Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 血管
静脈疾患

(S763)

婦人科悪性腫瘍手術後1週間での下肢超音波検査による血栓スクリーニングに関する検討

Effectiveness of lower extremity vein ultrasonography as a screening test for venous thromboembolism at 1 week after surgery for gynecological cancer

池田 頌子, 深澤 宏子, 平田 修司

Shoko IKEDA, Hiroko FUKASAWA, Shuji HIRATA

山梨大学医学部附属病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, University of Yamanashi Hospital

キーワード :

【背景】
婦人科癌患者は血栓症の危険因子を複数有することが多く,後腹膜リンパ節郭清を含む婦人科悪性腫瘍手術における新規血栓形成リスクは高い.術前のスクリーニング検査としてD-dimer測定や下肢静脈超音波検査が有効とされているが,術後のスクリーニングに関する報告は少ない.今回我々は,婦人科悪性腫瘍手術後1週間での下肢静脈超音波検査の有用性と,新規所見を認める予測因子につき検討を行った.
【方法】
2010年1月から2017年7月に当院で骨盤及び傍大動脈リンパ節のいずれかもしくは両方のリンパ節郭清術を施行した婦人科悪性腫瘍患者156例のうち,術前の下肢超音波検査にて血栓や血流うっ滞を認めた症例は除外し,121例(子宮頸癌31例,子宮体癌52例,卵巣癌38例)を対象とした.全例にガイドラインに沿った血栓予防(間欠式圧迫装置使用と低分化ヘパリン注射による抗凝固療法)を施行した.術後1週間での下肢超音波検査の所見(血栓または血流うっ滞)の有無と,血栓症と関連する因子(年齢,BMI,術前後のD-dimer値,手術時間,出血量,離床までの日数,病期,癌種)につき,単変量・多変量解析で評価した.統計学的検定にはカイ二乗検定,マンホイットニーU検定と多重ロジスティック分析を用いた.
【結果】
新規血栓は9例(7.4%),血流うっ滞が22例(18.2%)で指摘された.新規所見あり(血栓,血流うっ滞)となる因子につき検討したところ,単変量解析では術後3~4日目のD-dimer値(p=0.007)で関連を認めたが,年齢,BMI,手術時間,術前D−dimer値,出血量,離床までの日数,病期,癌腫では有意差を認めなかった.術後3~4日目のD-dimer値と下肢超音波新規所見の有無に関してROC曲線を用い検討したところ,カットオフ値は3.8μg/mL(AUC:0.67, 感度:62%, 特異度:77%, 陽性的中率:47%, 陰性的中率:86%)であった.多変量解析では,術後3~4日目のD-dimer値>3.8μg/mLが新規所見ありの独立した予測因子となった(調整オッズ比, 5.38 : 95% CI, 2.0-14.4).新規血栓を指摘された9例は抗凝固療法を継続し,7例は術後3か月までに血栓が消失し,2例は器質化血栓へ変化した.
【結論】
婦人科悪性腫瘍手術後1週間での下肢超音波検査によるスクリーニングでは約25%で新規所見を認めることから,有効な検査と考えられる.また,術後のD-dimer値が新規所見の有無に対する予測因子となることが示唆された.