Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

一般口演 腎泌尿
腎泌尿

(S756)

腹部超音波健診判定マニュアルによる腎腫瘤のカテゴリー分類とその問題点

Some Questionable Points for Category Classification of Renal Tumors Scrreened by Ultrasonnographic Chek-up

水関 清

Kiyoshi MIZUSEKI

社会医療法人函館博栄会函館渡辺病院総合診療科

Department of Integrated Medicine, Social Medical Corporation Hakodate Hakuei Group Hakodatewatanabe Hospital

キーワード :

【背景ならびに検討目的】
多数の臓器を扱い,がん以外の病変も対象とすることの多い,検診領域での超音波検査に対し,検査環境や実施者の技能に至るまでの幅広い要因を念頭に置いた実施基準として設けられたのが,腹部超音波検診マニュアル(以下,本基準)である.この基準は,腹部超音波検診の質的向上と均質化,そして得られた画像に対する判定基準の共通化を目指したものではあるが,初学者の教育や超音波検査実施施設の技能評価などの分野においても,その有用性は高い.本基準の妥当性を検討する目的で,検診発見の自験腎腫瘤39例を対象として,病理組織所見と超音波画像所見とを対比させたうえで,そのカテゴリー分類について検討したので,動画像を含む超音波像を供覧する.
【結果】
自験39例の超音波所見を,腫瘤の形状,腫瘤内部のエコー輝度とその分布,腫瘤周囲の低エコー帯の有無で検討した.腫瘤径25mm以下の12例では,輪郭はすべて整で,内部のエコーパターンは,低・等・高と多彩であった.腫瘤径25mm~50mmの18例では,輪郭は整・不整同率となり,内部のエコーパターンは,低2例・等4例となって,内部均一な高エコー例はなく,不均一例が9例と半分を占めた.これらの結果から,腎腫瘤は径の増大に伴って内部エコーが低下し,内部エコーパターンが不均一化する傾向を認めた.病理組織学的検討では,腫瘤内部の隔壁形成程度と実質・間質比とエコーレベルとの間に強い正の相関を認め,細胞異型度との間に弱い負の相関を認めた.カテゴリー分離でいう「辺縁低エコー帯」は,病理組織学的には腫瘤周囲に認められた.
【カテゴリー分類との対比】
本基準のカテゴリー分類に沿って分類すると,「充実性病変」に与えられるカテゴリー3には39例全例が該当した.カテゴリーを3から4に変更する基準として,「内部無エコー域,辺縁低エコー帯,側方陰影のいずれかをともなうこと」と「中心部エコーの解離または変形の併存」という基準が設けられている.本基準でカテゴリー4と判定される,輪郭明瞭平滑な円形病変は23例・58%あり,これに中心部エコーの変形などを加えると37例・95%となり,カテゴリー4の所見は概ね妥当であると思われた.さらに腫瘤をカテゴリー5と変更するための基準として,「一定の面積を持つ内部無エコー域」,あるいは「内部無エコー域に辺縁低エコー帯・側方陰影が併存すること」が求められるが,自験例でその基準を満たした例は1例にとどまった.かりに,本基準のカテゴリー5と判定する因子に,腫瘤の「内部エコーの不均一性」を加え,「辺縁低エコー帯・側方陰影・内部エコーの不均一性のいずれかを有する輪郭明瞭な円形病変」をカテゴリー5とするという基準に改変すると,判定率は29例・74%となった.
【結語】
腎腫瘍の発見契機としての超音波検査は重要で,その第一歩となる所見は「充実性病変」の検出であり,さらに腎腫瘍を疑わせる所見として,「内部無エコー域,辺縁低エコー帯,側方陰影」や「中心部エコーの解離または変形」の併存を捕らえるという,本基準はおおむね妥当であると考えられた.しかしながら,悪性腎腫瘤の内部エコーの評価を,「内部無エコー域」に限定することに疑問が残るり,カテゴリー5の判定基準に,腫瘤の「内部エコーの不均一性」を加えて,「辺縁低エコー帯・側方陰影・内部エコーの不均一性のいずれかを有する輪郭明瞭な円形病変」とすることには,一定の妥当性があるものと考える.また,「辺縁低エコー帯」は,超音波用語的には「周辺低エコー帯」と呼ぶことが妥当であると考えられた.