め,④関節側,滑液包側断裂は部分断裂.⑤腱内断裂は腱内部が低~無エコーで部分断裂とした.
断裂の形態を全層と部分断裂で比較した.
 同時期に検査した751人中70才代は337人(男33,女304).そのうち1例の1肩に可動域制限があり,走査と評価ができなかった.
【結果】
腱板断裂は337人中142人(42.1%),673肩の191肩(28.4%)に認めた.全層断裂は小断裂83(断裂肩の43.5%;検査肩の12.3%),中断裂19(9.9%;2.8%),大断裂53(27.7%;7.9%).部分断裂は腱内断裂21(11.0%;3.1%),滑液胞側8(4.2%;1.2%),関節側9(4.7%;1.3%)に認めた.性別では男19(57.6%),女123(40.5%)が断裂していた.
【考察】
2013年までの70歳代の454人中で腱板断裂175人(38.5%)であった.全層断裂は22.1%,部分断裂は3.2%であった.今回は142人(42.1%)の断裂者で全層断裂23%,部分断裂5.6%と軽度の増加である.腱内断裂の画像はより鮮明になっているが疾患診断の大幅な増加にはならなかった.部分断裂自体が少数であることが増加につながらなかったと推測する.
【結論】
70歳代の肩腱板断裂は23%に生じた.器械の改良は腱内断裂始めとする不全断裂の画像診断の向上に役立つが,診断の定義である棘上筋腱形態変化は器械の診断が上がっても鋭敏な診断基準であるといえる.