Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 腎泌尿
腎泌尿

(S757)

超音波検査を用いた経会陰アプローチによる骨盤内膿瘍ドレナージ

Pelvic abscess drainage by transperineal approach using ultrasonography

石坂 幸雄, 小山 貴, 森畠 裕策, 大西 基文, 坂田 悦郎, 熊澤 高雄, 奥村 明

Yukio ISHISAKA, Takashi KOYAMA, Yusaku MORIBATA, Motofumi ONISHI, Etsuro SAKATA, Takao KUMAZAWA, Akira OKUMURA

倉敷中央病院放射線診断科

Department of diagnostic Radioloology, Kurashiki Central Hospital

キーワード :

【目的】
骨盤内膿瘍に対して超音波ガイドを用いて会陰からアプローチしてドレナージを施行した4症例について,その有用性,有害事象を後方視的に検討した.
【対象】
2014年4月から2017年7月までに骨盤内膿瘍に対して超音波検査を用いた経会陰アプローチによるドレナージを施行した4例.年齢は60歳から77歳(平均67.3),男性1例,女性3例であった.原因疾患は虫垂炎穿孔2例,前立腺膿瘍1例,直腸癌術後縫合不全1例であった.
【方法】
超音波診断装置はARIETTA70(HITACHI ALOKA)および3.5-5MHzのマイクロコンベックスプローブを使用.側臥位にて肛門近傍の会陰から頭尾方向に観察し膿瘍腔を同定した.直腸や血管を避けた穿刺経路を設定した.局所の消毒後,超音波ガイド下に局所麻酔を施行し,17GのPTC針にて膿瘍腔を穿刺した.その後,ガイドワイヤーを超音波ガイド下で挿入した.穿刺針を抜去し,必要に応じ7Fr.ダイレーターにて拡張した後,8.5Fr.ドーソンミュラーカテーテル(COOK JAPAN)をワイヤーに沿って留置した.単純レントゲンおよび単純CTでカテーテル先端が膿瘍腔内に留置されたことおよび出血や臓器損傷の有無を確認した.これらの症例について,膿瘍ドレナージの成否および合併症の有無に関して評価した.
【結果】
全例ドレーン留置に成功し膿が吸引可能であった.いずれも合併症もなく,疼痛の訴えもなかった.虫垂炎の2例のうち,1例は速やかに解熱,炎症反応低下がみられ軽快退院した.もう1例は術後6日後に軽快退院したが,22日後に膿瘍再発がみられ,再度同様の手法でドレナージを施行し13日後に退院した.前立腺膿瘍の1例は白血病および末梢カテーテル感染による敗血症を背景に有しており,膿汁排泄が改善し8日後に抜去されたが内科的治療が継続され半年後に退院となった.直腸縫合不全の1例はドレーンから多量の便汁排泄が持続したため術後10日で待機的手術となった.
【考察】
虫垂炎や憩室炎穿孔などによりダグラス窩に膿瘍が生じることは少なくないが,骨盤骨および骨盤臓器に囲まれ,経皮的ドレナージが困難なことが多い.外科的な方法以外には,CTガイド下で経皮的に背部から坐骨孔を介した経路で行われることが多いが,坐骨神経叢や内腸骨系の血管が存在しており,神経痛や出血などのリスクを伴う.また経膣や経直腸からのアプローチは,ドレナージ・カテーテルの固定が困難である上に,当該臓器の損傷や感染などが問題となることがある.会陰部から坐骨直腸窩を介した経会陰アプローチではルート上に危険な構造物や血管,神経が少なく,また最短のルートで到達することが可能である.このルートはCTの撮像断面にほぼ直交するために,CTガイド下の手技は不可能であるが,任意の方向からアプローチが容易な超音波検査ならではの手技となる.また超音波ガイド下では穿刺からドレーン留置までリアルタイムに観察が可能なことが多く,透視による放射線被曝を低減することができる.問題点としては排便後でも直腸が拡張している症例や会陰からの距離が遠い病変では描出不良となり穿刺が困難な場合があるため,周囲の構造物を正確に同定することが重要である.今回の我々の検討では症例数が少ないものの,手技の有効性および安全性が示唆された.
【結論】
骨盤内膿瘍ドレナージに対する超音波検査を用いた経会陰アプローチ法は有効かつ安全な方法と思われる.