白川 崇子, 古川 顕, 中田 典生, 太田 智行, 西岡 真樹子

Takako SHIRAKAWA, Akira FURUKAWA, Norio NAKATA, Tomoyuki OHTA, Makiko NISHIOKA

¹首都大学東京人間健康科学研究科, ²東京慈恵会医科大学放射線医学講座

¹Graduate School of Human Health Science, Tokyo Metropolitan University, ²Department of Radiology, Jikei University School of Medicine

キーワード :

【目的】
皮膚・皮下の炎症性病変と腫瘍性病変の超音波カラー・パワードプラによる血流分布，走行（流れる方向）の特徴を検討する．
【対象と方法】
対象は2015年1月から2016年11月まで JR東京総合病院 放射線科，東京慈恵会医科大学附属病院 超音波診断センターで皮膚・皮下領域の超音波カラー・パワードプラ検査を行った炎症44人，血流のある腫瘍 37人である．
i）炎症（毛嚢炎 10例，炎症性粉瘤 15例，結節性筋膜炎 4例，他の炎症 15例）ii）血流のある腫瘍（血管腫10例，グロームス腫瘍 2例，神経鞘腫 2例，基底細胞癌 2例，転移性皮膚癌 4例，サルコイドーシス 4例，他の血流のある腫瘍 13例）を以下の血流を評価した．
1，血流分布 : a. 主病変 dominant, b. 周囲 dominant, c. a = b 同等
2，血流走行：a. 主病変へ左右から向かうdominant, b.表在から深部へ向かうdominant, c. 深部から表在へ向かうdominant, d. a = b = c同程度
【結果】
表1に結果を示す．炎症性病変は主病変の周囲に広範囲に血流分布があり，深部から表在へ向かう血流の割合（68％）が多かった．腫瘍性病変では腫瘍とその近傍に血流分布し，主病変へ左右から向かう（27％），深部から表在へ向かう（30％）血流と，その両方の血流の複合（35％）であり，炎症性病変と比較して左右から腫瘍へ向かう血流が多かった．

表1　　　　　　　　　　　　　　　炎症 44人　　　腫瘍 37人
1，分布
　　a. 主病変 dominant ------------------ 8（18％）----- 31（84％）
　　b. 周囲 dominant -------------------- 32（73％）----- 3（8％）
　　c. aとb同等　　------------------------- 4（9％）------ 3（8％）　　　　
2，走行方向
　　a. 主病変左右から dominant -------- 6（14％）----- 10（27％）
　　b. 表在から深部へ dominant -------- 3（7％）------- 3（8％）
　　c. 深部から表在へ dominant -------- 30（68％）---- 11（30％）
　　d. 同等　　-------------------------------- 5（11％）----- 13（35％）

【結論】
炎症性病変では，広範囲で周囲血流増強あり，深部から表在へ向かう血流が特徴的である．炎症性病変と腫瘍性病変の鑑別や，腫瘍切除後に残存している炎症の有無の診断に有用である．