Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 血管
動脈疾患

(S767)

発症初期にcarotidynia様の像を呈した高安動脈炎の一例

A case of Takayasu's arteritis with carotidynia-like image in early onset

細見 恵, 岩崎 昭宏, 松本 尚子, 米澤 宜洋, 影山 敦子, 足立 誠己, 奥 成聡, 濱口 浩敏

Megumi HOSOMI, Akihiro IWASAKI, Naoko MATSUMOTO, Yoshihiro YONEZAWA, Atsuko KAGEYAMA, Masami ADACHI, Naritoshi OKU, Hirotoshi HAMAGUCHI

1地方独立行政法人明石市立市民病院臨床検査課, 2地方独立行政法人明石市立市民病院血液内科, 3北播磨総合医療センター神経内科

1Clinical Laboratory, Akashi Municipal Hospital, 2Hematology, Akashi Municipal Hospital, 3Neurology, Kita-Harima Medical Center

キーワード :

【はじめに】
高安動脈炎は弾性血管である大動脈や鎖骨下動脈,総頸動脈など主幹動脈に壁肥厚がおこり,狭窄,閉塞,拡張をきたす疾患である.症状は発熱や倦怠感など慢性の感冒様症状として発見されることが多い.一方,carotidyniaは頸動脈洞を中心とし,弾性血管の総頸動脈から筋性血管である内頸動脈まで片側性に壁肥厚を認める.頸部の圧痛や腫脹,拍動増強,一過性の発熱などで約2週間以内に消失すると言われている.どちらも血管炎であるが,障害部位や経過,予後がそれぞれ異なっている.今回,高安動脈炎の発症初期と見られる症例においてcarotidynia様の画像を呈した症例を経験したので報告する.
【症例】
20歳代女性.左頸部の圧痛と発熱の持続を主訴に他院より紹介された.当院初診時の血液学的所見はWBC 7,200/μl, CRP 3.42mg/dlであった.頸動脈超音波検査を施行し,左総頸動脈から内頸動脈起始部にかけて,外膜が不明瞭な壁肥厚を認めた(写真).MRI/MRA検査にて同部位に壁肥厚と血管外膜及び周囲組織にT2高信号域がみられ,同部位の炎症所見が疑われた.右頸動脈や他の血管に壁肥厚は認めなかった.carotidyniaを疑い超音波検査にて経過観察となった.23週後には内頸動脈の壁肥厚に改善傾向を認めたが,30週後では総頸動脈から頸動脈洞における血管内膜面の不整化,IMT肥厚が認められることより高安動脈炎の可能性が出現した.また55週後では左総頸動脈近位部において壁肥厚の波及を認めたため,高安動脈炎と判断し,プレドニゾロン30mg/日を投薬開始した.57週後のMRI検査にて左鎖骨下動脈にも辺縁平滑な狭窄を認めた.現在ステロイド加療継続中である.
【考察】
今回,高安動脈炎の発症初期にcarotidynia様の超音波画像を呈し,診断に苦慮した症例を経験した.高安動脈炎はその経過から,病初期の超音波所見については不明な点が多い.我々が調べた限りでは,早期の高安動脈炎を報告した文献は少なく,病初期にcarotidyniaを疑った報告は1例のみである.ただし同症例では総頸動脈の全周性壁肥厚であり,今回の我々の症例とは病変の範囲に違いがあった.高安動脈炎の初期はcarotidynia 様の画像を呈する可能性があるため,最初にcarotidyniaと思われる症例でも画像所見が変化する場合は,高安動脈炎の発症初期の場合も念頭において経過を確認することが重要である.