Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 腎泌尿
腎泌尿

(S759)

外傷後に発症したHigh-flow型持続勃起症の一例

A case of High-flow type priapism caused by trauma

小川 典之, 皆川 倫範, 北原 遼, 上野 学, 黒住 昌弘, 上垣内 崇行, 小川 輝之, 角谷 眞澄, 石塚 修

Noriyuki OGAWA, Tomonori MINAGAWA, Ryou KITAHARA, Manabu UENO, Masahiro KUROZUMI, Takayuki KAMIGAITO, Teruyuki OGAWA, Masumi KADOYA, Osamu ISHIZUKA

1信州大学医学部泌尿器科学教室, 2信州大学医学部附属病院放射線部, 3信州大学医学部画像医学教室, 4伊那中央病院泌尿器科

1Department of Urology, Shinshu University school of medicine, 2Department of Radiology, Shinshu University hosipital faculty of medicine, 3Department of Medical Imaging, Shinshu University school of medicine, 4Department of Urology, Ina central hospital

キーワード :

症例:17歳男性.スケートボードで会陰部を打撲した翌日より勃起の持続を認めたため,近医を受診した.約2週間の経過観察が行われたが症状は持続したため,受傷後23日目に精査加療目的に当科を紹介受診した.受診時,陰茎は日本語版EHSグレード3(陰茎は挿入には十分硬いが,完全には硬くはない状態)であった.超音波検査で,海綿体内にシャント血流を認めた.造影CT検査で,右内陰部動脈から海綿体への出血を認めた.陰茎海綿体内血液ガス分析で,PCO2 37.3 mmHg, PO2 84.6 mmHgであり,High-flow型の持続勃起症と診断した.受傷後24日目に経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)を施行した.右海綿体動脈よりシャントの近位をゼラチンスポンジで塞栓し,左陰茎動脈よりシャントの遠位を同様に塞栓した.TAE翌日には,陰茎海綿体の硬度はEHSグレード2(陰茎は硬いが,挿入に十分なほどではない状態)と改善を認めたが,勃起状態は残存していた.超音波検査で,Bモードで陰茎海綿体内に高エコーの塞栓物質を認め,またカラードプラで,塞栓物質に接してシャントの残存を認めたため,右海綿体基部の持続的圧迫を行った.陰茎海綿体内血液ガス分析で,PO2 48.3 mmHg, PCO2 49.3 mmHgであった.受傷後29日目の造影CT検査で,陰茎海綿体内に残存する高吸収域を認めたため,再度TAEを施行した.術中所見で,右海綿体動脈の分枝および左陰茎動脈からの交通枝が側副路であった.左陰茎動脈,右海綿体動脈からそれぞれゼラチンスポンジで塞栓した.陰茎の硬度はEHS グレード1(陰茎は大きくなるが,硬くはない状態)に改善した.超音波検査で,塞栓物質近傍のシャント血流の減少を認めた.2回目のTAEの2日後,持続勃起は解除され退院となった.その後2回目のTAEの42日後の超音波検査で,陰茎海綿体内のシャントの消失を認めた.また造影CT検査で,陰茎海面体内の高吸収域は消失していた.2回目のTAEの2ヵ月後の時点で,持続勃起は認めず,勃起・射精機能共に自覚的な問題を認めなかった.
考察:持続勃起症は,陰茎海綿体からの流出が障害され組織が低酸素,アシドーシスに陥った状態であるLow-flow型と,会陰部の鈍的外傷後などに海綿体動脈の流入をコントロールできないことが原因で起こるHigh-flow型に大別される.Low-flow型では時間経過で組織障害を来たし,勃起機能が失われる可能性が高いため鑑別を緊急に行う必要がある.Low-flow型とHigh-flow型の鑑別診断には,症状,海綿体血液ガス分析,超音波検査が有用であるとされる.初期管理として,患部の冷却,会陰部の圧迫などの保存的加療が推奨されるが,1-2週間程度の経過観察で改善しない場合には,選択的動脈塞栓術などが考慮される.本症例は外傷後に発症したHigh-flow型持続勃起症であった.約2週間の経過観察をしたが改善を認めなかったため,2回のTAEを施行した.結果として,症状は改善し勃起・射精機能は温存された.EAUガイドラインによると動脈塞栓術の治療効果判定は,理学所見ならびにカラードプラ超音波検査ですることが推奨されている.本症例では頻回に超音波検査を行い,診断・治療効果判定を行った.超音波検査はLow-flow型とHigh-flow型の鑑別や,初診時・動脈塞栓術後の治療効果判定に有用であった.