Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 血管
静脈疾患

(S764)

肺腺癌患者におけるDVTとバイオマーカーの関連

The relationship between DVT and biomarkers in pulmonary adenocarcinoma

佐藤 美和, 田口 亜希乃, 小野 あや子, 永野 亜津沙, 氏家 恭子, 福原 達朗, 加藤 浩

Miwa SATO, Akino TAGUCHI, Ayako ONO, Azusa NAGANO, Kyoko UJIIE, Tatsuro FUKUHARA, Hiroshi KATO

1宮城県立がんセンター臨床検査技術部, 2宮城県立がんセンター呼吸器内科, 3宮城県立がんセンター循環器内科

1Laboratory medicine, Miyagi Cancer Center, 2Respiratory medicine, Miyagi Cancer Center, 3Cardiology, Miyagi Cancer Center

キーワード :

【背景】
がんに発症する血栓症はTrousseau症候群と呼ばれ,原因は固形癌であることが多く,組織型的にムチン産生腺癌が多いとされている.ムチンは粘液の主要な糖タンパク質であり癌化に伴い腫瘍細胞から血中に分泌され,血液凝固を亢進させる.ムチン産生腫瘍において高値となる腫瘍マーカーとしてCA-125,CA19-9,CA15-3が広く知られている.
担がん患者は,がん細胞の増殖に伴う血管新生や転移により血液凝固能が亢進し,潜在的なDICの状態にあると考えられている.そのためがん患者の凝固・線溶系の採血項目はしばしば異常値を呈する.がん患者の死因の第2位に血栓塞栓症があげられ対策が重要と考えられる中,早期に診断することが難しい状況にある.
【目的】
肺腺癌患者における深部静脈血栓症(DVT)発症とバイオマーカー(D-ダイマー,CA-125,CA19-9,CA15-3,KL-6)との関係を検討する.
【対象】
分子標的薬を含めた抗がん剤未治療例の肺腺癌患者で,化学療法または放射線療法予定の26例(平均:64.15歳,男性:20名,女性:6名).
【方法】
採血により,D-ダイマー(DD),CA-125,CA15-3,CA19-9,KL-6を測定した.DVTの検索は下肢静脈超音波検査を行った.統計学的検討は統計ソフトEZRを用い,t検定,Fisherの正確検定を行った.
【結果】
26例中,DVT発生割合は27%(7/26)であった.年齢,性別,BMIではDVT発生に有意差は見られなかった.採血データは,①D-ダイマー(μg/mL):DVT陽性群;4.40,DVT陰性群;3.75,②CA-125(U/mL):陽性群;190.86,陰性群;159.58,③CA19-9(U/mL):陽性群;246.00,陰性群;16.74,④CA15-3(U/mL):陽性群;90.43,陰性群;28.11,⑤KL-6(U/mL):陽性群;1036.5,陰性群 550.21 といずれの項目においてもDVT陽性群で高値となった.その中でもCA15-3で有意差(P値:0.0223)が見られ,CA19-9でもほぼ同様の傾向(P値:0.0561)が見られた.
【結語】
肺腺癌患者においてCA15-3の上昇によりDVT発症を早期に発見できる可能性が示唆された.